住宅ローンを申し込む際、「できれば早めに返したいし、途中で繰り上げ返済できそうならそうしよう」と思う方もいるかもしれません。
住宅ローンは長期にわたって返済するものなので、なるべく早く返し終わって肩の荷を下ろしたいと思うのは自然なことです。
しかし、繰り上げ返済が必ずしもいいとはいえないケースもあります。
そこでこの記事では、住宅ローンの繰り上げ返済についてご紹介します。
宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー
ハウスクローバー株式会社の創業者兼CEO。また同時に、毎年全国から2〜300組ほどの住宅購入希望者の相談があり、実際の購入もサポートする現役の不動産エージェントでもある。業界歴は15年以上。多くの人から受ける相談内容と不動産業界の現状にギャップを感じ、住宅購入に必要なサービスと優良な不動産エージェントのネットワークを構築したプラットフォーム「HOUSECLOUVER」を企画運営している。自身が情報を発信しているYoutubeやブログは多くの住宅購入者にとって欠かせないバイブルとなっている。
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住宅ローンの繰上返済とはどんな返し方?効果はどれくらい?
住宅ローンの繰り上げ返済をした方がいいのかどうかを話す前に、まずは繰り上げ返済には2つの方法があることをご説明します。
繰り上げ返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2つの方法があり、両者の違いは以下のとおりです。
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期間短縮型の場合
期間短縮型は、元金を繰り上げ返済すると、当初支払う予定だった利息が軽減されます。
その結果、毎月の返済額は変わらないものの、元金を繰り上げ返済した分の返済期間を短くできるのです。
返済額軽減型の場合
返済額軽減型は、元金を繰り上げ返済してその分の利息を軽減するのですが、返済期間は変わりません。
その代わり、利息が減った分毎月の返済額を軽減できます。
お得なのはどっち?使い分け方は?
元金を繰り上げ返済して利息を減らす基本的なやり方は、期間短縮型も返済額軽減型も同じです。
ですが期間短縮型と返済額軽減型を比べた場合、同時期に同じ金額を繰り上げ返済するなら、利息の軽減効果が大きいのは期間短縮型といわれています。
以下は、同時期に同額を繰り上げ返済すると仮定して、期間短縮型と返済額軽減型の利息軽減効果の違いを比べた例です。
例
借入額2,500万円、返済期間35年、金利1.4%、元利均等返済、3年後に150万円を繰り上げ返済
期間短縮型
利息軽減額:79万922円
返済期間短縮月数:30ヶ月
月々の住宅ローン返済額:7万5,327円(繰り上げ返済前と変化なし)
返済額軽減型
利息軽減額:40万2,016円
返済期間短縮月数:0ヶ月
月々の住宅ローン返済額:7万478円(繰り上げ返済前と比較して4,849円減額)
上記のように、期間短縮型と返済額軽減型では利息軽減額が38万8,906円も違います。
ただし、収入が減る・子どもの教育資金がかかるなど家計に対する住宅ローンの負担が増えそうな時は、返済額軽減型の方が向いています。
どちらの繰り上げ返済方法がいいのか迷った時は、どんな理由で繰り上げ返済したいのかを考えてから決めるようにしましょう。
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住宅ローンの繰上返済の注意点
繰り上げ返済は住宅ローンの負担を軽減するために有効な方法ですが、実行する前には以下の点について注意しなければいけません。
短縮した期間を再度延ばすことは難しい
一度繰り上げ返済をして返済期間を短縮すると、その後何らかの事情で短縮した期間を再延長することは難しいです。
期間短縮型での繰り上げ返済を検討している方は、この点を忘れないようにご注意ください。
繰上返済で手元資金に余裕がなくなる
繰り上げ返済を行うということは、一時的に多額のお金を住宅ローンの返済に充てることになります。
その際、貯蓄など手元資金から捻出しすぎると、いざという時のお金が足りず困ることになりかねません。
特に教育費は、子どもが大きくなるほどかかる費用も増えます。
そのタイミングで手元資金に余裕がないと家計がマイナスに転じてしまい、せっかくの繰り上げ返済が無意味になってしまうかもしれません。
教育費以外でも、病気やケガ・転職・仕事の業績悪化など万が一の事態が起きた場合に備えて、最低でも6ヶ月~1年は生活できるくらいの手元資金は残しておきましょう。
金融機関によっては手数料が必要なところも
住宅ローンを申し込む際は金融機関で事務手数料を支払いますが、実は繰り上げ返済を行う際も事務手数料が必要なところがあるのです。
繰り上げ返済時の事務手数料がいくらかかるかは、金融機関ごとで設定が異なるため一概には言えませんが、数千円~数万円と幅広いようです。
高額な事務手数料を支払ってまでも繰り上げ返済をする必要があるのか、いま一度よく考えることをおすすめします。
繰上返済の有効な利用方法
短縮した期間の再延長が難しいこと、手元資金の余力がなくなる可能性があること、実行時の事務手数料など、注意点もある住宅ローンの繰り上げ返済。
そんな繰り上げ返済の有効的な利用方法は、短期の返済期間とあまり変わらないくらいの繰り上げ返済を行うことです。
住宅ローンを申し込む前は、老後のことを考えて早めに返済できるよう返済期間を短くしたいと思う方は少なくありません。
しかし返済期間が短いと、その分毎月の返済額の負担が増えてしまうため、返済期間を長くして月々の返済額の負担を減らす方法をとる方がほとんどです。
ですが、長期の返済期間を設定して途中で繰り上げ返済を行うと、短期の返済期間を設定した場合と比較した総返済額があまり変わらないケースもあります。
以下の条件で、返済期間を短期で設定した場合と繰り上げ返済を行った場合の差額を比較してみましょう。
例
借入額3,000万円、金利1.5%
(1)返済期間を20年に設定した場合:毎月の返済額…14万4,763円、総返済額…3,474万3,155円
(2)返済期間を35年に設定した場合:毎月の返済額…9万1,855円、総返済額…3,857万9,007円
(3)返済期間を35年に設定し、3年ごとに190万円を繰り上げ返済した場合:毎月の返済額…9万1,855円、返済開始から18年後の総返済額…3,512万3,450円
上記3つのケースを比べると、(1)と(2)では総返済額が383万5,852円も異なります。
しかし(1)と(3)を比べると、総返済額の差額は38万295円です。
もちろん、いくら繰り上げ返済をするのか、繰り上げ返済を何回行うかなどの条件次第ではもう少し差額が大きくなります。
しかし例で表したように、はじめから無理に返済期間を短くして毎月の住宅ローン返済の負担を重くするより、「できる時にできる分だけ繰り上げ返済をする」方が有効と判断できる場合もあることを覚えておきましょう。
ライフプランに注意しながら返済にも正しい計画を
以前は定年退職を迎えるころに住宅ローンも完済できるようプランを考える方が多かったですが、最近は定年退職後もしばらく返済が続くようなプランを選択する方もいます。
定年退職後でも無理なく返済できるのであればいいですが、定年退職に至るまでに起きるライフステージの変化に伴う収支のバランスの変動は避けられません。
収支の変動があった時に都度適切な返済額の見直しと再設定ができればいいですが、それは難しいため、安全性が高い長期の返済期間を設定する方がほとんどです。
しかし長期の返済期間を設定する時、「できそうな時に繰り上げ返済をしたらいいか」と思っても、計画性がない繰り上げ返済はいつまで経ってもできずに終わってしまいます。
それは正しい返済計画といえないので、住宅ローン申し込み前には必ず入念な返済計画を考えること、そしてどんなライフプランニングをするかが重要です。
ライフプランニングはいわば今後の人生設計ですが、これを考えることでライフステージの変化に応じてどのくらい収支のバランスが変わるのかが可視化できます。
どのタイミングでどのくらいの支出が必要なのかを把握することで、繰り上げ返済できそうな時期と金額も見えてくるでしょう。
繰り上げ返済を考える中で一番してはいけないことは、「どうにかなるだろう」という楽観的な考えです。
長期にわたる住宅ローン返済は、「これだけ長い期間返すのだから、まぁどうにかなるだろう」と油断してしまうこともあります。
しかしそれは、失敗すると後のリカバリーが非常に難しくなる危険性も高いのです。
しかも失敗したライフプランの修正は、年齢が上がるにつれてどんどん厳しくなります。
入念にライフプランニングと返済計画を考えたうえで、「多少計画と違うことが起きてもこのくらいなら大丈夫だろう」というゆとりを持つことと、はじめから無計画に楽観視するのとでは全く違います。
こうしたライフプランニングや資金計画を1人で考えるには難しいため、ファイナンシャルプランナーやその資格を持つ不動産エージェントに相談すると良いでしょう。
住宅ローンに詳しいプロのアドバイスを基にライフプランニングを行うことで、繰り上げ返済をした方がいいか否か、するならどのタイミングでどのくらいの金額がいいのかが明確になって安心です。
繰り上げ返済を視野に入れて住宅ローンを申し込む予定の方は、ぜひ住宅ローンのプロへご相談ください。
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