中古マンションに限らず、不動産はそう何度も何度も買い物をするようなものではないため、どうやって進めていけばいいのか分からない方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、世間一般的に考えられている流れには実は間違っていることも多くあります。間違った流れで中古マンションを購入してしまうと、あなたが購入したあとに苦労してしまう可能性が高くなります。そこで、ここではそんな中古マンションの間違った購入の流れを説明しながら、失敗するリスクが極めて低くなる正しい購入の流れについて説明していきます。
中古マンション購入の流れが早く知りたい方は、目次のタイトルをクリックしていただくと、目的の項目までジャンプできるようになっています。
よくある間違った中古マンションの購入の流れ
まず最初に、多くの人が間違ってしまっている中古マンション購入の流れについて説明していきます。
物件探しから始めてはいけない?
多くの人が間違ってしまうのは、一番初めに不動産情報サイトなどで中古マンションを探し始めることから始めてしまうことです。相場観やどんな物件があるのかを見る程度であれば構いませんが、本気で検討する前にまずやることがあります。それは予算を決めることです。多くの人が、自分が「どれくらいの予算であれば無理なく支払っていけるか」を正しく把握していません。
国土交通省では毎年、住宅を購入して1年以内の家庭に対してアンケートを実施しています。そのアンケートは質問内容が非常に多岐にわたり、さまざまな動向を見ることができます。そのアンケートの中に、「住宅ローンの負担感」という項目があります。その項目では以下の4つを選択するようになっています。
- 非常に負担感がある(生活必需品を切りつめるほど苦しい)
- 少し負担感がある(ぜいたくはできないが、何とかやっていける)
- あまり負担感はない(ぜいたくを多少がまんしている)
- 全く負担感はない(家計にあまり影響がない)
そしてそのアンケートの結果がこちらです。
(※国土交通省「平成29年度住宅市場動向調査」より抜粋)
このアンケートによると、約6%の家庭が「生活を切り詰めないといけないほど苦しい」と答えています。繰り返しになりますが、これは住宅を購入してから1年以内の家庭です。10年、20年経っている家庭の話ではありません。
また約半分の家庭が「ぜいたくはできないが、何とかやっていける」と答えています。この層は将来、家族の成長によって負担が増えた時期にかなり危険な状態になるリスクがあります。つまり、およそ55%の方が、中古マンションを購入したことによって、なんらかのお金の不安を抱え込んでしまっているわけです。
家を買う目的には人によって様々ですが、共通するのは「暮らしを豊かにするため」です。この約55%の家庭は、住宅ローンの奴隷になってしまっている状態で、そもそも家を買う目的を果たせていないのではないでしょうか。
このような状況にならないためにも、まず中古マンションを探しだす前に、家庭にとって無理なく支払っていける予算を先に把握することが、失敗するリスクを減らすためには欠かせません。どうやって無理のない予算を把握すればよいのかについては、後ほど正しい購入の流れの中で詳しく説明していきます。
不動産情報サイトから問い合わせてはいけない?
もう一つの大きな間違いが、SUUMOやアットホームといった不動産情報サイトから直接問い合わせてしまうことです。これはかなり多くの人がやってしまっている間違いです。
なぜこれが間違いなのかというと、日本の不動産業界は欧米諸国と違って、資格がなくても経験がなくても不動産を売ることが出来てしまうからです。つまり、不動産情報サイトから直接問い合わせるということは、担当者は決まってしまっているので、不動産業界に入って1か月の担当者に当たってしまう可能性があるということです。特に人の出入りが激しいこの業界では、業界歴1年くらいの人はゴロゴロいます。
一生のうち、最も大きな買い物で、かつ少しのミスが大きな損失につながるような取引で、そんな営業マンがあなたの担当になったとしたらどうでしょうか?きっと後悔したときには時すでに遅しかもしれません。実際、インターネット上にはそのようなトラブルに対する書き込みが後を絶ちません。
逆に業界歴が長ければいいというわけでもありません。なぜかというと、不動産業界は基本的に顧客の利益よりも、業者や営業マンの利益が優先される業界だからです。つまり、いくら知識や経験があっても、早く買って欲しいがために、無理なく支払っていける予算には触れずに銀行から借りれそうな金額を予算にし、また将来的なリスクがあったとしても、教えてくれるかどうかは分かりません。
日本は世界の先進国の中でも、最も透明性が低いと言われていて、一般の消費者よりも不動産業者が持っている知識や情報は、かなり大きな格差があります。ですから、その知識を業者や営業マンのために使うのではなく、あなたの利益のために使ってくれる不動産業者を、物件を探すよりも先に探しておかなければいけないのです。
事前に知っておきたい、不動産業界の仕組み
上の図は、不動産業界(仲介)の全体像になります。
一番左に中古マンションを売りたいと考えている売主がいます。その売主は不動産仲介業者Xに売却の依頼をします。ちなみにこの売主側の業者のことを「元付(もとづけ)業者」といいます。
売主から物件を預かった元付業者Xは、レインズと呼ばれる、不動産会社のみがアクセスすることが出来る物件データベースシステムに掲載します。それを見た不動産会社A,B,Cが自らの購入希望の顧客に紹介したり、不動産情報サイトに物件情報を掲載して集客をしています。ちなみに、よく不動産情報サイトで同じ物件が色んな業者から出ているのはこのためです。
この仕組みを理解すると、どの不動産会社からでも同じ物件が購入できることに気が付くと思います。そして不動産会社に支払う仲介手数料は、どこでも変わりません。それであれば、あなたはどんな不動産会社、もしくは担当者を選べばいいのかを真剣に検討すべきということが、ご理解いただけるのではないでしょうか。
中古マンション購入の正しい流れ
それではここからは、これらの間違いを踏まえた上で、中古マンション購入に失敗しないための流れをお伝えしていきます。
1.ご自身やご家族の希望や条件を確認する
まずは家を買うにあたり、ご家族でいろいろと話し合っていただくことをお勧めします。なぜこの作業が一番初めに必要かというと、いざ物件を探し始める段階になって、ご家族の希望や条件が定まっていないと、物件を見るだけで決められない状態に陥ってしまうリスクがあるからです。
このあたりのことは、5W1Hを意識して決めていくとスムーズに進めていくことが出来ます。5W1Hとは、
- Why(なぜ?):家を買う目的
- Where(どこに?):エリアなど
- What(何を?):物件の種別など
- When(いつ?):時期、いつまでに
- Who(誰から?):どの不動産会社から?どの担当者から?
- How(どのように?):予算など
この段階ですべて埋まらなくても大丈夫です。埋められなくても、現状で何が分からないか分かるだけでも十分です。
2.無理なく支払っていける予算を把握する
多くの人は、今の家計の状況から、大体これくらなら払っていけそうと予算をある程度計算していきます。しかしこの方法は、先に家の予算が決まって、残ったお金で生活をやりくりすることになります。分かりやすく図示すると、
これから得られるであろう収入 ー 住宅購入費 = 残ったお金でやりくり
一方で、正しい予算の考え方を同じく図示すると、
これから得られるであろう収入 - 望む生活をするために必要な支出 = 住宅の予算
この二つの違いが分かりますか?この違いはかなり大きな違いです。つまり、正しい予算の考え方というのは、これから得られる収入から、あなたが望む生活を送るための支出(教育支出や老後支出など)を先にひいてから、残ったお金を住宅の予算にすることです。
ここを間違えてしまう方が非常に多いということが、冒頭でご紹介した国土交通省のアンケートの結果にもつながっているのではないでしょうか。逆に正しい方法で予算を導き出していれば、住宅ローンの奴隷になることがなく、あなたが望む暮らしの豊かさを実現できる可能性が高まります。
3.不動産業者、担当者探し
中古マンション購入の正しい流れは、物件を探しだす前に不動産業者、もしくは担当者を探すことです。そうすることによるメリットとして、
- 自分の利益を考えて行動してくれる担当者を見つけられる(運任せにしなくてよい)
- 住宅ローン減税など、制度面で失敗するリスクが低くなる
- 買ってはいけない物件を教えてくれる
- 案内の時に、物件を複数指定しても窓口がひとつ(通常は、複数物件の場合、それぞれの担当者になるので、時間調整に難航したり、同じ話を何度もしなければいけないことも、、、)
などなど、大きなメリットがたくさんあります。逆に物件探しから始めてしまうと、このメリットがそのままデメリットになります。不動産先進国と言われるアメリカでは、一般的な人で一生のうちに5~6回住み替えると言われていますが、そんな彼らでさえ、物件を探す、内覧をする前に担当者を探します。
4.中古マンションを探す
予算と担当者が決まれば、本格的に物件探しをしていきます。物件探しにも色々なスタイルがあると思いますが、筆者のおススメはAI(人工知能)搭載のWebアプリを使ったサービスを利用することです。
このサービスでは、AIが中古マンションの資産価値や見えないリスクを教えてくれたり、物件探しを自動化できるため、時間の節約にもなります。毎日色んな情報サイトを見るのにも時間がかかるので、そういった作業をロボットに任せて、その浮いた時間を趣味や家族との時間に回していただくことができます。
⇒ AI搭載のWebアプリで物件探しをより安全に、便利に、、、
5.中古マンションを内覧する
気になる物件を見つけたら、担当者に知らせて内覧の段取りをしてもらいましょう。事前に管理状態なども調査してもらえるようにお願いすると、事前に買ってはいけないマンションかどうかがわかります。
6.買付(購入)申込書を出す
いくつか見ていく中で気になる物件が見つかれば、買付申込書を提出します。買付申込書とは、購入希望価格や支払い条件などを記載した用紙を売主に提出し、商談をすることです。この商談がまとまれば晴れて契約に進みます。
ちなみにこの買付申込書は商談がまとまれば契約をすることが大前提です。交渉をしてから考えてみるというのはタブーで、担当者の顔に泥を塗る行為にもなりますので、しっかり決断をしてから提出するようにしてください。
7.住宅ローンの事前審査を申し込む
順番としては、前工程の買付よりも後にきていますが、タイミングとしてはほぼ同時になります。買付をだしても、住宅ローンの事前審査が通っていないと返事をしてもらえないことが実務上は多くあります。ほかにも検討者がいる場合などには、事前審査の出た順番で決まることもあります。
ですから、なるべく早く事前審査を通せるように必要書類などはあらかじめ準備しておくようにしましょう。また本気で探すのであれば、探しだす前に事前審査を通しておくことも検討しましょう。特にリフォームやリノベーション費用も住宅ローンと一体として借りる場合は、事前のときに概算で構わないので見積書が必要になるので、デザイン性が強いリノベーションを考えているときは事前に業者を見つけておくこともポイントになります。
事前審査は、あくまで返済比率に合うかどうかの「枠」を見ることと、個人信用情報に問題がないかどうかを見極めることが目的ですので、特に物件が決まっていない段階でも、仮の物件を見つけて審査をすることも可能です。
8.重要事項の説明を受ける
事前審査が無事承認になって、商談もまとまれば、晴れて契約になります。契約の前に、対象となる中古マンションの重要事項調査に関わる説明を、宅地建物取引士の資格者から受けます。本来は、契約までにとされていますが、契約と同時に行われることが多いです。
説明する内容は、中古マンションの情報や、法令上の制限、管理の状況や規約の重要な部分、取引条件など、その名の通り重要な事項が説明されます。専門用語が多く、分かりにくいことも多くあると思いますが、事前に不利益になりそうなことは担当者から説明を受けておくと安心です。時間的な余裕があれば、製本前のひな形を送ってもらい、事前に目を通しておくとよいでしょう。
9.売買契約を締結する
売買契約の締結時にはじめて金銭が発生します。具体的には、手付金と仲介手数料になります。あとは、契約書に貼る収入証紙も必要になります。
手付金とは売主に対して払う金銭で、売買代金の一部に充当されます。充当されるというのは、例えば3,000万円の物件で、手付金を150万円支払ったら、決済時には残りの2,850万円で良いという意味です。
またこの手付金は解約手付とよばれ、契約の解除にあたりペナルティ的な性格があります。ペナルティとは、買主都合で契約をやめたいとなったときに、手付金を放棄して契約を解除でき、売主都合で契約をやめたいとなれば、手付金をまず返して、さらに同額の金銭を払って契約を解除することができます。
契約をすると、お互いにそれぞれ義務を履行しますので、簡単に解約ができてしまうと、関係者が困ってしまうためです。ただし、住宅ローンの本審査が承認されなかったことによる解約は、通常「融資(ローン)特約」と呼ばれる条件がつき、この場合は白紙撤回となります。
持ち物は、特に指定がなければ身分証明書と印鑑、収入印紙くらいですが、住宅ローンに連帯債務者をつけたり、持ち分を複数名入れる場合は、連名で署名することになりますので、その方たちの身分証明書と印鑑も必要になるので注意してください。
10.本審査に申し込む
売買契約のパートでお伝えした「融資(ローン)特約」には、期限が設けられています。この期限を超えてしまうと、特約による解除が出来なくなってしまうため、スピード感が必要になります。
またリフォームやリノベーション費用を住宅ローンと一体で借りるときには、この時までに工事業者と請負契約書を締結しておく必要がありますので、リフォーム・リノベーションが住宅ローンに絡むときは特にスケジュールに注意が必要になります。
住民票や印鑑証明書、収入を証明する書類(住民税決定通知書や、役所で入手する所得証明書)、自営業の方であれば納税証明書、などが必要になりますので、合わせて準備しておくようにしましょう。
本審査の時は、基本的にはお金を借りる人が申し込みをするので、連帯債務者や連帯保証人も手続きが必要になります。また住宅ローンの申し込みをしない場合でも、持ち分を少しでも登記する場合は、担保提供の承諾書が必要になりますので、事前に銀行と打ち合わせをよくしておくようにしてください。
11.金融機関と金銭消費貸借契約を締結
晴れて本承認が下りたら、次は金融機関と金銭消費貸借契約(以下、金消契約)を締結します。金消契約の前に、住民票を移動する必要があります。通常は引っ越した後でなのですが、売買が絡むと、銀行や減税のからみで、事前に新住所へ移動させる必要があるのです。
銀行は、金消契約の時に新住所の住民票と印鑑証明書の提出を求めてきます。また登録免許税等などの減税においても、新住所であることが原則です。ただし、学校や病院などの関係ですぐに移動させられないこともあります。その場合は、銀行と司法書士に相談するようにしてください。
また金消契約には、次に説明する決済・引渡し日が確定している必要があります。決済・引渡し日は、銀行の窓口がやっている時間帯であるため、事前に仕事のスケジュールなど調整しておくようにしてください。
12.決済・引渡し
最後は関係者が一堂に銀行に集まって、決済・引渡しの手続きをします。
まず司法書士が売主と買主の双方から必要な書類を取り付け、必要書類に署名捺印をして、登記ができる書類が全部整ったら、銀行にその旨を伝えます。司法書士の指示を受けた銀行の担当者は、住宅ローンの実行をします。
実行された住宅ローンは一旦、買主の口座に振り込まれて、そこから売主へ残代金が振り込まれます。その他の諸費用などすべてこの時点で発生します。そして残代金の振込みを売主が確認できましたら、物件に関わる書類や鍵などを買主に引き渡します。
この時をもって、所有権が移転し、晴れて買主の所有となります。この後から引っ越しや、リフォーム・リノベーションについては工事を始められるようになります。
また契約書に「瑕疵(かし)担保責任」という項目があります。瑕疵とは見えない欠陥のことで、売主も買主も把握していなかった欠陥のことを言います。この瑕疵担保責任ですが、中古マンションの場合は、雨漏りや給排水管が対象になりますが、設備のみ免責となっていたり、引渡しから1週間となっていたりします。
瑕疵担保責任期間中は、欠陥があれば売主負担にて費用を負担してもらえるので、期間中に必ず確認しておくようにしましょう。そして、もし欠陥があったとしても、自分で補修をせず、売主に立ち会ってもらい確認してもらうことが必要になります。先に直して請求書だけ渡しても、対応できないため注意するようにしてください。
順番を間違えないように、正しい順番を理解しましょう
ここまで、多くの人がやってしまいがちな間違いと、正しい順番について説明してきましたがご理解いただけましたでしょうか。全体的な流れは変わらなくても、すこし順番を間違えるだけで、損をしてしまう可能性があるのが中古マンションという商品の性質です。
あなたも、中古マンションを購入して豊かな暮らしを実現できるように、ここに説明した中古マンション購入の正しい流れを意識して進めていただければと思います。
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宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー
ハウスクローバー株式会社の創業者兼CEO。また同時に、毎年全国から2〜300組ほどの住宅購入希望者の相談があり、実際の購入もサポートする現役の不動産エージェントでもある。業界歴は15年以上。多くの人から受ける相談内容と不動産業界の現状にギャップを感じ、住宅購入に必要なサービスと優良な不動産エージェントのネットワークを構築したプラットフォーム「HOUSECLOUVER」を企画運営している。自身が情報を発信しているYoutubeやブログは多くの住宅購入者にとって欠かせないバイブルとなっている。
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