「建て替え前の中古マンションを検討しても良いのか?」
「建て替えで負担する金銭はどのくらい?」
建て替え前の中古マンションには、取得価格が抑えられるメリットがある一方で、建て替え金の負担が生じるなど、デメリットや不安に思うことが多くあります。
実際、中古マンションの建て替えは、住民の同意が得られずになかなか建て替え工事が実行できないケースが多いようです。
では、建て替え前の中古マンション狙いは有りなのか?
また、メリットやデメリットはどのようなことになるのでしょうか?
本記事では、中古マンションの建て替えにおける現状やそもそものマンションの寿命について、建て替えの流れや建て替え前のマンションを取得するときの注意点等について解説します。
この記事をお読みいただくことで、建て替え前のマンション購入に関するメリットやデメリットを理解できたうえで、このような物件の検討を問題なく進められるようになります。
宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー
ハウスクローバー株式会社の創業者兼CEO。また同時に、毎年全国から2〜300組ほどの住宅購入希望者の相談があり、実際の購入もサポートする現役の不動産エージェントでもある。業界歴は15年以上。多くの人から受ける相談内容と不動産業界の現状にギャップを感じ、住宅購入に必要なサービスと優良な不動産エージェントのネットワークを構築したプラットフォーム「HOUSECLOUVER」を企画運営している。自身が情報を発信しているYoutubeやブログは多くの住宅購入者にとって欠かせないバイブルとなっている。
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中古マンションの建て替えにおける現状
国土交通省が発表した「マンション政策の現状と課題」によると、平成30年末時点で全国のマンションストック数は約654.7万戸であるなかで、平成31年4月時点で実際にマンションの建替えが行われた実績は累計で244件、約19,200戸(全体の約0.29%)に留まっています。
建て替えが進まない主な原因は、以下のとおりです。
- 建て替え決議4/5の合意形成が難しいから
- 住民の高齢化による資金確保が困難なケースが多いから
まずは、建て替え自体に反対する住民が多く、建て替え決議に必要な4/5以上の合意形成が難しいという事情があります。
マンションの建て替えは、築40年〜50年程度経過すると検討されはじめます。
しかし、築年数が経過したマンションでは高齢の住民が大部分を占めるため、体力的に引っ越しが困難な人やそもそも終の棲家と考え動きたくないと考える人が多くいます。
また、築年数が経過したマンションでは、空き家率の増加も合意形成を難しくする要因の一つです。
例えば住民の死亡により相続となっても、相続人が居住しないケースや相続登記を行わずに所有者不明となることで、決議を取ることに時間がかかることがあります。
さらに、高齢者ほど建て替えに掛かる多額の資金確保が困難なことも多いようです。
なぜなら、高齢住民の多くが年金生活をしているためです。
他にも、既存不適格物件となり同規模の建て替えが難しいケースや、建て替えには専門的な知識や複雑な部分が多く、住民に資金以外の負担が重くのしかかります。
このように、現状マンションの建て替えは多方面でハードルが高く、建て替え自体が極めて進みづらい状況となっています。
マンションは建てられた時期によって寿命が変わる
マンションは、建てられた時期によって寿命が変わります。
その理由は、マンションの建築技術は年々向上しており、基本的に築年数が新しいマンションほど、耐震性や耐久性に優れた構造や材料を使用しているからです。
例えば、1981年(昭和56年)6月1日以降の建物は、震度6強~7を想定した新耐震基準で設計されていますが、1981年6月以前の旧耐震基準のマンションでは震度5強程度の揺れを想定して設計されています。
これにより、建てられた年代で耐震性に対する基準が異なっていることがわかります。
耐震基準はマンションの寿命に関わるコンクリートの厚みに影響しています。
旧耐震基準と新耐震基準のマンションでは、そもそも想定される寿命は変わります。
このようにマンションは築年数が新しいほど、耐震性や建築技術の向上、給排水管など設備機器の更新性の向上が進んでおり、今後マンション寿命はさらに伸びると予想できます。
houseclouver.jphttps://houseclouver.jp/manshion-nannensumeru/
マンション寿命の決定要因①:物理的耐用年数
マンション寿命の決定要因の一つに、物理的耐用年数があります。
物理的耐用年数とは、建物を構成する建築資材や構造躯体などが物理的に壊れてしまう年数のことを言います。
例えば、鉄筋コンクリート造りのマンションの場合、鉄筋コンクリート自体は100年程度持つと言われており、物理的耐用年数に該当します。
マンション寿命の決定要因②:経済的耐用年数
マンションの寿命を決めるもう一つの決定要因に、経済的耐用年数があります。
経済的耐用年数とは、「マンション」としての価値を失うまでの年数のことです。
つまり、コンクリート自体の耐用年数に問題がなくても、耐震基準やマンション全体の設備、バリアフリー性など、社会的なニーズに合っているかで耐用年数が決まります。
このような、マンションとしての価値がなくなることが経済的耐用年数です。
法定耐用年数はマンション寿命には関係がない
法定耐用年数は、マンション寿命には関係ありません。
なぜなら、法定耐用年数は固定資産を減価償却するときに用いる、単なる指標に過ぎないからです。
減価償却とは、資産ごとの耐用年数に応じて取得価額を分割し、複数年に渡り損失計上していく会計上の処理方法になります。
例えば、鉄筋コンクリート造りの建物(マンション)の法定耐用年数は47年ですが、あくまで減価償却できる期間が最大47年間であるということです。
よって、マンションの寿命は、必ずしも47年ではありません。
中古マンションの建て替えが検討されるのは築何年から?
中古マンションの建て替えが検討されるのは、築40年を超えた時期からになります。
その理由は、「マンション建て替え円滑化法による建て替え事例」の一覧を見ると、マンションの建て替え組合が設立された時期は、概ね築40年を超えたマンションとなっているからです。
築40年超となれば、部屋の内装や設備機器の劣化以外にも、外壁のひび割れや塗装の劣化、共用廊下のシートの剥がれや配管の水漏れなど、あらゆる箇所で故障や不具合が生じます。
また、ひとつずつ全て修理すると時間と手間、多額の費用がかかりやすくなるでしょう。
よって、築40年超を迎えたマンションでは、建て替えの検討に入るケースが多くなります。
ただし先述もしまたが、現在の築40年超えのマンションは旧耐震基準であり、そもそもの想定寿命が短いこともあり、新耐震基準のマンションでは建て替えの検討が遅くなることも考えられます。
中古マンションにおける、建て替え以外の選択肢
建物の老朽化が進んだマンションには、建て替え以外にどのような選択肢があるのでしょうか?以下にご紹介していきましょう。
大規模修繕(一棟リノベーション)
大規模修繕(1棟リノベーション)する方法があります。
大規模修繕とは、経年劣化した建物の躯体や外壁、配管や共用部分の改修を行うことです。
この方法のメリットは、居住しながら工事ができることや建て替えより費用負担が少ないことになります。
建物の耐震性や強度などの部分で問題がなければ、大規模修繕は効果的な方法です。
敷地売却
敷地売却をする方法もあります。
敷地売却とは、建物を取り壊し更地の土地を第三者に売却することです。
敷地売却では、区分所有者全員の同意が必要であり、第三者に売却して得た金銭は仲介手数料など売却でかかった経費を差し引き、その後持ち分割合に応じて区分所有者で分配します。
つまり敷地売却とは、建て替えによりマンションを継続するのではなく、区分所有者全員で土地を手放します。
空き家が多く今後も居住者の増加が見込めなければ、選択肢の一つとして考慮して良い方法です。
中古マンションの建て替えの流れ
本章では、中古マンションの建て替えの流れについて解説していきます。
ステップ①:検討段階
検討段階では、老朽化が進んだマンションの今後の在り方などについて議論します。
建て替え以外にも、大規模修繕や敷地売却等も検討されるケースがあります。
それぞれの方法によるメリットやデメリット、費用面や工事期間などがシミュレーションされ、どの方法が最善策であるのかなどを検討していきます。
ステップ②:計画段階
計画段階では、マンション再生に関する具体的な方法を決めるために、住民の決議を取っていきます。
再生方法が建て替えになれば、建て替え推進決議を実施していくなど、建て替えに向けた計画を立てます。
また、事業協力者の選定も同時に行なっていきます。
ステップ③:実施段階
実施段階では、建て替えに向けての建物計画、工事スケジュール、建て替え費用と負担金額などの案を住民に提示していき、議論を深めていきます。
最終的に5分の4以上の合意形成が取れるように、意見をまとめます。
ステップ④:工事施工
工事施工では、全住民がマンションからの退去を行い、解体工事等に着手できる状態を整えていきます。
工事の手法や進捗については、事情協力者とゼネコンの責任者に常に確認を取りながら進めていきましょう。
マンションの規模感にもよりますが、解体から建物完成、入居までは年単位の時間が掛かります。
仮住まい先は、今までの生活リズムを確保するために、なるべく近所に構えましょう。
そのためには、早めに物件探しに着手しておきます。
より詳しい建て替えの解説については以下の記事もご参照ください。
houseclouver.jphttps://houseclouver.jp/manshion-tatekae/
中古マンションの建て替え狙いは、どのステージかを見極めること
中古マンションの建て替え狙いをするときには、実際の建て替え決議がどの程度まで進んでいるかを確認します。
例えば、建て替え議論の真っ最中であれば、建て替えが直ぐに実施されることはなく、年単位の時間がかかると思われます。
また、話し合いがまとまらずに計画自体が頓挫するおそれもあるでしょう。
一方で、建て替えの決議がまとまり、工事に向けての準備段階であれば、建て替えが実施される可能性が極めて高くなります。
よって、建て替えの議論がどこまで進んでいるかについて、売買契約前に不動産エージェント(仲介業者の担当者)を通じて確認しておきましょう。
建て替えが上手く行きやすい中古マンションの特徴
建て替えが上手くいきやすい中古マンションの特徴は、以下のとおりです。
- 建ぺい率や容積率が余っているマンション
- 建物維持管理の意識が高い住民が多いマンション
- 空き家が少ないマンション
建て替えが上手くいくには、住民同士の協力は不可欠です。
よって、住民の建て替えに対する意識や日頃の建物維持管理に対する意識が高いことで、円滑に進みやすくなります。
他にも、空き家が少ないマンションは、住民の合意形成がしやすいので建て替えが上手くいく可能性が高まります。
また、建て替えで最も高いハードルとなるのがお金の問題です。
しかし、建蔽率や容積率に余裕があるマンションは、戸数を増やすことで、新しく作った部屋を販売することで、建て替え費用の一部を捻出できるケースがあります。
よって、このようなマンションは建て替えが進めやすく、更に立地が良いほど費用捻出はしやすい状況になるでしょう。
建て替え狙いの注意点
本章では、建て替え前の中古マンションを狙うときに注意したい点について解説します。
建て替え費用(負担金)が発生する
中古マンションの建て替えが決まれば、建て替え費用が発生します。
一般的には、マンションの持分割合に応じて建て替え費用を負担していきます。
例えば、総戸数20世帯のマンションで、仮に全体の1/20の持分を持っている場合、建て替え費用が10億円であれば、5,000万円を建て替え時に負担します。
また近年では、建て替えで戸数を増やせたマンションでも、工事費用等によって1500〜2000万円を戸別に負担した事例もあります。
このように、建て替えが決まれば多額の費用負担が生じてしまいます。
建築中の仮住まいが発生する
中古マンションの建て替えが決まれば、建築中の仮住まいが発生します。
なぜなら、既存のマンションを取り壊し、新たな建物を建設する必要があるからです。
例えば、仮住まい先への引っ越しから建物の解体、新たな建物を建築して入居するまでには、年単位の期間が掛かります。
よって、仮住まい期間中には多額の賃料負担も発生します。
希望の部屋が割り当てられないことも
建て替え後に、希望の部屋が割り当てられないこともあります。
なぜなら住戸選定の段階で、人気の間取りに入居希望が集中してしまうケースがあるからです。
建て替え後の新しいマンションへの入居は、全住民に対して公平な方法で行われますが、希望が重なった住戸は、原則抽選で入居者を決めていきます。
このように、建て替え後の入居では希望通りの部屋に入居ができないリスクがあり、現居よりロケーション等が劣るケースも十分に考えられます。
計画の長期化や頓挫することも
マンションの建て替えは、計画が長期化することや計画自体が頓挫するおそれがあります。
前章で紹介したとおりにマンションの建て替えは、区分所有者の合意が取りづらいことや住民の高齢化による資金確保が難しいからです。
これにより、建て替え自体の話し合いが進まずに長期化することがあります。また、資金確保ができずに頓挫するケースも珍しくないでしょう。
つまり、マンションの建て替え自体のハードルが高いことで建て替え自体が進まずに、築年数の古いマンションを所有し続けるリスクだけが残ることも十分に考えられます。
中古マンションで建て替え狙いをする際の注意点
本章では、建て替え前の中古マンションを検討する際の注意点をご紹介します。
建て替えの議論がどこまで進んでいるか
建て替えの議論が進んでいる中古マンションであれば、どこまで進んでいるかを確認しましょう。
建て替え議論の進捗次第で建て替えが行われる実際の時期やそもそも建て替えが行われるか否かを判断できるからです。
建て替え議論の進捗状況については、売買契約前に仲介会社を通じて管理会社に確認しておきましょう。
建て替えが頓挫することも想定する
マンションの建て替えは、頓挫することも想定することです。
前章でお伝えしたとおりにマンションの建て替えは、住民の合意形成や資金確保が難しいケースが多いからになります。
よって、建て替え自体が頓挫する可能性も含めて物件を検討しなければなりません。
負担金の発生も含めた資金計画を
中古マンションの建て替え狙いをするときには、負担金の発生を含めた資金計画を組みます。
なぜなら、建て替え時にかかる多額の負担金を支出できなければ、マンションを所有し続けることができず、建て替え前のマンションを購入する意味がないからです。
例えば、建て替え狙いをするなら物件にもよりますが数千万円程度を用意しておく必要があるでしょう。
よって、負担金が発生することを想定した資金計画を組めることが、中古マンションの建て替え狙いをする条件となります。
管理組合の状況を調査・把握ができる担当者選び
中古マンションの建て替え狙いをするときには、管理組合の状況を調査、若しくは把握ができる担当者選びが重要となります。
なぜなら、建て替えの進捗状況は、仲介業者の担当者を通じて管理組合に確認する方法となるからです。
ある程度マンションの管理に詳しい担当者であれば、進捗状況や話し合いの内容から建て替えの状況を正しく判断できるようになります。
一方で売ることばかり考えている担当者に当たると、聞き心地の良いセールストークばかりでデメリットやリスクを正しく伝えられることなく購入してしまうことがあるかもしれません。
どんな状況であれ、不動産は担当者の良し悪しによって結果が大きく変わります。
ハウスクローバーでは全国の優良な担当者が探せるサイトです。
このようなサービスを活用して担当者を探すと良いでしょう。
中古マンションの建て替え狙いはメリット・デメリットを理解してから
本記事では、中古マンションの建て替え狙いについて解説してきました。
中古マンションの建て替え狙いには、多額の負担金の捻出やそもそも計画自体が頓挫するリスク等があるため、建て替え決議の進捗などの状況を見ながら、検討には慎重な判断が必要です。
また、建て替え前のマンションを狙うメリットやデメリットについても十分理解しておきましょう。
なお、建て替え後の資産性アップを狙うなら、立地が良い中古マンションを選ぶのがおすすめです。
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ハウスクローバー株式会社の創業者兼CEO。また同時に、毎年全国から2〜300組ほどの住宅購入希望者の相談があり、実際の購入もサポートする現役の不動産エージェントでもある。業界歴は15年以上。多くの人から受ける相談内容と不動産業界の現状にギャップを感じ、住宅購入に必要なサービスと優良な不動産エージェントのネットワークを構築したプラットフォーム「HOUSECLOUVER」を企画運営している。自身が情報を発信しているYoutubeやブログは多くの住宅購入者にとって欠かせないバイブルとなっている。
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