この記事で分かること
- なぜ銀行は長期固定(全期間固定)金利を積極的に勧めないのか
- 住宅ローンのリスクは誰が負っているのか(変動と固定の違い)
- 金利上昇局面に入った今の長期固定金利の状況
- 全期間固定金利は損なのか
- フラット35のメリット・デメリットと向いている人
住宅ローンには変動金利と固定金利があります。長期間ずっと金利が変わらない全期間固定金利で組もうと色々な銀行を回ってみると、意外と取り扱っている金融機関が少なく、銀行があまり積極的に勧めてこないことに気づくと思います。
なぜ銀行は長期固定金利を積極的に扱わない、勧めないのでしょうか。そして、日銀の利上げで金利が上がり始めた今、全期間固定金利は本当に損なのでしょうか。
この記事では、不動産業界歴17年の現役エージェントである私が、銀行が長期固定金利を勧めない本当の理由から、金利上昇局面での損得の考え方、フラット35のメリット・デメリットと向いている人まで、まとめて解説します。

宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー
ハウスクローバー株式会社の創業者兼CEO。また同時に、毎年全国から2〜300組ほどの住宅購入希望者の相談があり、実際の購入もサポートする現役の不動産エージェントでもある。業界歴は17年以上。多くの人から受ける相談内容と不動産業界の現状にギャップを感じ、住宅購入に必要なサービスと優良な不動産エージェントのネットワークを構築したプラットフォーム「HOUSECLOUVER」を企画運営している。自身が情報を発信しているYoutubeやブログは多くの住宅購入者にとって欠かせないバイブルとなっている。
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なぜ銀行は長期固定(全期間固定)金利を積極的に勧めないのか
結論からお伝えすると、銀行が長期固定金利を積極的に勧めないのは、商品が悪いからではなく、銀行にとってリスクが大きく、儲かりにくいからです。
どこの金融機関も変動金利は当たり前のように扱っているのに、全期間固定金利の取り扱いには大きなばらつきがあります。これは、住宅ローンの金利の種類によって、リスクを負う側が変わることに理由があります。次の章で、その仕組みを詳しく見ていきましょう。
住宅ローンのリスクは誰が負っているか?
住宅ローンの金利には、貸し出す側(銀行)と借りる側(消費者)の双方にリスクがあります。なぜなら金利は、貸す側にとっては利益、借りる側にとっては負担であり、相反するものだからです。そして、どちらがリスクを多く負うかは、金利の種類によって変わります。
変動金利の場合は、借りる側(消費者)のリスクが大きくなります。変動金利は将来的に金利が上がる可能性があり、金利が上がれば借りている側の返済負担が増え、返済が苦しくなることもあるからです。逆に貸している銀行からすると、金利が上がればその分の利息を受け取れるので、ほぼノーリスクです。
一方で全期間固定金利は、貸し出す銀行が負うリスクが大きくなります。将来的に世の中の金利が上がっても、契約した金利は最後まで変わりません。そのため銀行は、市場の金利よりも低い収益しか得られないことになります。むしろ、貸している金利よりも市中金利が高くなれば「逆ザヤ」といって、銀行は赤字になることさえあります。借りている側からすると、金利が上がってもその差額を負担する必要がないので、ノーリスクです。
つまり、変動金利は借り手が金利上昇リスクを負い、全期間固定金利は銀行がそのリスクを負う、という正反対の構造になっているのです。
全期間固定金利を扱う銀行が少ない理由
ここまでの説明で分かる通り、全期間固定金利は、貸し出す側である銀行のリスクが非常に高くなります。世の中の金利が契約時より上がってしまえば、貸している間ずっと損失が広がり、経営が立ち行かなくなることもあり得ます。こうした理由から、全期間固定金利を自社商品として扱う銀行は少ないのです。
実際に、私が営業をしている名古屋市や周辺エリアでも、自前で全期間固定金利を扱っている銀行はごくわずかで、メガバンクと一部の地方銀行に限られます。他の銀行で「35年固定」と謳っているものは、そのほとんどがフラット35です。フラット35は、全国の金融機関が代理店となって取り扱う仕組みになっています。
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フラット35はなぜ全期間固定金利なのか?
フラット35は、住宅金融支援機構という公的な機関が中心となって貸し出しを行う住宅ローンです。民間銀行がリスクを嫌う全期間固定金利を、なぜフラット35は提供できるのでしょうか。理由は大きく3つあります。
借りる人のリスクを抑えて、貸し倒れのリスクを減らしているため
物件に厳しい技術基準を設けているため
営利を第一としない公的な住宅ローンだから
フラット35は全期間固定金利なので、借りる側は金利上昇局面でも返済額が変わらず、返済を続けやすくなります。これにより、返済できずに貸し倒れとなるリスクを減らしています。また、人に対する審査よりも物件審査に厳しい基準を設けており、万一の貸し倒れでも担保物件で埋め合わせできるようにしています。
さらにフラット35は、住宅金融支援機構が運営する公的な住宅ローンであるため、営利目的の民間金融機関では負いきれないリスクも負える体制が整っています。営利目的の民間ローンとは、成り立ちからして異質な住宅ローンだといっても過言ではありません。
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【2026年最新】長期固定金利は上昇局面に入った
この記事のもとになった解説を最初に書いたのは、まだ歴史的な超低金利が続いていた頃でした。当時は「金利は過去水準から見てもかなり低く、これ以上下がる余地は小さい」とお伝えしていましたが、その後、状況は大きく変わりました。
日本銀行は2024年にマイナス金利政策を解除し、その後も段階的に利上げを進めています。政策金利は2025年12月に0.75%まで引き上げられ、これは約30年ぶりの高水準です。2026年に入っても物価上昇と賃上げを背景に、さらなる利上げが意識される状況が続いています。
この影響は、長期固定金利にはっきりと表れています。長期固定金利の代表であるフラット35(返済期間21〜35年・融資率9割以下)の金利は、2026年4月の2.39%から、5月は2.71%、6月は3.21%へと、わずか2か月で0.82ポイントも上昇しました。長期金利(10年国債利回り)の上昇や、世界的なインフレ警戒がその背景にあります。
かつて全期間固定金利の相場が1%台だった時代と比べると、明らかに局面が変わっています。そして、政策金利の上昇は、短期プライムレートを通じて変動金利にも波及し始めており、変動金利も上昇局面に入りつつあります。「金利はもう上がらない」という前提は、もはや通用しなくなっているのです。
全期間固定金利は損なのか?金利上昇局面での考え方
「全期間固定金利は損」とよく言われますが、これは半分正しく、半分は誤解です。
全期間固定金利が損になるかどうかは、将来金利が上がるかどうかで決まります。金利が上がらなければ、当初の金利が低い変動金利のほうが総返済額は少なくなり、結果的に全期間固定は「損」に見えます。逆に金利が大きく上がれば、ずっと金利が変わらない全期間固定のほうが得になります。
これまで「全期間固定は損」と言われ続けてきたのは、長く超低金利が続き、結果として変動金利を選んだ人のほうが得をしてきたからです。しかし、それはあくまで過去の結果論です。前章で見たとおり、今はすでに金利が上がり始めており、これからも上がらない保証はどこにもありません。
全期間固定金利の本当の価値は、総返済額の大小だけでは測れません。返済額が完済まで一円も変わらないため、教育費や老後資金の計画が立てやすく、金利が上がっても家計が揺らがないという安心が得られます。これは、いわば金利上昇に対する保険のようなものです。
金利が上がり始めた今だからこそ、目先の総返済額だけで「損」と決めつけるのではなく、家計の安定や安心まで含めて、変動金利と全期間固定金利を冷静に比べることが大切です。
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フラット35はやめたほうがいい?銀行が勧めない理由とメリット・デメリット
「フラット35はやめたほうがいい」「銀行が勧めない」という声もよく聞きますが、これも誤解が含まれています。
銀行がフラット35を積極的に勧めないのは、ここまで解説してきたとおり、銀行にとって儲かりにくく、リスク構造の面でも自社の変動金利を売ったほうが有利だからです。決してフラット35という商品自体が悪いわけではありません。
その上で、フラット35のメリットとデメリットを整理しておきます。
フラット35のメリットは、全期間固定で返済額が完済まで変わらない安心があること、団体信用生命保険への加入が任意のため健康に不安がある方でも利用しやすいこと、自営業や転職直後など民間ローンの審査が通りにくい方でも借りやすいこと、そして物件が一定の技術基準を満たす必要があるため、物件の質がある程度担保されることです。
一方でデメリットは、足元のように金利が上昇している局面では変動金利との金利差が大きくなりやすいこと、物件が技術基準を満たさないと利用できないこと、繰り上げ返済などで条件に違いがあることです。
「銀行が勧めない=悪い商品」ではありません。銀行側の事情と、自分にとっての向き不向きを切り分けて判断することが大切です。
全期間固定金利を扱っている金融機関は?
全期間固定金利で住宅ローンを組みたくても、どこに行けばいいのか分かりにくいものです。自前で全期間固定金利を扱っているのは、主にメガバンクや一部の地方銀行で、それ以外の多くの金融機関は、代理店としてフラット35を取り扱っています。
金利の水準は、金融政策や長期金利の動きによって毎月変わります。かつては1%台で組めた時期もありましたが、前述のとおり2026年6月時点でフラット35は3%を超える水準まで上昇しています。最新の金利は必ず住宅金融支援機構や各金融機関の公式情報で確認し、複数の選択肢を比較するようにしてください。
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全期間固定金利・フラット35が向いている人・向かない人
ここまでの内容をふまえて、全期間固定金利やフラット35が向いている人と、そうでない人を整理します。
向いているのは、次のような人です。
- 返済額を完済まで確定させ、家計の見通しを安定させたい人
- 教育費や老後資金など、将来の出費に備えて金利の変動リスクを持ち込みたくない人
- 今後の金利上昇が不安で、精神的な安心を重視したい人
- 自営業や転職直後などで、民間ローンの審査が通りにくい人
逆に、次のような人は変動金利も含めて検討したほうがよいでしょう。
- 短期間での完済を予定していて、金利上昇の影響を受けにくい人
- 繰り上げ返済を積極的に行い、早めに残高を減らせる人
- 金利が上がっても家計に十分な余裕があり、上昇リスクを取れる人
大切なのは、「損か得か」だけで決めるのではなく、自分の収入の安定性やライフプラン、リスクをどこまで受け入れられるかで判断することです。
全期間固定金利・フラット35を選ぶ前のチェックリスト
変動金利か全期間固定金利かで迷ったら、契約前に次の点を確認してください。
- 変動金利と全期間固定金利の総返済額を、最新の金利でシミュレーションして比較したか
- 金利が上がった場合に、変動金利でも家計が耐えられるか確認したか
- フラット35を使うなら、物件が技術基準を満たすか確認したか
- 団体信用生命保険の有無や加入条件を確認したか
- 繰り上げ返済の予定と、その条件・手数料を確認したか
- 自分が向いている人・向かない人のどちらに近いかを把握したか
- 金利とリスクの関係を理解して、正しい判断ができる状態か
全期間固定金利には、将来にわたって返済額が変わらないという大きな安心があります。ただ目先の金利の低さだけで変動金利を選んでしまうと、今のような金利上昇局面では、将来返済負担が増えて生活が苦しくなる可能性もあります。
かつてのように「金利はずっと低いまま」という前提は、もはや通用しません。だからこそ、金利とリスクの関係をよく理解したうえで、変動金利と全期間固定金利のどちらが自分の家計に合うのかを判断することが、これまで以上に重要になっています。
住宅ローンの借入や資金計画を立てる際には、なるべく金融知識を備えた不動産エージェントに相談することで、金利上昇にも耐えられる安心なライフプランを描くことができます。一番大事な資金計画を間違いのないものにして、暮らしの豊かさを手に入れましょう。
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よくある質問
Q1:全期間固定金利は損ですか?
将来金利が上がらなければ変動金利のほうが得になり、結果的に損に見えます。しかし金利が上がれば全期間固定のほうが得です。日銀の利上げで金利が上がり始めた今は、過去の「変動が得」という結果論がそのまま通用するとは限りません。返済額が完済まで変わらない安心は金利上昇への保険であり、総返済額だけで損得は決められません。
Q2:なぜ全期間固定金利を扱う銀行は少ないのですか?
全期間固定金利では、将来金利が上がっても返済額を上げられないため、金利変動のリスクを銀行側が負うことになるからです。リスクを取りたくない銀行は、リスクを借り手が負う変動金利を中心に扱う傾向があり、長期固定はフラット35の代理店という形が中心になります。
Q3:フラット35はやめたほうがいいですか?
やめたほうがいいとは限りません。金利上昇局面では変動金利との金利差が大きく見えますが、完済まで返済額が変わらない安心、団信が任意で入りやすい、自営業や転職直後でも借りやすい、といったメリットがあります。自分の状況に合うかどうかで判断しましょう。
Q4:銀行がフラット35を勧めないのはなぜですか?
商品が悪いからではなく、銀行にとっては自社の変動金利ローンのほうが金利収入やリスク管理の面で有利だからです。フラット35は住宅金融支援機構と提携した公的な商品で、銀行が積極的に勧める動機が弱いという事情があります。
Q5:いまは金利が上がっていますが、変動と全期間固定どちらを選ぶべきですか?
一概には言えませんが、金利上昇が不安で家計の安定を最優先したいなら全期間固定、目先の返済額を抑えたい・繰り上げ返済で早く完済できる見込みがあるなら変動、という考え方が基本です。必ず最新の金利で総返済額を比較し、金利が上がっても返済を続けられるかを確認したうえで判断してください。

宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー
ハウスクローバー株式会社の創業者兼CEO。また同時に、毎年全国から2〜300組ほどの住宅購入希望者の相談があり、実際の購入もサポートする現役の不動産エージェントでもある。業界歴は17年以上。多くの人から受ける相談内容と不動産業界の現状にギャップを感じ、住宅購入に必要なサービスと優良な不動産エージェントのネットワークを構築したプラットフォーム「HOUSECLOUVER」を企画運営している。自身が情報を発信しているYoutubeやブログは多くの住宅購入者にとって欠かせないバイブルとなっている。
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