この記事を読むことでわかること
- マンションにおける管理会社・管理組合とは何か
- 管理の良い、悪いマンションの見極め方
- マンション管理会社に対してどのように接するべきか
「マンションは管理を見て買え」という格言があるくらい、マンションにとって管理は、資産価値や住みやすさの価値を推し量るうえで、非常に重要なポイントとなります。
しかし管理が重要ということは、なんとなく理解はできていても、管理のどこを見ればいいのかを、しっかり理解できている人はあまりいないように感じています。
それは一般の消費者だけでなく、不動産のプロと言われる仲介業者でも、マンション管理について深い知見を持っている人は、実はそこまで多くありません。
そこでこの記事では、これまで年間1000棟以上のマンション管理組合の調査をしてきた筆者が、マンションの管理を見極めるために知っておくべき、管理会社と管理組合の関係性や、管理が良い悪いというのはどのような状態を指すかなど、詳しく解説していきます。
これからマンション購入をお考えの方はもちろん、すでにマンションに住んでいる方や、保有しているマンションをいつ売るか悩んでいる方は、数多くのヒントが得られますので、ぜひ最後までご覧ください。
宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー
ハウスクローバー株式会社の創業者兼CEO。また同時に、毎年全国から2〜300組ほどの住宅購入希望者の相談があり、実際の購入もサポートする現役の不動産エージェントでもある。業界歴は15年以上。多くの人から受ける相談内容と不動産業界の現状にギャップを感じ、住宅購入に必要なサービスと優良な不動産エージェントのネットワークを構築したプラットフォーム「HOUSECLOUVER」を企画運営している。自身が情報を発信しているYoutubeやブログは多くの住宅購入者にとって欠かせないバイブルとなっている。
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マンションにおける管理会社とは?
管理会社とは、マンションの管理組合から管理業務の委託を受ける不動産会社のことです。
マンションの管理業務を行うに当たり、契約で定められた業務を行い、管理業務や資産維持管理に関する助言やアドバイスをする役割となります。
マンションの所有者で組成される管理組合は、マンション管理について精通している人はほとんどいないため、プロの視点で管理業務をフォローしてくれる存在です。
マンション管理会社の具体的な業務
実際にマンション管理会社には多くの業務内容があります。
まずマンション管理会社の中で最も重要な業務が「運営事務」に関わるもので、大きく2つに分けられます。
その内容は、管理費や修繕積立金の徴収や管理などの「基幹事務」と、設備等の保守点検・損害保険の契約締結・住民への連絡業務・総会や理事会などの運営補助などの「それ以外の業務」に分けられます。
さらに管理人の派遣や、マンションの定期清掃、設備保守など、その業務は多岐に渡ります。
管理形態「全部委託」「一部委託」「自主管理」の違い
よくマンションの広告を見ていると、管理形態の項目が、マンションによって「全部委託」「一部委託」「自主管理」となっています。
これはマンションの管理組合から、管理会社が委託を受けている形態のことをいいます。
全部委託とは?メリット・デメリット
全部委託とは、マンションの管理業務の全てを一括で委託されているということです。
この形態のマンションが最も多く、日常の煩雑な業務を委託することができるので、所有者は手間がほとんどかからないというメリットがあります。
一方で全ての業務を委託するので、管理は高くなりがちです。
一部委託とは?メリット・デメリット
先述した管理業務のうち、マンションの所有者でできることは自分たちで行い、その他の業務を委託するという方法です。
委託する業務の種類はマンションによって変わります。
業務の一部を委託するだけなので、業務の内容にもよりますが、管理費を抑えることが可能です。
一方で管理業務に関する知識を有する所有者の存在が必要となるなど、求められる専門性も高くなります。
自主管理
自主管理とは、マンション管理会社に一切依頼することなく、所有者たちで管理業務を行う形態です。
清掃業者や管理人を利用することもありますが、ほとんどの場合、管理組合との直接契約となります。
管理費用が抑えられるメリットがある反面、高度な管理業務についての知識が求められます。
また一人の所有者がずっと理事長を行なっている場合、不正という問題も発生しやすい傾向があります。
マンションにおける管理組合とは?
次にマンションの管理組合を、解説していきます。
管理会社での説明にもたびたび触れてきましたが、管理組合とは、マンションの所有者で組成される組合のことで、法律で管理組合の設置が定められています。
そしてマンションの所有者は、必ず管理組合の組合員となります。
また多くのマンションで輪番制となる、一定の人数で組成される理事会や、その理事会の長となる理事長など、さまざまな役割があります。
管理組合では、必ず年一回以上の総会を開催することが定められていて、さまざまな議題について、議論し決議をしていきます。
議決権というものが、あらかじめ部屋の広さに応じて、各所有者に紐ついており、何かを決めるときは多数決の論理で、決議がされていきます。
「大規模修繕工事(共用部の著しい変更を伴わないもの)には1/2以上の賛成」「マンションの建て替えでは、4/5以上の賛成」など、決議における割合は法律によって定められています。
管理組合はマンションの意思決定機関
マンションの管理組合と管理会社の最も大きな違いは、決定権があるかどうかです。
マンションの管理や維持修繕における決定権は、管理組合にしか認められていません。
つまり管理組合は、そのマンションの意思決定機関であり、マンションにとって当事者という立ち位置になります。
毎月徴収される管理費や修繕積立金は、管理組合の名義の口座に保管されるものとなり、管理組合の財産となります。
毎月の管理費などは、管理会社との契約に基づき支払われますが、その他の支払いは、管理組合の決議が必要となります。
急な支出が必要になった時は、定時総会とは別に、臨時総会を開き決議することもあります。
こういった役割を持つのが、マンションの管理組合なのです。
マンション管理会社と管理組合の関係性
マンションの管理会社と管理組合が、それぞれどんな役割を持っているかが分かったところで、それぞれの関係性について説明していきます。
関係性を考える上で、最も重要なことを言います。
それは、「マンション管理会社は管理組合から業務の委託を受けた、第三者の不動産業者である」ということです。
それ以上でもそれ以下でもありません。
しかし多くの方が、マンションは管理会社が主体となって行なっていると勘違いをしています。
あくまでマンションの主体は、所有者の集まりである管理組合です。
重要なことなので、何度も言いますが、マンション管理会社はただの委託を受けた不動産会社です。
マンション管理会社の目的について知る
ここから、マンションの管理における核心に近づいていきます。
まずは、マンション管理会社の目的について、知っておくべきことをお伝えします。
管理会社は不動産会社であり、法人の形態は「株式会社」です。
株式会社の目的は利益の追求です。
つまり、マンションが健在な状態を保つための業務を提供することも当然、目的の一つではありますが、管理会社の本質的な目的は「利益追求」です。
マンション管理の核心に迫るために、このことはしっかり覚えておきましょう。
マンション管理会社の利益はどこから?
次にマンション管理会社の、売り上げや利益は、どこから発生するのでしょうか?
それは、マンションの管理組合から支払われる、管理の業務委託費となります。
ここから管理会社の実情に迫っていきます。
マンション管理会社の目的は、利益追求であると説明しましたが、管理会社が売上や利益を増やすためには、二つの方法があります。
一つは、管理業務を受託するマンションの数を増やすこと。
もう一つは、一つのマンションから得られる収入を増やすこと。
基本的にはこの2つになります。
今現在、新築マンションの供給量は年々減少の一途を辿っており、マンションの総数は、一昔前に比べると増加のペースはかなり鈍化しています。
そんな中で、一つ目の収益を増やす方法である、管理の受託数を増やすということは、容易なことではありません。
そしてもう一つの、「マンションから得られる収入を増やす=管理業務委託料を値上げする」ですが、管理費の値上げは、管理組合が管理会社を見直すきっかけになりかねないので、値上げがしにくいと言われています。
そんな中でターゲットにされているのが、管理費でなく修繕積立金なのです。
管理に興味を示さない管理組合の悲惨の末路
ここまで、管理組合はマンションの意思決定機関であり、管理会社は管理組合から委託を受けただけの不動産会社であると説明してきました。
そして管理会社は、会社として売上や利益を増やすことが目的です。
ここで管理組合のメンバーである所有者が、管理に全くを興味を持たずに、管理会社に管理業務を任せっきりにしていたらどうでしょうか。
勘の良い方なら、もうお気づきかもしれませんね。
そう、大規模修繕工事費などをぼったくります。
大規模修繕工事を行うときの業者の選定などは、本来、管理組合が主体となって行うべきです。
しかし管理に興味を持たない管理組合は、管理会社が持ってきた2、3社の見積もりを比較して、決議をして終わりです。
この時、管理会社が持ってくる相見積もりは出来レースのことが多く、必要以上に高い金額で、さらに建築業社から管理会社に工事費からキックバックが流れるようになっています。
このキックバックこそが、管理会社の重要な売上や利益の源になっているのです。
しかもこのキックバックは、所有者から積み立てた修繕積立金から支払われています。
結果として、途中で修繕積立金が足りなくなり、毎月の修繕積立金の大幅な値上げや一時金の徴収を、マンションの所有者が負担しているのです。
これこそが、マンション管理業務の闇であり、多くの管理組合が、管理会社の養分となってしまっているという現状なのです。
管理が良いマンションの特徴
このような管理会社が管理組合から、より多くの売上や利益を取ろうとしてくる現状において、管理が良いマンションとは、どんなマンションなのでしょうか。
それはマンションの所有者たちが管理に興味を持って主体性を発揮し、管理組合が管理会社の言いなりになるのではなく、対等な立場で取引をしているマンションです。
私が行うマンションの管理組合の調査でも、最も重視するのは、「管理組合がどれだけ機能しているか」なのです。
管理組合が機能しているかどうかは、管理会社から取り寄せる資料にある、数字で読むことができます。
中には、その確認として管理会社に聞き取りをすることもありますが、管理会社の言いなりになってしまっているマンションは、数字的に悪いものが大半です。
「マンション購入で担当者を選ぶことが大切」ということを様々なところで発信していますが、この管理組合の調査も担当者を選ぶべき、大きな理由の一つになります。
管理が悪いマンションでも持ち返すことはできるか?
管理が良いマンションがある一方で、これまであまり所有者が管理にあまり興味を持たずに、管理が良くないマンションもあります。
そんな管理が悪いマンションであっても、良い管理のマンションにしていくことは可能なのでしょうか?
結論から言えば、もちろん可能です。
リカバリーが早ければ早い方が理想ですが、築年数がそれなりに経ってしまっていて、すでにお金が不足状態に陥ってしまっているマンションでは、持ち直せないこともあります。
持ち直すための方法として、まずは所有者が一人でも多く、管理に興味を持って主体性を持つこと。
そして第三者のプロを介在させることです。
具体的には、経験豊富なマンション管理士などになります。
費用は多少かかるかもしれませんが、費用対効果は非常に高くなりますので、ぜひこの記事を読んだ方で、今お住まいのマンションがこのような状況に陥っている時は、マンション管理士に相談することを総会で提議してみましょうみてはいかがでしょうか。
大手のマンション管理会社であれば安心?
日本には、盲目的な大手信仰が存在しますが、大手だから安心というのは妄想です。
どの業界にも同じようなことが言えるかもしれませんが、不動産業界においても大手がいいとは限りません。
「大手だから安心」という盲目的な信用は、あなたの大切な資産価値を毀損する結果となってしまうこともあります。
不動産仲介業者であっても、管理について見解を求められたときに「大手だから大丈夫」と言ってしまう担当者もいますが、大手だから安心ということは一切ありません。
これについては断言できます。
大手マンションディベロッパー系列と独立系との違い
管理会社には、マンションを分譲するディベロッパー系列の管理会社と、どこにも属していない独立系の管理会社に大別されます。
ディベロッパー系列は、マンションを分譲した時に最初から管理業務を受注する形になっていて、営業をしなくても新しい管理業務を受託することができます。
一方で独立系の管理会社は、営業をして管理業務を受託していくほかありません。
筆者の感覚ですが、マンションディベロッパーが親会社となっており、黙っていても管理マンションが落ちてくるような管理会社よりも、サービスや質で勝負をしている独立系の方が、調査の結果では良いと判断したことのほうが多いです。
マンション管理会社は途中で変えることはできる?
大手不動産会社が分譲主となっていて、管理会社が最初から決まっているようなマンションであっても、管理会社は途中で変更することができます。
管理会社を変えること自体は珍しいことではありません。
管理会社が新築時と違っている理由として、管理組合がサービスやコスト面から管理会社を変えたケースと、管理組合が管理会社に見限られて管理会社を変えざるを得なかったケースの2つがあります。
できれば前者であることの方が理想的ですが、後者の場合であっても、マンション新築時の管理会社と、現在の管理会社が変わっている場合、管理調査の結果でも、良いと判断することが多いです。
管理会社を変えている管理組合は、その経緯の良し悪しは別として、管理に興味を持ち、管理組合が主体性を持っているという証左にもなります。
築年数が新しいマンションは管理費を削減できる可能性が高い
比較的築年数の浅いマンションは、管理会社を変えると管理費を削減できる可能性が高いです。
なぜなら、最近のマンションは管理費が高めに設定されていることが多いからです。
新築マンションだけでなく、築古のものも含め、数多くのマンション情報に接していると、この傾向に気がつく方もいらっしゃるのではないでしょうか。
先述しましたが、管理費の値上げは、管理会社を変えられてしまうリスクがあるため、なかなか値上げを提案しにくいと言われています。
そこで受注管理費を増やすために、最近のマンションの管理を高めに設定していることが多いのです。
途中からは値上げがしにくくても、最初から高い分には特に問題になることはありません。
仮に管理費が高いなと思える水準であっても、修繕積立金が新築時は低く設定されているマンションが多いので、両方を合わせると、そこまで管理費の高さが目立つようなこともありません。
マンションの規模や設備によっても変わりますが、他の中古マンションと比較してみて、高いなと感じる場合は、管理会社を変えるだけでも管理費を安くできる可能性があります。
マンション管理会社と管理組合のコミュニケーションの重要性
ここまで、管理会社の悪い側面ばかりを解説してきましたが、基本的に管理会社は、管理に関するノウハウや実績がとても豊富で、マンションの維持管理をしていく上で、管理組合にとって、大変重要なパートナーです。
マンション管理会社は頻繁に変えるのではなく、一社に長く管理業務を委託できた方が、そのマンションに関する知識やノウハウが蓄積されていきますので、都合はいいです。
そのため、管理会社を業者と決めつけ、無理難題をふっかけるのではなく、話し合いを通じて、より良好な関係性を築いていくようにした方がいいです。
先ほど、管理会社から見限られてしまう管理組合もあると説明しましたが、管理会社の利益を全く考えずに、自分たちの都合や利益ばかりを押し付ける管理組合は、管理会社からも見限られることもあります。
管理組合が主体性を持つことが絶対条件ですが、管理会社とは、あくまで対等なパートナーとして、コミュニケーションをとっていくようにすれば良いのではないでしょうか。
マンションの管理会社と管理組合の関係性 知らないと損する恐ろしい事実のまとめ
マンションを買うときは、どうしても立地や部屋の間取り、マンションのスペックなどに意識が行きがちですが、マンションの価値は管理によって決まります。
もちろん立地は、資産価値におけるウェイトも大きいため、妥協すべきではありませんが、管理においても資産価値はもちろん、住みやすさの価値にも連動しますので、同じように気をつけるようにしましょう。
ただし、マンションの管理に気をつけて買うとしても、マンションの管理の良し悪しを判断できる担当者ではなければ、失敗のリスクが高まります。
プロの不動産仲介業者であっても、管理について深い知見を持っている人は非常に少なく、それこそ管理会社が大手だとか、管理費等の遅滞の有無や、修繕積立金額の多い少ないで判断しようとする人もいます。
何度も言いますが、マンション管理の良し悪しは、それだけで判断しません。
もちろん判断材料にはなりますが、会社の決算書を紐解くような知識と経験が求められる、特別なスキルになります。
マンションを購入するのであれば、まずは担当者選びを間違えないようにしましょう。
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宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー
ハウスクローバー株式会社の創業者兼CEO。また同時に、毎年全国から2〜300組ほどの住宅購入希望者の相談があり、実際の購入もサポートする現役の不動産エージェントでもある。業界歴は15年以上。多くの人から受ける相談内容と不動産業界の現状にギャップを感じ、住宅購入に必要なサービスと優良な不動産エージェントのネットワークを構築したプラットフォーム「HOUSECLOUVER」を企画運営している。自身が情報を発信しているYoutubeやブログは多くの住宅購入者にとって欠かせないバイブルとなっている。
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