以前は分譲マンションといえば家族向けの広いマンションが主流でしたが、ここ最近はコンパクトマンションと呼ばれるタイプの物件が増えていることをご存知でしょうか。
コンパクトマンションとは床面積が50㎡以下のマンションのことで、都市部を中心にじわじわと増えているのです。
なぜ今コンパクトマンションが増えているのか、そしてコンパクトマンションの魅力や住むのに適した方、購入前にチェックするべき注意点などをご紹介します。
宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー
ハウスクローバー株式会社の創業者兼CEO。また同時に、毎年全国から2〜300組ほどの住宅購入希望者の相談があり、実際の購入もサポートする現役の不動産エージェントでもある。業界歴は15年以上。多くの人から受ける相談内容と不動産業界の現状にギャップを感じ、住宅購入に必要なサービスと優良な不動産エージェントのネットワークを構築したプラットフォーム「HOUSECLOUVER」を企画運営している。自身が情報を発信しているYoutubeやブログは多くの住宅購入者にとって欠かせないバイブルとなっている。
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コンパクトマンションが増えた背景
コンパクトマンションが増えた背景には、人口の減少と世帯数の割合の変化が挙げられます。
総務省では5年に1度の頻度で全国の人口について調べる国勢調査を行っていますが、2015年(平成27年)に行った際は、1920年(大正9年)に調査を開始してから初めて日本の人口が減少に転じ、大きな話題となりました。
それ以前の日本の人口は、バブル経済が崩壊して以降ほぼ横ばい状態が続いており、いずれは減少に転じるだろうと予測されていました。
しかし2015年の調査結果は、国や専門家の予測より早い段階で減少に転じたことが明らかとなり、当時は驚いた方も多かったと思います。
また2015年の国勢調査では、人口減少と同時に初めて65歳以上の人口が日本の総人口に対して4人に1人の割合となったことや、75歳以上の人口が15歳未満の人口を上回るなどの結果も明らかとなりました。
※参照元:総務省統計局 平成27年国勢調査(人口等基本集計)結果の公表 ―「初の人口減少」確定に当たって―
こうした人口減少や少子高齢化の加速は、世帯数の割合にも大きな影響を及ぼしています。
現に日本の世帯数(単身世帯・夫婦のみ・夫婦と子ども世帯・ひとり親と子ども世帯の総数)自体は、2020年(令和2年)まではわずかに上昇するものの、それ以降は減少に転じると予測されています。
ただしこれを世帯の分類別で見てみると、単身世帯およびひとり親と子ども世帯は2030年(令和12年)まで、夫婦のみの世帯は2025年(令和7年)まで数が増加するとの予測も出ています。
一方で夫婦と子どもからなる世帯、いわゆるファミリー世帯の数は既に減少に転じており、その差はどんどん広がるばかりです。
※参照元:国立社会保障・人口問題研究所 『日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)』(2019年推計)
こうした人口と世帯の割合の変化に伴い、これまでのようなファミリー世帯をターゲットにした広さや間取りのマンションではなく、少人数世帯の暮らしに合うコンパクトマンションが増えているのです。
コンパクトマンションはこんな方におススメ
時代の変化に合わせた新しいマンションスタイルであるコンパクトマンションは、ファミリー向けの物件ほど面積が広くありません。
そのため住むのであれば、独身の方や子どもを作らない夫婦(DINKS)、子どもが独立して再び夫婦2人きりになったシニアなど、家族の人数が少ない世帯がおススメです。
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コンパクトマンションの魅力とメリット
続いて、コンパクトマンションの魅力やメリットについてご紹介します。
駅近の利便性が良いところに手ごろな価格で
コンパクトマンションはファミリータイプのマンションと違い、建てる際に広い敷地を必要としません。
そのため用地が限られている駅近の土地でも建てやすく、交通利便性がいいエリアで暮らすことができます。
駅周辺にはスーパー・コンビニ・商店街など暮らしに欠かせない施設も集中しているため、交通アクセスだけでなく生活利便性もいい点が魅力です。
また1戸あたりの面積が小さい分、物件価格も手ごろな価格で販売されていることが多いので、予算内で不便のない暮らしを送れるマンション購入を実現しやすいこともコンパクトマンションのメリットといえるでしょう。
独身にちょうどいい広さの間取り
独身の方がマンションを購入する場合、よほどのことがない限り3LDKや4LDKの間取りは広すぎて、せっかく買っても持て余してしまう部屋があるかもしれません。
しかしコンパクトマンションは少人数で住むことを想定して造られているため、間取りも1DK~2LDKのタイプが多くなっています。
1DKや1LDKは、食事をしたりくつろいだりする空間と寝室を分けられたらOKという方におススメです。
自宅で仕事をすることが多く書斎が必要な方や、寝室とは別に趣味の部屋やお客様が泊まる時用の部屋がほしいという方であれば、2DKや2LDKがちょうど良いでしょう。
戸数が多くなる分、共用部などが充実しやすい
マンションに住む場合、エレベーターや宅配ボックス・ロビーなどの共用部分にかかるコストは、戸数全体から徴収する管理費が使われます。
マンション内の戸数が多いほど徴収される管理費も増えるため、共用部の維持管理がしやすく充実しやすいメリットが生まれます。
そのため同じ敷地面積に建つマンションでも、ファミリータイプより戸数が多くなるコンパクトマンションは、共用部が充実していて住み心地がより高まりやすくなるのです。
コンパクトマンションのデメリットと注意点
嬉しい魅力やメリットがあるコンパクトマンションですが、その反面で以下のような点に注意しなければいけません。
住宅ローン減税が使えない物件が多い
実はコンパクトマンションによっては、住宅ローン減税が使えないケースが多いのです。
なぜなら住宅ローン減税の適用要件の一つに、「新築又は取得をした住宅の床面積が50㎡以上であり、床面積の2分の1以上の部分が専ら自己の居住の用に供するものであること」との決まりがあります。
※2023年までの新築住宅では、床面積が40平米以上という緩和要件が適用されています。また要件緩和の年収条件として年収1000万円以下となっています。
そしてこの床面積とは、登記簿謄本に記録されている面積が対象です。
マンションの床面積は、壁芯(へきしん)面積と内法(うちのり)面積の2種類の表し方があるのですが、登記簿に記録されているのは内法面積です。
壁芯面積は柱と壁の中心線より内側の面積を指すのに対し、内法面積は柱と壁の内側のみで計測した面積を指すため、両者の面積は同じではありません。
そのため、壁芯面積では50㎡を超えていても内法面積では50㎡未満となるコンパクトマンションは、住宅ローン減税の対象外となるのでご注意ください。
投資目的も多く、良好な管理に悪影響があることも
コンパクトマンションを購入する方は、自分が住むためではなく投資目的で買う方も多いです。
不動産投資家がコンパクトマンションをターゲットにする理由は、投資物件が住宅ローン減税の対象外であることと、費用対効果が比較的高いことが挙げられます。
※住宅ローン減税は、購入した本人がその物件に住むことを大前提としているため、自分で住まない投資目的でのマンション購入は減税適用外となる。
そしてマンションの住み心地や資産価値を維持するために欠かせないのが、適切な管理組合の運営や修繕積立金の徴収です。
管理組合がうまく機能せず、修繕積立金の金額も不適切で将来値上げせざるを得ないようなマンションは、住み心地も資産価値も下がるばかりです。
しかしコンパクトマンションを所有する投資家にとって、適切な管理組合の運営が行われているか、修繕積立金の金額が適正かどうかはあまり関心がありません。
そのため不動産投資家が多いコンパクトマンションは、本来あるべき良好なマンション管理が行われず、住み心地や資産価値に悪影響を及ぼす可能性があるのです。
コンパクトマンションは将来売れない?
現代の世帯構成の変化に合わせたコンパクトマンションですが、もし将来売ることになったら本当に売れるかどうか気になる方もいるでしょう。
コンパクトマンションを探す際は、以下の点を気にして選ぶと将来売る時も買い手が見つかる可能性があります。
ゆとりのある間取りの方が、売れやすい
「コンパクトマンションには独身の方にちょうどいい間取りの物件が多い」と述べましたが、コンパクトマンションに暮らすのは独身の方だけではありません。
子どもを作らないと選択した夫婦(DINKS)や、ファミリー向けの戸建てやマンションでは広すぎるシニア世帯も、コンパクトマンションのターゲットに適しています。
そのためコンパクトマンションを買う際は、独身の方だけでなくDINKS世帯やシニア世帯が暮らしやすいようなゆとりのある間取りの物件を選ぶと、幅広い世帯の需要が見込めて売れやすいです。
場所がよくても管理に問題があれば価値は落ちる
いくら駅近で立地がいいコンパクトマンションでも、管理が不十分であれば住み心地が悪く資産価値が下落します。
資産価値が落ちたコンパクトマンションは、いざ売ろうとしてもそれなりの値段しかつかず、希望価格で売れずに苦労するでしょう。
「マンションは管理を見て買え」という格言があるほど、管理状態の良し悪しはマンションの資産価値に直結する重要なポイントです。
新築よりも中古の方が価格の下落が小さい
コンパクトマンションを選ぶ時、「せっかく住むならきれいな新築がいい。その方が売る時も結構高値で売れるかも」と考える方もいるかもしれません。
しかし新築マンションは、本来の物件の価値に宣伝広告費や人件費などの諸経費が上乗せされています。
この上乗せ分は新築マンションを販売する不動産会社の利益になるもので、一度購入して中古で売り出す際は上乗せされません。
たとえば3,500万円のコンパクトマンションを新築で買っても、あなたが売り出す時には高くても2,800万円くらいでしか売れず、700万円もの損失が発生します。
これを新築プレミアムといい、新築物件価格のおよそ2割が相当します。
一方、中古のコンパクトマンションの販売価格は物件本来の価値を反映したものなので、いざ売る時も新築プレミアムによる価格の値下がり幅はさほど大きくありません。
メリット・デメリットや地域性などを判断しながら検討しよう
人口減少や時代の流れに伴う世帯構成の変化に対応できるコンパクトマンション。
安易に購入を決めるのではなく、頼れる不動産エージェントに相談しながらメリット・デメリットや住みたい街の地域性などを考慮したうえで、購入するかどうかを判断しましょう。
宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー
ハウスクローバー株式会社の創業者兼CEO。また同時に、毎年全国から2〜300組ほどの住宅購入希望者の相談があり、実際の購入もサポートする現役の不動産エージェントでもある。業界歴は15年以上。多くの人から受ける相談内容と不動産業界の現状にギャップを感じ、住宅購入に必要なサービスと優良な不動産エージェントのネットワークを構築したプラットフォーム「HOUSECLOUVER」を企画運営している。自身が情報を発信しているYoutubeやブログは多くの住宅購入者にとって欠かせないバイブルとなっている。
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