ここ最近、住宅ローンの借り入れ期間が最長50年となる商品が話題となっております。
そもそも住宅ローン50年商品は、西日本シティ銀行や宮崎銀行、福井銀行、千葉信用金庫、足利銀行などの地銀が中心に取り扱っていました。
しかしここ最近になって、ネット銀行の住信SBI銀行でも提供がされるようになりました。
近年は住宅ローンの貸し出し競争が激化し、変動金利における実行金利は値下がりを続けていますが、その競争は金利だけでなく借り入れ期間もその対象となることとなります。
私たち消費者にとって、選択肢が増えることは歓迎すべきことですが、そもそも住宅ローンで最長50年まで組んでしまっても大丈夫なのか?
そんな疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、不動産業界で15年以上に渡り、住宅購入のお手伝いをするとともに、ファイナンシャルプランナーとして、多くの顧客のライフプラン作成援助と無理のない予算の見極めをお手伝いをしてきた筆者が、忖度なしに住宅ローン50年に関する見解を解説していきます。
これから住宅ローンを借りる方で、住宅ローン50を検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。
宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー
ハウスクローバー株式会社の創業者兼CEO。また同時に、毎年全国から2〜300組ほどの住宅購入希望者の相談があり、実際の購入もサポートする現役の不動産エージェントでもある。業界歴は15年以上。多くの人から受ける相談内容と不動産業界の現状にギャップを感じ、住宅購入に必要なサービスと優良な不動産エージェントのネットワークを構築したプラットフォーム「HOUSECLOUVER」を企画運営している。自身が情報を発信しているYoutubeやブログは多くの住宅購入者にとって欠かせないバイブルとなっている。
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住宅ローン50が大手銀行やネット銀行でも提供開始
この記事の冒頭にも解説しましたが、住宅ローン50年自体は、以前から一部の地方銀行で提供されていました。
以前はどちらかといえば、マイナーな商品であり、あまり話題に上がることはありませんでした。
しかし最近、住信SBIネット銀行が住宅ローン50年の提供を開始し、話題となっています。
住信SBIネット銀行が最長50年の住宅ローンの取り扱いを始めたことで、他の大手銀行やネット銀行も追随してくる可能性もあり、住宅ローンを50年借りるという選択肢も一般的なものになっていくのかもしれません。
住宅ローン50年が話題になっている背景
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そもそも住宅ローンが最長50年借りられることが話題になっていることの背景として、主に都心部を中心とした不動産価格の高騰が挙げられます。
このグラフは、主要都市における中古マンション価格の推移ですが、2012年から一貫して上昇を続けており、その勢いは未だ衰える気配を見せません。
特に東京23区内の新築マンションなんかは、平均価格が1億円を超えたとのニュースも流れており、不動産価格の高騰が、一般の消費者にとって住宅取得のハードルを上げてしまっているのが現状です。
そんな中で、住宅ローンの借り入れ期間が延ばせるということは、その分毎月の支払額を抑えることができるため、不動産取得にとっては追い風となり、ここまで話題になっているのではないでしょうか。
※5,000万円を借り入れた時の毎月の支払額の比較表
35年 | 50年 | |
---|---|---|
金利0.5% | 129,792円 | 94,200円 |
金利2.0% | 165,631円 | 131,895円 |
住宅ローンを50年で借りなくてもいい
住宅ローン50という名称を聞くと、住宅ローンを50年借りなければいけないと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、あくまで最長50年までという意味です。
実際に借りるのが、38年でも40年でも45年でも構いません。
ご自身にとって都合の良い年数が設定できるという商品です。
住宅ローン50年のメリット
それでは、住宅ローン50年を利用するメリットについて解説していきます。
月々の支払いが抑えられる
前のパートでも解説しましたが、最も大きなポイントとなるのが、毎月の支払額を抑えることができることです。
毎月の支払額を抑えることができれば、日々の生活に余裕が生まれます。
特に若い方は、住宅ローンの借り入れ当初は給与が低くても、支払額を抑えることができますので、購入に進みやすくなります。
より高い物件を購入することもできる
次のメリットはより高い物件を購入することができるということです。
実際、先ほどの表で、35年の住宅ローンと同じ支払額で50年にするといくらの予算になるかを見てみましょう(金利は0.5%で想定)。
35年 | 50年 | |
---|---|---|
毎月の支払額 | 129,792円 | 129,792円 |
借入額 | 5,000万円 | 6,847万円 |
この比較表を見ると分かりますが、同じ金利で35年と50年の借入期間を比較すると、およそ2,000万円近くも予算が変わります。
相場が高いからといって、予算を下げて生活のクオリティを下げたくない方にとって、住宅ローンを長く組めるのはとても魅了的に見えるのではないでしょうか。
団体信用生命保険の効果が長い
3つ目のメリットは、住宅ローンの支払い期間が長くなりますので、その間に付帯される団体信用生命保険の効果が長くなります。
一般的に考えて、人間は長く生きれば生きるほど、亡くなったり、がんなどの病気になるリスクは高くなります。
その間も団体信用生命保険が適用されているので、万が一の時の安心感や、不謹慎ですが「お得さ」といった観点でも魅力があります。
住宅ローン50年のデメリット
メリットがある一方で、もちろんデメリットもあります。
ここからは住宅ローン50年のデメリットについて解説していきます。
住宅ローンの完成年齢が長くなっているわけではない
まず住宅ローンが50年組めるという商品ですが、必ず50年組めるというものではありません。
金融機関によって条件は違いますが、多くのものは80歳が完済年齢となっており、50年の期間で借りようとしたら30歳になるまでに住宅ローンを組まなければいけない計算になります。
私の体感的に、初めて家を買う方の年齢の多くは30歳を超えているので、50年間フルで借りられる方というのは少ないのではないかと感じています。
利息が増え、総支払額も高くなる
住宅ローンの支払い期間が長くなればそれだけ支払い利息も増えますし、その結果として支払い総額も高くなります。
実際に先ほどの5000万円を借り入れをそれぞれ35年と50年で比較してみましょう。
35年 | 50年 | |
---|---|---|
金利0.5% | 129,792円 | 94,200円 |
総支払額 | 54,512,740円 | 56,520,232円 |
差額 | -2,007,492円 | |
金利2.0% | 165,631円 | 131,895円 |
総支払額 | 69,564,969円 | 79,136,829円 |
差額 | -9,571,860円 |
金利が安い時は、そこまで差額は気になりませんが、金利が上がるとその差が目立つようになります。
変動金利であれば最長50年も変動リスクにさらされる
また変動金利であれば、金利の変動リスクに50年もさらされることになります。
50年も先の未来がどうなるかは全く予測もつかないので、金利がどうなるかは誰にも予測ができません。
長期間固定金利は金利が高くなる傾向に
また50年もの長さになると、それこそ予測がつかない世界になるので、固定金利も従来の期間のものと比較して高くなる傾向があります。
お金を貸す金融機関としては、仮に2%でお金を貸したとして、30年後に5%に上がっていたら、金融機関がその差額分の金利を負担しなければいけなくなるので、金融機関のリスク分、高くなるのは当然といえば当然のことではないでしょうか。
住宅ローンの期間よりも建物の寿命のほうが短いことも
金融機関によっては、建物の築年数による制限が設けられているところもありますが、住宅ローンを仮に50年借りたとしたときに、たとえばその対象が戸建てだとしたら、もしかしら住宅ローンの期間よりも先に建物の寿命がくることもあるかもしれません。
住宅ローンの残債が減るよりも資産価値の減りが早い
また物件は古くなれば資産価値は減少していきます。
一方で住宅ローンも時間が経てば残債が減っていきます。
しかし住宅ローンを50年で借りていると、資産価値の減少よりも住宅ローンの残債の減りの方が遅いこともあります。
特に返済方法で、元利均等方式を選択した場合、当初元本が減るスピードは非常に遅く、資産価値の方が先に下がってしまうこともあります。
※元利均等方式のイメージ
売りたくても売れないリスク
住宅ローンの残債の減りが、資産価値の減少よりも遅いときに、大きな問題となるのが、売却をしたいと考えたときです。
※5000万円の借入で、金利を0.5%として、それぞれの年数が経過したときの住宅ローン残債額の比較表
35年 | 50年 | |
---|---|---|
10年後の残債 | 36,595,372円 | 40,974,049円 |
20年後の残債 | 22,503,621円 | 31,485,432円 |
30年後の残債 | 7,689,525円 | 21,510,427円 |
5000万の物件を購入して、5000万円のローンを組んでいて、自宅を売ろうと思ったときに残債以上の資産価値が残っていないと、不足分を支払わなければ銀行が抵当権を外してくれないため、状況によっては売りたいと思っても売れないこともあり得ます。
それこそご自身の意思に関わらず、予期せぬ収入減によって自宅を売却せざるを得ない場合も、可能性としてはゼロではないですが、このような住宅ローンの残債の方が多い状態では、自宅を売ることすらできません。
ここが筆者が考える、住宅ローン50年の最も大きいリスクです。
住宅ローン50年で気をつけるべきこと
ここまで住宅ローン50年について解説をしてきましたが、メリットはあるものの、どちらかと言えばデメリットの方が多いです。
多くの方がおおよそ想像していた通りだと思いますが、実際文字にすると、そのリスクがより鮮明になります。
しかし、住宅ローン50年自体が決してダメというわけではありません。
計画的に利用できるのであれば、メリットを十分享受してリスクをコントロールをすることもできます。
ライフプランニングシミュレーションをしっかり行い、若い時の収入は低いものの将来年収が高い確度で上がることが見込まれる場合や、退職金などの一時所得を見込める場合など、戦略的に長く借りておいて、余裕のあるときに繰上げ返済をして残債を早く減らしていくことが実行できれば、使い方によっては非常に有用な商品になると思います。
逆に、ただより高い物件を購入したいからとか、月々の支払いが安くなるからといった安易な理由で住宅ローン50年を利用してしまうと、後悔するリスクが高いと言えます。
とはいえ、非常にリスクが高い商品ではありますので、利用にあたってはよくよく注意するようにしてください。
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結論、住宅ローン50年の利用は以下の条件を満たさなければやめた方がいい
最後に具体的にどのような条件を満たすことができれば、住宅ローン50年の利用をしてもいいのか。
その目安として以下の条件を挙げます。
- 将来の昇給が確実に見込める
- 退職金などの一時所得が見込める
- 定期的に繰上げ返済を実施することができる
- 資産価値が下がりにくい物件を選ぶことができる
これらの要件を満たせなければ、住宅ローン50年を利用するのは非常にリスクが高いと言えます。
また現時点で見込みがあったとしても、年数が長ければ長くなるほど不確実性も増しますので、よほどの理由がない限りは住宅ローン50年は利用しない方がいいのではないかと思います。
なお資産価値が下がりにくい物件を選ぶためには、物件選びをサポートしてくれるプロの介在が絶対条件となります。
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