転勤が多い人は身軽な賃貸物件を選ぶことが多いと思います。中には社宅や家賃補助がある場合もあります。確かに初期費用や売却のことを考えると賃貸物件を選ぶことも納得できます。
ですが、実は転勤の可能性がある人ほど中古住宅や中古マンションがおすすめなのです。その考え方やキーワードとなる「リセールバリュー」について解説します。
宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー
ハウスクローバー株式会社の創業者兼CEO。また同時に、毎年全国から2〜300組ほどの住宅購入希望者の相談があり、実際の購入もサポートする現役の不動産エージェントでもある。業界歴は15年以上。多くの人から受ける相談内容と不動産業界の現状にギャップを感じ、住宅購入に必要なサービスと優良な不動産エージェントのネットワークを構築したプラットフォーム「HOUSECLOUVER」を企画運営している。自身が情報を発信しているYoutubeやブログは多くの住宅購入者にとって欠かせないバイブルとなっている。
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転勤の可能性がある人は、リセールバリューに注意
転勤の可能性がある人は、転勤の際に住宅を売却する場合があります。このためリセールバリューに注意が必要です。このリセールバリューが何なのか、そしてその必要性について考えていきます。
リセールバリューって何?
リセールバリューとは日本語に訳せば「再販売時の価値」となります。転売したときに購入時との価格差が少ない物件のことです。
ここでシンプルな例をあげます。例えば3000万円で購入した中古住宅を10年後に売却した場合を考えます。A物件は2000万円、B物件が1500万円で売却できました。この場合はA物件のほうがリセールバリューは高い、ということができます。
購入時価格 | 売却時価格 | 差額 | リセールバリュー | |
A物件 | 3000万円 | 2500万円 | 500万円 | 高い |
B物件 | 3000万円 | 1500万円 | 1500万円 | 低い |
リセールバリューの必要性
住宅を購入し、その住宅を終の棲家とするならばリセールバリューを気にする必要は少なくなります(ゼロではありません!)。
ですが、転勤の可能性がある人の場合はそうはいきません。住宅によって価値の下落率は一様でないのです。転売時の価値を見据えて住宅を購入する必要があります。ここにリセールバリューを注意する必要性があるのです。
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売った時と買った時の価格差が小さければ得をする!?
購入時の価格と売却した時の価格との価格差が小さければ得をするのは事実です。ですが、ここはもう少し詳細に検討してみましょう。
賃貸した場合には家賃が発生します。これも考慮して検討するのです。また、賃貸や売買には多くの諸経費が必要となります。こうしたことも考慮して精度の高い比較検討を考えてみましょう。
賃貸の場合と比較する
賃貸物件に住むには家賃が必要です。例えば家賃が年間120万円かかるとします。10年間賃貸すれば1200万円です。一方、中古住宅を3000万円で購入し、10年後に売却する場合を考えます。売却時の価格が2500万円のA物件であれば、賃貸よりも住宅を購入したほうがお得です。売却時の価格が1500万円のB物件なら賃貸に住んでいた方が出費は少なくなります。
【賃貸と購入の比較】
年間120万円の物件を10年間借りた場合(トータル1200万円)と物件を購入した場合の検討
購入時価格 | 売却時価格 | 差額 | 賃貸との差額 | |
A物件 | 3000万円 | 2500万円 | 500万円 | +700万円 |
B物件 | 3000万円 | 1500万円 | 1500万円 | -300万円 |
売買の諸経費も含めて計算する
上記の差額に加えて、売買の場合は取引にあたって多くの諸経費が必要になります。仲介手数料、司法書士への手数料、不動産取得税などです。これらで物件価格の6%から10%程度になります。
また、住宅ローン減税が使えるかどうかも重要な項目です。売買の場合は多くの項目を検討する必要があります。
一方で賃貸の場合は主な経費は仲介手数料の賃料1か月分等です。このほか預かり金として敷金が必要な場合もあります。こうした諸経費も含めて検討すれば、より精度の高い比較検討が可能です。
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新築は価格の落差が大きい
新築住宅は気持ちのよいものです。特に日本の場合は、新築信仰ともいうべき新築に対するあこがれがあります。ですが、転勤の可能性がある人の場合、新築はおすすめできません。
その大きな理由のひとつは新築住宅の値下がりが大きいことです。ここでは新築住宅の価格下落の特徴についてみていきます。
購入後、即2割減
戸建住宅でもマンションでも新築時は価格が一番高いです。投資物件やごく一部の人気のあるタワーマンション等では異なる値動きのものもありますが、ここでは省略します。
新築物件を取得後すぐに売買したとしてもその価格は大きく下落してしまいます。なぜなら新築時には、物件の建築にかかった費用以外に、販売業者の利益や販促費などの経費が上乗せされているからです。一説には2割程度下落すると言われています。
一度でも誰かの所有物になることはその物件は中古物件になります。新築購入後の価格下落は最も大きな下落と言われています。
築10年までは価格下落が大きい
新築後の価格下落は概ね築10年程度続きます。この期間内はリセールバリューが大きい物件でもお得に売却することは難しいものです。
相場が上昇している局面であればともかく、今の市況を考えるとそれは考えづらいのではないでしょうか。ですから、リセールバリューの観点からは築10年以内での売却はおすすめできません。
しかし転勤はいつ命じられるかわからないもの。家を売りたくないので転勤できません、は通用しません。このことからも転勤の可能性がある人は新築物件に手を出すべきではないのです。
10年以降の下落はなだらかに
こうした急激な価格下落は築10年程度で収まり、その後はなだらかな下落に変化していきます。新築プレミアムともいうべきものがなくなり、中古物件として流通するようになるのです。
ここまでくると先ほどの家賃との比較やリセールバリューが活きてきます。こうしたことから、転勤の可能性がある人におすすめするのは築10年以上の中古物件なのです。
リセールバリューのある中古住宅・中古マンションを選ぶときのポイント
リセールバリューは立地条件や物件の状態から生み出されるものです。多くの人が欲しいと思う物件にはリセールバリューが発生します。
ここではリセールバリューのある中古住宅・中古マンションを選ぶときのポイントをお伝えします。購入物件の検討に役立ててください。
利便性の高い立地か
駅に近い、小学校やスーパーに近い、といった利便性は簡単に変更することができない事柄です。また、駅まで徒歩〇分といった情報は客観的で有力な判断材料になります。
こうした利便性の高い、アピールポイントがある物件は価値が下がりにくく、リセールバリューが期待できるのです。
管理状況や建物に欠陥はないか
建物や管理状況に問題がある場合、その分価値が落ちる可能性があります。修繕をするにしても相応の出費が必要です。
特に管理に関わる問題は、時間が経つごとに影響が大きくなってきます。修繕積立金や管理費が高額な物件はそれだけで避けられてしまいます。
住宅ローン減税が利用できるか
立地条件や物件の状態がよくても他の物件に負けてしまう場合があります。そのひとつが住宅ローン減税の適用です。昭和56年6月以前の物件は耐震性を証明できる書類がないと住宅ローン減税を受けることができません。
また、一定面積以下の住宅も対象外になります。年間で10万円以上の還付が見込めるこの減税は大きなものです。住宅ローン減税が利用できるかは需要やリセールバリューにも影響します。
周辺に新築が建ち過ぎていないか
周辺に新築住宅が林立していると、中古住宅はどうしても需要が少なくなってしまいます。一定数の人は新築住宅に流れてしまうからです。
中古住宅が新築住宅に優るには値下げが一番ですが、できれば避けたいところ。周りを見渡して購入希望の物件よりも新しい物件が多くあるところは注意が必要です。
転勤の可能性が高い人の多い地域か
大都市では、いわゆる転勤族の方が集まるような新興住宅地があります。こうしたエリアは住民が常に入れ替わっています。
つまりそれは買主候補が多いといえます。買主候補が多ければ、その分売却できる可能性が高まるのです。転勤の可能性が高い人が多いかどうかは地域の不動産エージェントに聞くと情報を教えてくれます。
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そのエリアの情報や不動産相場に詳しいか
もしも転勤先エリアの不動産情報に詳しいならばエリアの情報は必要ないかもしれません。しかし、転勤で知らない土地へ移動する方にとってはエリアの情報はとても貴重です。
また相場より高い価格で物件を購入してしまうことは、リセールバリューの観点からもおススメできません。
リセールバリューの勘所を押さえているか
すべての不動産業者がリセールバリューの勘所を押さえているわけではありません。仮に押さえていたとしても、物件を売りたいがために本当のことを伝えない不動産業者もいるくらいです。
中古マンションにしろ、中古住宅にしろ、リセールバリューには押さえておくべき勘所が存在します。そういった勘所を押さえている不動産エージェントを選ぶようにしましょう。
不動産購入はリテラシーがあれば賃貸よりも有利になる
よくインターネット上には、自由度が高い賃貸の方がこれからは有利なんて言われている風潮も一部にはありますが、プロの視点でいえば、不動産購入はリテラシーがあれば賃貸よりも有利になります。
実際賃貸の業者も家を購入しています。特に不動産業者はハウスメーカーの関係者でない限り、新築を購入する人はほとんどいません。
不動産業者はプロですから、一定のレベル以上のリテラシーがあるためです。住宅は上手く活用すれば確実にあなたの暮らしを豊かにしてくれるものですので、リテラシーの高い不動産エージェントを見つけて、ぜひリセールバリューの高い中古マンション・中古住宅を購入してください。
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まとめ
最後に、転勤が多い人ほど中古マンション・中古住宅の購入がお得になる理由と、そのポイントをまとめておきます。
- リセールバリュー(再販価値)を意識して物件を探す
- 新築から築10年までは価格の下落が大きいため避けるようにする
- 中古マンションは立地だけでなく管理状態も慎重にチェック
- 住宅ローン控除が利用できる物件を狙う
- リセールバリューの勘所を押さえている不動産エージェントを選ぶ
- リテラシーがあれば持ち家は賃貸よりも有利になれる
転勤の可能性がある方は、これらのポイントを押さえて、住宅購入をぜひ検討してみてください。
宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー
ハウスクローバー株式会社の創業者兼CEO。また同時に、毎年全国から2〜300組ほどの住宅購入希望者の相談があり、実際の購入もサポートする現役の不動産エージェントでもある。業界歴は15年以上。多くの人から受ける相談内容と不動産業界の現状にギャップを感じ、住宅購入に必要なサービスと優良な不動産エージェントのネットワークを構築したプラットフォーム「HOUSECLOUVER」を企画運営している。自身が情報を発信しているYoutubeやブログは多くの住宅購入者にとって欠かせないバイブルとなっている。
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