フラット35の事前審査において、「留保」というフラット35特有の結果があるのをご存じでしょうか。
民間金融機関の住宅ローンではこのような結果はないのですが、フラット35を利用する場合は「留保」という審査結果になることがあります。
留保というとあまりいいイメージを持たない方も多いですが、実際はどういう意味をもつのでしょうか。
フラット35の利用を考えている方は事前に知っておくことで、いざ留保となった時にあわてないで済みます。
利用を考えていない方であってもフラット35の仕組みを理解し、民間の金融機関の住宅ローンと比べることでより良い選択ができます。
フラット35の審査の仕組みから、民間金融機関との違い、そして留保の意味まで、わかりやすく解説します。
宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー
ハウスクローバー株式会社の創業者兼CEO。また同時に、毎年全国から2〜300組ほどの住宅購入希望者の相談があり、実際の購入もサポートする現役の不動産エージェントでもある。業界歴は15年以上。多くの人から受ける相談内容と不動産業界の現状にギャップを感じ、住宅購入に必要なサービスと優良な不動産エージェントのネットワークを構築したプラットフォーム「HOUSECLOUVER」を企画運営している。自身が情報を発信しているYoutubeやブログは多くの住宅購入者にとって欠かせないバイブルとなっている。
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フラット35の留保は「〇」でも「×」でもない「△」?
フラット35の事前審査結果で承認がおりれば「〇」、否決であれば「×」、そして「△」が留保となります。
留保というのは、事前審査では判断ができないため、本審査で判断するということを示しています。
留保の理由は多岐にわたります。
例えば個人に関することであれば返済比率や他社からの借り入れ、転職などがあります。
また、購入予定の物件が原因で留保となることもあります。
この理由については金融機関に聞いても一切教えてくれませんので、正直わかりません。
実はフラット35の審査結果で「△」判定が出ることは決して珍しいことではありません。
しかし審査結果で「△」という白黒はっきりしない結果がでることに、疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
通常金融機関が住宅ローンを貸し出しできるか否かの判断をするための審査です。
しかし「△」というのは、その判断ができなかったことになります。
これは次の項目で解説をしていく、フラット35特有の仕組みが大きく関係しています。
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フラット35とは?仕組みと民間金融機関との違い
それではフラット35とはどのような仕組みなのでしょうか。
そして民間金融機関の住宅ローンとはどこが違うのでしょうか。
民間の金融機関の場合、審査をするのも貸し出しをするのも同じ金融機関になります(系列の保証会社が本審査を行うこともあります)。
一方でフラット35は民間の金融機関が事前審査をし、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)という独立法人が本審査を行い、貸出の可否を判断します。
つまり事前審査と本審査を行う機関が違います。
ここがフラット35と他の金融機関の住宅ローンとの決定的な違いです。
フラット35の融資の仕組みと運営母体
フラット35の仕組みは、まず民間金融機関が顧客に住宅ローンを融資します。
次に民間の金融機関が、融資した住宅ローンを債権化し、それを住宅金融支援機構が買い取ります。
そして住宅金融支援機構ががその買い取った債権を担保に証券を発行し、投資家に売却します。
簡単にいうと、全期間固定金利であるフラット35の商品は貸し出す側に大きなリスクがあります。
そのためそのリスクを独立行政法人である住宅金融支援機構が担う仕組みになっているのです。
ただ単に顧客が民間の金融機関とやりとりをしているのだけではなく、その後ろに住宅金融支援機構と投資家が資金の取引を行っているということです。
この仕組みがフラット35の事前審査において「留保」という特有の結果を作り出しています。
民間金融機関側が行う事前審査段階では、住宅金融支援機構が承認を出す条件なのかどうかが判断できません。
そこで民間金融機関としては、自分達の判断では承認がでるかわからないため、住宅金融支援機構が行う本審査で判断してほしいという形を留保という結果として出しています。
ちなみに各金融機関ごとにそれぞれが住宅金融支援機構と提携しており、フラット35の商品の内容が違います。
なぜなら、それぞれの金融機関が独自の商品パッケージを作りあげているからです。
フラット35だからといって内容を確認せずに決めるのではなく、様々な金融機関のフラット35商品をみてから選ぶようにしましょう。
フラット35の事前審査にかかる日数
フラット35の事前審査にかかる日数は、フラット35の取り扱いが多い金融機関、例えば専用モーゲージ会社のARUHIなどでは申し込みから1日ほどで結果が出ます。
審査自体に問題がない時や、明らかに否決のケース(信用情報がブラックの場合など)は、即日結果が出ることが多いですが、微妙なケースでは審査日数が長くなることが多くあります。
聞いていたより時間がかかっている場合は、直ちに否決というわけではないので、結果が来るまで悲観せずに待ちましょう。
フラット35の事前審査で「留保」が出てしまったら
事前審査の結果で留保という結果が出てしまったら、否決される可能性が高いと悲観的になってしまう方も多いのですが、実はそうでもありません。
事前審査を行う金融機関の審査はとても慎重です。
少しでも懸念材料がある場合は、留保という結果になります。
ですから、フラット35の審査結果で「留保」というのは、割と珍しいものではありません。
経験上フラット35の審査を受けた人のうち半数近くがこの留保となっていました。
(この割合には、フラット35でないと厳しいという消極的な理由でフラット35に事前審査を申し込んだ方たちも含まれているので、純粋にフラット35を利用したくて申し込んだ人の割合で考えると、もう少し低くなると思います)
つまり留保が出てしまったからといって焦ったり、すぐに諦める必要はありません。
ただしもちろん「承認」よりも本審査で否決になる可能性は高いので、他の民間金融機関の住宅ローンに事前審査を出すなどして担保をつくっておいたほうがより安心して取引を進めていけるでしょう。
フラット35の承認率を上げるために
フラット35は事前審査期間が各金融機関となるため、実は金融機関や担当者によって事前審査の承認率(承認、もしくは留保)が変わります。
金融機関の中には、フラット35の代理店はしているものの、担当者としてはほとんど経験がない人もいます。
フラット35は一般的な金融機関の審査とはやや違う特徴があり、その特徴を理解していないと、本来であれば承認、もしくは留保で本審査で承認を得ることができたので、事前審査で否決になってしまうことがあります。
例えば、自営業者はフラット35が出やすいと言われていますが、これは確定申告書の提出義務がないからです。
つまり赤字決算でも借りられる可能性があります。
もちろん審査の途中で不自然な箇所があれば、提出を求められるケースはあります。
しかし窓口になる担当者がそのことを知らずに、通常の住宅ローンのように確定申告書の提出をしてもらい事前審査に出しことにより、否決になってしまうことがあり得るのです。
ですから、フラット35で事前審査を出す時は、必ずフラット35になれた金融機関、もしくは担当者から申し込まなければいけません。
フラット35の「承認」の確度を上げる方法
フラット35の事前審査における「承認」は他の金融機関の「承認」とは違い、このような仕組みがあることから不動産業界では、結果に対する不信感があります。
不動産仲介業者は契約をする前に、必ず住宅ローンの事前審査が通っているかどうかを重視します。
せっかく契約を締結して、手付金の授受までするにも関わらず本審査で否決になってしまうと、さまざまな時間や労力が全て無駄になってしまうからです。
もちろん売主に対する信用も落ちます。
ですから事前審査の確度には非常に神経質になります。
このような状況下でフラット35の事前審査が本審査でひっくり返ってしまうことは、実は確率としてはそこまで高くないのですが、この留保という特有の結果から事前審査の信頼度は高くはありません。
契約のときにフラット35の事前審査で「承認」の確度をあげたいのであれば、事前審査を各金融機関に依頼するのではなく、住宅支援機構に依頼することです。
窓口となる金融機関の担当者に「機構経由の事前審査で」と伝えれば大体伝わると思います。
機構経由の事前審査は本審査と同じ審査期間が事前審査を行うことになりますので、事前審査で承認が出れば、よほどひっくり返ることはありません。
しかし、注意が必要なのが、この「機構経由の事前審査」であっても、「留保」は出るということです。
なぜかといえば、住宅支援機構の審査方法に由来する理由があるからです。
住宅支援機構では本審査を通すときに、特に問題のない人は機械で本審査を通すのですが、この機械審査でOKな人たちが「承認」となります。
しかしイレギュラーな内容があり、機械審査ではなく、人による審査が必要とされれば「留保」となります。
ほぼ確実に留保となるケース
さまざまな条件によって承認になったり、留保になったり、否決になったりするフラット35ですが、筆者の経験から、他の金融機関であれば問題なく承認になるようなケースであっても、フラット35であれば確実に「留保」になるケースがあります。
それが、単身者のマンション購入です。
少し前にフラット35が投資用マンションのローンとして不正利用されていたことがあり、単身者が中古マンションを購入するときは、ほぼ確実に留保が出ます。
しかもこの留保で本審査が否決になることも多々あるのです。
ですから単身者で中古マンションをフラット35を利用して購入しようとしている人は、なるべく他の金融機関もあたるようにしてください。
不動産エージェントによって可否が決まることも?
フラット35という商品は非常に独特の仕組みで、窓口が変わるだけで、借りられたり借りられなかったりします。正直なところ、その結果は窓口となる金融機関の担当者によって変わります。
そして購入者向けの仲介をよくやっている不動産エージェントは、こういった腕利きの担当者とつながっています。
実際は私も、他の業者で通らなかったお客様が紹介でいらっしゃって、もう一度やり方を変えてチャレンジしたら本審査に通った経験があります(全く同じ物件です)。
ですから、住宅ローンが借りられるか不安な人ほど、不動産エージェントはしっかり選ぶべきです。
誰を選ぶかによって、家が買えるか買えないかが決まるといっても過言ではないので、誰から住宅を購入するかという視点をもって家探しを始めてください。
まとめ
最後にフラット35の「留保」についてまとめておきます。
- フラット35では事前審査と本審査を行う機関が違う
- 留保とは、事前審査をする金融機関が住宅金融支援機構に判断をゆだねること
- 留保は「×」ではないが、「〇」でもない「△」の状態
- 事前審査の結果は通常1〜3日
- 留保が出ても本審査が通ることは十分にあり得る
- 事前審査で承認の確度を上げたいなら住宅支援機構経由の事前審査を利用する
- フラット35の取り扱い実績が少ない金融機関や担当者は避けること
- フラット35は金融機関の担当者の力量によって結果が変わる
- 経験のあるエージェントは経験のあるバンカー(金融機関の担当者)とつながっている場合が多い
これらのことを参考にしつつ、「留保」になったときの対応を知っておくとともに、事前に頼りになるエージェントを見つけるようにしましょう。
宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー
ハウスクローバー株式会社の創業者兼CEO。また同時に、毎年全国から2〜300組ほどの住宅購入希望者の相談があり、実際の購入もサポートする現役の不動産エージェントでもある。業界歴は15年以上。多くの人から受ける相談内容と不動産業界の現状にギャップを感じ、住宅購入に必要なサービスと優良な不動産エージェントのネットワークを構築したプラットフォーム「HOUSECLOUVER」を企画運営している。自身が情報を発信しているYoutubeやブログは多くの住宅購入者にとって欠かせないバイブルとなっている。
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