「マンションの修繕積立金っていくらぐらいが相場なの?」
「修繕積立金についてくわしく知りたい」
マンション購入時に修繕積立金の金額や将来的な上がり幅については、コスト面で気になる方も多いのではないでしょうか。
昨今では建築資材や人件費の上昇で、さらに修繕積立金が上がる可能性が高まってきています。
実際、マンションは築年数が進むと修繕箇所が増えるため、修繕積立金は徐々に上がっていくことが一般的です。
では、修繕積立金に相場はあるのでしょうか?
また相場があれば、いくらぐらいが妥当なのでしょうか?
この記事では、修繕積立金に関する基礎的な内容や相場、実際の積み立て方法について解説します。
さらに、国土交通省が発表している修繕積立金に関する指針についても、くわしくご紹介します。
この記事をお読みいただくことで、マンションの維持管理に欠かせない修繕積立金について深く理解できます。
宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー
ハウスクローバー株式会社の創業者兼CEO。また同時に、毎年全国から2〜300組ほどの住宅購入希望者の相談があり、実際の購入もサポートする現役の不動産エージェントでもある。業界歴は15年以上。多くの人から受ける相談内容と不動産業界の現状にギャップを感じ、住宅購入に必要なサービスと優良な不動産エージェントのネットワークを構築したプラットフォーム「HOUSECLOUVER」を企画運営している。自身が情報を発信しているYoutubeやブログは多くの住宅購入者にとって欠かせないバイブルとなっている。
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修繕積立金とは
修繕積立金とは、建物のメンテナンスに関する費用や大規模修繕の費用を捻出するために積み立てを行っているお金のことです。
毎月一定の金額を所有者から徴収し、集めたお金は管理組合の口座に貯められ、工事が必要なタイミングに応じて使用されます。
なお、修繕積立金は築年数が進むほど上がります。
その理由は、建物が古くなるにつれて外装や共用部の傷みが酷くなり、メンテナンスの頻度や対象が多くなるからです。
つまり、築年数が進むほど修繕積立金が高くなっていることが一般的となります。
修繕積立金と管理費の違い
管理費とは、マンションの管理や運営のために支払う費用です。
例えば、実際に管理業務を行う管理会社に支払う費用や共用部の光熱費などに充てられます。
修繕積立金は上がるケースが多いのですが、管理費は上がること前提で金額設定は行われていません。
しかし、管理費等の収支悪化や物価高騰などの要因により、管理会社から値上げの要請があった場合、管理費が上がる可能性もあります。
長期修繕計画書とは
長期修繕計画とは、マンションの大規模修繕や定期点検などの予定を長期間にわたり先を見据えて計画するものです。
これらをまとめたものが、長期修繕計画書となります。
長期修繕計画書は、一般的に30年先を見据えて計画されており、今後発生する修繕箇所や見積もり金額をもとに、修繕積立金として集める金額を設定しています。
修繕積立金には相場が提示されている
修繕積立金の目安については、国土交通省が発表する「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」にて示されています。
このガイドラインは、マンション購入者や所有者が修繕積立金に関する基本的な知識や金額の水準などについて、目安となる水準が分かります。
修繕積立金と長期修繕計画については、一般の消費者では分かりづらい部分となります。
設定されている修繕積立金が適正か否かの判断がつきにくいため、このようなガイドラインの存在は重要と言えます。
修繕積立金の目安と算出方法
ここからは、修繕積立金の目安と算出方法について解説します。
修繕積立金の額の目安
修繕積立金の目安と算出方法について、国土交通省のガイドラインを参考にご紹介します。
まず修繕積立金は、建物の階数や戸数などの規模感や共用部としての施設や設備の多さにより変わってきますが、ガイドラインでは目安的な金額を示しています。
修繕積立金は、基本的にマンションの戸数が少ないと高くなる傾向があります。
その理由は、総戸数が少ない分、1世帯あたりにかかる負担額がどうしても多くなってしまうからです。
そのような背景もあり、5000㎡未満のマンションについては、他の規模のマンションと比べて修繕積立金の平均値は高くなっています。
また、20階以上のいわゆる高層住宅については、修繕工事自体に特殊な作業が多く、修繕積立金は高くなってしまいます。
このように修繕積立金の目安がガイドラインで示されることで、現在設定されている金額が適正か否かの判断材料になるでしょう。
次に、修繕積立金の算出方法は、以下のとおりです。
上記計算式をもとに修繕積立金の金額について、計算してみましょう。
なお、これらの計算式はあくまで参考です。
ここで計算する金額よりも高ければ「安全」、安ければ「リスクが高い」というわけではありません。
修繕積立金の運用の良し悪しは、管理組合の運営によって、かなり差が出ます。
つまり毎月の修繕積立金が高くても、それでも足りないマンションもあれば、毎月の修繕積立金が安くても十分運営ができているマンションもあるということです。
なぜそのような違いが出るかが気になる方は、こちらの記事も合わせてご参照ください。
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機械式駐車場がある場合の加算額
機械式駐車場があると、設備自体の保守メンテナンスがあるため、修繕積立金はさらに加算されます。その目安は、以下のとおりです。
例えば、2段(ピット1段)昇降式が3つ(6台分)あった場合、機械式駐車場の修繕工事費は1台あたり6,450円です。
マンションの総床面積が3,000㎡の場合の加算額は、以下のように計算できます。
【機械式駐車場がある場合の加算額=6,450円×6(台)÷3,000(㎡)=12.9円】
つまり、既存の修繕積立金に12.9円を加算した額が修繕積立金の目安です。
機械式駐車場の個別性や、将来お金が足りなくなった時に取ることができる対応策など、詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。
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修繕積立金3万円は高い?
筆者がお客様の中古マンション購入のお手伝いをしている中で、1つの目安となるのが毎月の修繕積立金が3万円というラインです。
3万円を超える中古マンションは、お客様が購入にあたって躊躇する方が多いと感じるのです。
よって、3万円を超えているかどうか、また将来的に3万円を超えそうかどうかで、その中古マンションの良し悪しを判断する目安とするのも良いと思います。
修繕積立金はどこまで上がるか?
修繕積立金がどこまで上がるかは、長期修繕計画にその予定額が示されています。
ただ、長期修繕計画書はあくまで管理会社が作成したものであり、必ずその通りになるとは限りません。
実際どの程度まで上がるかは、マンションの管理組合がどれだけ機能しているかにかかっています。
筆者が調査してきたマンションでは、将来的に毎月の積立金額が6万円以上になると予測されるものもありました。
一方で毎月の積立金額が数千円で運営できているマンションもあります。
修繕積立金は、仮に同じ管理会社であったとしても、管理組合の運営次第で大きく変わるということを覚えておきましょう。
マンションの管理組合と管理会社の違いや、マンションを購入するのであれば必ず知っておくべきポイントをまとめた記事も合わせてご参照ください。
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修繕積立金の積立方式
ここからは、修繕積立金の積立方式について解説します。
段階増額積立方式
段階増額積立方式とは、一定の時期ごとに段階的に修繕積立金を上げていく方式のことです。
徐々に上がっていくことが確定されているわけではなく、その時々でマンションの管理組合の総会で話し合いをしながら決議を採択して値段が上がっていきます。
上げなければいけないタイミングで値上げをしていなかったり、本来不必要な工事まで管理会社主導で進んでしまい、将来的に修繕積立金が不足するなど、問題が出やすい方式といえます。
均等積立方式
均等積立方式は、建物竣工の初年度から一定金額の修繕積立金を集める方法で、期間途中での増額を行わない方式となります。
均等積立になるので築年数が古くなっても、ランニングコストが上がらないことがメリットで、比較的安全性の高い積立方式といえます。
ただし建築費単価やマンションの状況によっては変更をせざるを得ないような状況になる可能性はあります。
段階増額積立方式と均等積立方式はどちらが多いか?
国土交通省が5年ごとに管理組合に対して行っているアンケートによれば、築年数が新しくなればなるほど、段階増額積立方式が多くなっているのが分かります。
段階増額積立方式が多くなっている理由は、新築マンションの販売時になるべく支払額を安く見えるようにして、売れやすくしたいという販売会社の思惑からです。
特に近年では新築マンション価格が高騰しており、ほとんどのマンションで段階増額積立方式が採用されています。
それだけに、築年数が新しくなればなるほど、修繕積立金のリスクがあると考えても良いのではないでしょうか。
計画に対して積立金が不足しているマンション
同じく令和5年度「マンション総合調査」(国土交通省)」によれば、修繕積立金が不足しているマンションは全体に対して34.8%あるとされています。
つまり、実に3割超のマンションでは、修繕積立金が不足している事態に陥っています。
また積立金がしっかり積み立てられていると答えているマンションの割合は4割を切っている状況で、2割強のマンションでは、そもそも足りるか足りないかが分からないと答えています。
なぜこのような状況が起こってしまっているのでしょうか。
もちろん、近年の物価高騰、資材高騰や工事費の上昇などが要因でもあります。
また、値上げをしなければいけない状況で管理組合の意見がまとまらずに値上げを先送りしてしまっているマンションもあります。
そして何よりも問題なのは、管理会社が本来修繕をまだしなくても良い箇所や、工事費の水増し(キックバックなど)により、管理組合が本来負担すべき積立金を超えてしまっていて、結果として不足しているマンションも実は数多く存在しています。
ここ最近の建築費の高騰もあり、それに便乗した管理会社からの積立金の値上げが国土交通省が問題視するようになりました。
国土交通省が修繕積立金に対する新しい指針を公表
2024年6月、国土交通省は修繕積立金に関する指針「長期修繕計画作成ガイドライン」の改訂版を発表しています。
これはマンションの修繕に関する問題意識を政府が改めて示し、既存マンションに住む居住者の快適で安全な住まいを確保するために定められています。
国土交通省がガイドラインを示すことで、長年放置されていたマンション修繕に関する問題の露呈と管理組合の意思決定の後押しになるような位置づけを目指しています。
マンションの修繕積立金の値上げが払えない問題を問題視
マンションの修繕積立金が値上げになると支払いができない世帯が今後出てくることが予想されます。
その理由は、マンション価格の高騰と歴史的な低金利により、世帯年収のギリギリまで夫婦でペアローンを組むケースが多いからです。
ランニングコストの上昇を考慮せずにローンを組んでいるため、修繕積立金が値上げになると支払いが厳しい事態に陥るケースが出てくる可能性があります。
また、ローンを組んだ時よりも世帯年収が下がってしまった場合や子供の教育費の増加でも、支払いが難しくなるケースも当然に考えられるでしょう。
これら修繕積立金の支払いができなくなると、修繕計画自体に狂いが生じ、必要な個所の修繕が必要な時期にできないおそれが出てきます。
修繕積立金の値上げ幅を、当初の1.8倍を上限に
このような状況を問題視した国土交通省は、2024年2月、修繕積立金の値上げ幅を当初の1.8倍を上限にする方針を示しました。
例えば、当初の修繕金が10,000円であれば、18,000円が上限となります。
ちなみに当初というのは、マンションが建築された時点のことをいい、今後のマンションは大幅な積立金の値上がりができないようになります。
だからといって、それで安心ではなく、上げられないのに積立金が足りないという状況も来る可能性があることに注意が必要です。
新築時の積立金は基準額の0.6倍以上
段階増額積立方式で、新築時の修繕積立金は基準額の0.6倍以上としています。
基準額とは、計画期間全体における月あたりの修繕積立金の平均額です。
つまり、基準額を下回る修繕積立金の初期設定はできないこととなっています。
新築マンションの分譲業者のなかには、初期の修繕積立金を安くし月々のランニングコストを安く見せることで販売を進捗させる手法が一部で横行しているため、これらを防止する役目も果たしています。
引き上げの上限は1.1倍以内を推奨
現在存在している既存のマンションについては、本ガイドラインでは修繕積立金の引き上げ上限は、平均値の1.1倍以内を推奨しています。
これは修繕積立金の引き上げを実現性の高い範囲で早期に完了し、その後均等積立方式へ誘導することを目的としているためです。
ガイドラインでは、新築当初から5年おきに3回程度の引き上げを行い、その後の修繕積立金については均等に集めていくことを推奨しています。
これにより、将来的な修繕に支障が出ないように早めの引き上げと、安定的な修繕金の確保ができるようになります。
なお、実際の引き上げ幅はマンションにより異なります。
マンションの管理調査ができる担当者を選ぼう
マンションの修繕は、そのマンションの資産性を維持するためには重要な要素です。
しかし、修繕積立金が当初の修繕計画通りに集められていないケースが多く、このようなマンションでは修繕積立金の不足や将来的な修繕工事自体に影響が出てくるおそれがあります。
マンション購入時には、修繕積立金が適正に徴収されているかや実際に設定されている金額、将来的に修繕金が足りない事態などに陥る心配がないかなどを、管理調査できる担当者を選ぶことが必要です。
マンション購入時には、金額や広さ、築年数や眺望だけでなく、居住後の管理や修繕計画についても目を向けることが重要となります。
管理の財務状況の調査は、不動産のプロであっても正しく出来る人はほとんどいません。
筆者は8年以上、棟数にして5,000件以上の管理組合の財務調査をしてきており、ロジックも開発して将来のシミュレーションができるようにしています。
ハウスクローバーでは、このロジックをシステム化し、ハウスクローバーの不動産エージェントであれば誰でもこのロジックを利用して、マンションの管理組合の財務調査ができるようになっております。
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ハウスクローバー株式会社の創業者兼CEO。また同時に、毎年全国から2〜300組ほどの住宅購入希望者の相談があり、実際の購入もサポートする現役の不動産エージェントでもある。業界歴は15年以上。多くの人から受ける相談内容と不動産業界の現状にギャップを感じ、住宅購入に必要なサービスと優良な不動産エージェントのネットワークを構築したプラットフォーム「HOUSECLOUVER」を企画運営している。自身が情報を発信しているYoutubeやブログは多くの住宅購入者にとって欠かせないバイブルとなっている。
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