限られた立地に建てるマンションで機械式駐車場は、効率よく駐車スペースを取る手段として有効的な方法です。
実際、都心部などの好立地に所在する多くのマンションでは、機械式駐車場が採用されています。
一方で、機械式駐車場は雨風にさらされることで経年劣化がしやすく、安全に長く使用するには定期的なメンテナンスや補修作業等が必要です。
これらの費用は、年数が経過するごとに補修箇所が増え、さらに全ての費用は管理組合の負担となるため、機械式駐車場は金食い虫と言われてしまっています。
では、機械式駐車場がある分譲マンションは、将来的に莫大な修繕費等が掛かるなど金銭的なリスクは大きいと言わざるを得ないのでしょうか?
この記事では、マンションの機械式駐車場についての基本的な情報や機械式駐車場の維持管理に掛かるコスト削減に関する対応策、機械式駐車場があるマンションを購入する時に見ておくべきポイントについて解説します。
この記事をお読みいただくことで、機械式駐車場があるマンションを検討するときの注意点等を理解しながら、検討や購入を前向きに進められるようになります。
宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー
ハウスクローバー株式会社の創業者兼CEO。また同時に、毎年全国から2〜300組ほどの住宅購入希望者の相談があり、実際の購入もサポートする現役の不動産エージェントでもある。業界歴は15年以上。多くの人から受ける相談内容と不動産業界の現状にギャップを感じ、住宅購入に必要なサービスと優良な不動産エージェントのネットワークを構築したプラットフォーム「HOUSECLOUVER」を企画運営している。自身が情報を発信しているYoutubeやブログは多くの住宅購入者にとって欠かせないバイブルとなっている。
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マンションの築年数が新しいほど機械式の割合が多くなる
マンションの築年数が新しいほど、機械式の割合が多くなる傾向があります。
その理由は、マンション用地自体が高騰し続けており、住戸をたくさん造らなければマンションデベロッパーの採算が合わないケースが多くなってきているからです。
さらに、限られた土地で駐車台数を多く取る方法としては、機械式駐車場を設置するほうが都合が良いということもあるでしょう。
実際、都心部など好立地の分譲マンションでは、住戸の広さをコンパクトにして戸数を稼ぎ、駐車場は機械式、駐輪場もラック式などで省スペース化を図っているケースが多くあります。
今後も、土地や建築費の高騰も重なり、機械式の割合が多くなる傾向が続くことになるでしょう。
マンションの駐車場は主に2種類
マンションには、主に2種類の駐車場があります。
各々の特徴やメリットやデメリット等について、以下にご紹介していきましょう。
自走式駐車場
自走式駐車場とは、車を運転して駐車枠まで移動させる駐車場のことです。
マンションによって平面の駐車場のところもあれば、立体駐車場となっているものもあります。
立体駐車場とは、多層構造の駐車場で、車が自走すると地上階から屋上階まで移動ができるものがあります。
主に郊外型の大規模分譲マンションによく見られ、身近なところでは大型商業施設などの立体駐車場も自走式になっているケースが良くあります。
利用者は、指定の駐車枠に車を停めたら、エレベーター若しくは階段を利用して地上階にアクセスします。
駐車場用としてマンション敷地内にまとまった土地を確保でき、且つ立体構造にすることで平置きよりも効率よく駐車台数を増やせることが自走式のメリットです。
また、屋上階以外には屋根があり、雨等で車が汚れにくいこともあります。
一方でデメリットは、駐車スペースが広いので移動が大変なことがデメリットと言えるでしょう。
荷物が多い時などは、運搬等にて不便さを感じることがあるかもしれません。
機械式駐車場
機械式駐車場とは、主に階層式に車を収容していく機械装置の駐車場のことです。
機械式には、パレットが上下移動や横行昇降するタイプなどがあり、駐車できる車の台数により機械装置の規模感が変わります。
機械式駐車場のメリットは、機械装置内に駐車すれば車に悪戯されるリスクがないことや地下に潜るタイプであれば、車が汚れないなどです。
一方でデメリットは、メンテナンス・補修に費用が掛かることや機械装置自体が故障するリスク、パレットが車幅ギリギリで駐車自体が難しいなどがあります。
機械式駐車場にはどんな種類がある?
次に、機械式駐車場の種類について解説します。
地上二段・多段式
地上二段・多段式とは、駐車している車の上に別の車を駐車できる方式を言います。
平置きであれば1台しか駐車できないところ、この方式であれば2倍の駐車容量を持てるメリットがあります。
また、車を昇降させる方法には、油圧式、ロープ式、チェーン式があります。
ピット二段・多段式
ピット二段・多段式とは、駐車している車の下(地下)に別の車を駐車できる方式です。
一般的にマンションの場合は、地上1段と地下2段のパレットで車を収容するスタイルが一般的となっています。
これにより、地上1段の車は平置き駐車場のように車を出し入れできる手軽さと、地下1・2段については風雨にさらされずに車が汚れずらいことや悪戯されないなどのメリットがあります。
一方で、機械式駐車場の支柱が車幅ギリギリであることや乗り降りのしづらさ、機械装置の隙間に物を落としてしまうおそれがあるなど、デメリットがあります。
パズル式(昇降横行式)
パズル式とは、主に車を乗降するためのゲートが1か所あり、操作盤で駐車したいパレットを操作することでパズルのようにパレットが横や縦に動きながら、ゲートを目指して移動してくるタイプの機械式駐車場です。
パズル式は、収容する車の台数により地上や地下部分を利用しての多段式になることが一般的となります。
二段式やピット式より、段数や列が多いので駐車台数を増やせることがメリットです。
一方でデメリットは、パレットの横行昇降に時間が掛かることやゲートが限られているので、他の利用者が使用中の場合に待ち時間が長くなる可能性があります。
タワー型(垂直循環方式・エレベーター方式)
タワー型には、垂直循環方式やエレベーター方式があります。
エレベーター方式は、複数のパレットを垂直方向に複数配置し、配送装置により車を特定のパレットに配置する方法です。
一方で垂直循環方式は、パレット自体がタワー内を循環して空きパレットに常時車を駐車できる方式となっています。
これらは、都心部で土地を効率よく使う方法としては、最も最適な方法と言えます。
タワー型のメリットは、駐車場に使用する土地を最小限に留められることと狭い土地でも複数台の駐車スペースを設けられることです。
一方で、デメリットは構造物の規模が大きいことで、補修やメンテナンス等に莫大な費用が掛かり続けることです。
機械式駐車場は金食い虫
機械式駐車場は、大抵青空の下にあるケースが多いため、雨風や高温多湿な気候に一年中さらされ続けることや機械装置が都度稼働することで、機械部品の摩耗や消耗による故障等が起きやすい状況となっています。
そのため、当然機械式駐車場の維持費は平置き駐車場と比べてコストがかかり、「金食い虫」と言っても過言ではないでしょう。
特に、故障してしまうと駐車場自体が使えずに日常生活に影響が出てくることや、機械装置自体の安全対策を維持するには定期的なメンテナンスが必要です。
また、大雨が起きるとピット内に排水ポンプはあるものの、排水能力を超える雨水であれば冠水するリスクがあります。
冠水後には回復工事が必要となるので、何かとお金がかかることが想定されます。
また、機械装置の経年劣化が進めば、機械装置の撤去や新設に莫大な費用がかかります。
よって、機械式駐車場は維持管理や建て替えで莫大な費用がかかるため、金食い虫と言われています。
都心部で進むクルマ離れ
都心部では、車を持たない人が増えています。
その理由は、購入時の負担の他に、駐車場代やガソリン代の負担などで経済的な負担が重いと感じる人が多いからです。
また、電車やバスなど交通インフラが発達する都市部では、車がなくても十分に移動手段が確保できるということもあるでしょう。
他にも、所有に拘らずカーシェアなど必要な時に必要な分を利用するという考え方が浸透しているという理由もあります。
以上のような理由から、都心部では車を所有しない世帯が増え続けています。
お金がかかる機械式駐車場の対応策
何かとお金がかかる機械式駐車場には、コスト削減等に関する対応策があります。
以下に3つの対応策をご紹介します。
機械式駐車場の平面化
機械式駐車場を廃止して、平面駐車場に変更する方法があります。
例えば、築年数が進んだマンションでは、住民の高齢化で徐々に駐車場の需要が少なくなるケースがあります。
このとき、駐車場の区画が余るようであれば、そもそもの機械式駐車場を撤去して平置きにするということです。
もちろん、撤去工事自体に莫大な費用が掛かることや、住民の中には反対する人が出てくる可能性があるなどのデメリットはありますが、負の遺産を無くし維持管理が簡単な平面駐車場への変更は、先々を見据えたマンション管理組合の運営を考えればメリットとなるケースが多いでしょう。
外部への貸出
外部の第三者に駐車区画を貸し出す方法があります。
この方法は、空いている駐車区画を外部に貸し出すことで賃料収入を得られ、将来的なメンテナンス費用等に充当できます。
なお、機械式駐車場がマンションのセキュリティ内にある場合には、貸出自体が難しいケースもあります。
よって、外部への貸し出しは空き区画の賃料収入を得られることで将来的なメンテナンス等の費用に充てられるメリットがあるものの、貸し出しには住民の同意などが得られるかが重要なポイントとなります。
リース+フルメンテナンスにする
機械式駐車場をリース契約+フルメンテナンス契約にする方法があります。
この方式にすることで、都度の補修やメンテナンス毎に発生する多額の費用を抑えられます。
まず、フルメンテナンス契約とは、毎月機械式駐車場の保守費用を払っておくことで、突発的な修理や点検により発生する費用を保守サービスの範囲内に納められ、別途費用を支払う必要がなくサポートを受けられます。
これにより、点検等で部品交換等があってもコストを気にすることなく、メンテナンスを進められます。
特に、築年数の古いマンションでは、機械式駐車場も設置から相当数の年数が経過しており、修理等の頻度も多くなるのでメリットとなるケースが多いでしょう。
また、リース契約にすることで管理組合は建築費を負担することなく、古くなった機械式駐車場の交換も可能です。
管理組合は、既存駐車場の撤去費用は負担するものの、新設の駐車場にかかる費用が削減できることで、駐車場の建て替え工事がしやすい環境を整えられます。
つまり、既存の機械式駐車場ではフルメンテナンス契約、既存駐車場の建て替えではリース契約を採用することで、管理組合の負担軽減につながる可能性があります。
さらに詳しく
機械式駐車場をリースにすると、管理組合としては修繕積立金からの拠出でなく、管理費からの拠出になり、修繕積立金が値上がりしにくいと言われています。
ただし機械式駐車場の空きが多いような状況だと、リース会社の収益性確保のため、毎月のリース料が値上げされることもあります。
対策がしやすいものと対策がしにくいもの
ここまで解説してきたように、機械式駐車場には将来お金の問題が出た時に、対策がしやすいものとしにくいものがあります。
まず地上二段・多段式やピット式などは、部分的に平面駐車場に戻すなどの処置がしやすい形態といえます。
仮に全体の2割が空いていたとしても、その分だけ平面化がしやすいので、対策もしやすいです。
逆にパズル式は、一つの機械に多くの車が駐車されているので、駐車場を借りている所有者との調整が難しいときもあります。
さらにタワー式に関しては、丸ごと潰さないといけないので、将来空きが増えたときに、借りている所有者たちとの調査がかなり難航すると思われます。
このように機械式駐車場で将来お金の問題が発生した時に、対策がしやすいものとそうでないものがあるということを覚えておくとマンション探しの時に役に立ちます。
マンション購入時に見ておくべきポイント
本章では、マンション購入時に見ておくべき以下3つのポイントについてご紹介します。
機械式駐車場を含めた修繕計画の確認
機械式駐車場を含めた修繕計画を確認しましょう。
そもそも機械式駐車場は基本的にメンテナンスや補修に莫大な費用がかかるものであるからです。
例えば、機械式駐車場の稼働率の見込みや賃料収入についての見積金額、賃料収入のみでメンテナンスは可能であるのかなどを見るとよいでしょう。
よって、機械式駐車場を含めた修繕の積み立てが計画通りにできているかを購入前に確認しておきます。
管理組合の財務状況
管理組合の財務状況について確認しておきましょう。
管理組合の財務状況次第で、将来的に建物や駐車場のメンテナンスのときに修繕積立金とは別途で費用負担が生じる可能性があるからです。
仮に、管理組合の財務状況が良ければ、機械式駐車場のメンテナンス費用を賃料収入で賄えなくても修繕積立金で補填できます。
また、将来的に機械式駐車場を撤去する場合でも、資金捻出がしやすい状況になるでしょう。
管理組合の財務状況や修繕積立金等の積み立てが計画通りに進んでいるかなどを確認しておきます。
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駐車場の利用率
駐車場の利用率を確認しておきましょう。
実際の利用率を見ておくことで、賃料収入の安定性や修繕積立金等への影響について予測できることがあるからです。
仮に利用率が高ければ、賃料収入は安定的な可能性があり、機械式駐車場の修繕計画自体に問題は出にくいと考えられます。
一方で、利用率が少なければ賃料収入も不安定で、将来的に機械式駐車場の維持管理や更新時の修繕に充当できる金額も当然に少なくなり、修繕積立金からの捻出等も必要となるため、余計な費用負担が生じる可能性があります。
よって、機械式駐車場の現況の利用率についても、購入前に確認しておきましょう。
リスクを見極めるためには管理組合の調査必須
本記事では、分譲マンションにはよくある機械式駐車場についての解説を進めてきました。
機械式駐車場は、限られた土地で駐車台数を確保する方法として効果的な方法です。
一方で、機械装置自体には経年劣化があり、使用を繰り返すたびに消耗していくので定期的なメンテナンスや補修が必要となります。
そのため、機械式駐車場を維持し続けるには、莫大な費用が掛かります。
また、これら費用の捻出には、駐車場の賃料収入は欠かせないものであることから、駐車場自体の利用率も適切な維持管理には重要なポイントとなります。
よって、機械式駐車場がある分譲マンションを購入するときには、機械式駐車場の利用率や修繕計画に必要な積立金の状況、管理組合の財務状況についてしっかりと確認しておくことで将来的なリスク軽減につながります。
買ってはいけない物件の見極めは不動産エージェントに依頼しよう
マンションを購入する際は、機械式駐車場の状況や管理組合の財務状況などを調査できる担当者選びが重要なポイントとなります。
一般の消費者がこれらの情報を入手したり、管理会社にヒアリングして、リスクを正しく判断することは難易度が高いため、これらの調査をプロの視点で正しく行うことが必要だからです。
不動産売買のプラットフォーム「HOUSECLOUVER(ハウスクローバー)」では、全国の優良な担当者が探せます。
またハウスクローバーの不動産エージェントには、マンション管理の調査を行うツールが用意されていて、誰もが一定の水準以上のレベルで調査ができるような仕組みになっています。
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