「住宅ローン減税」という言葉、何となく聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。住宅ローン控除は住宅ローンを利用して住宅を購入する場合に、10年間(2019年10月より一部13年間)にわたって所得税や住民税から控除が受けられるという制度です。
この制度を中古マンション購入の際に使うためにはいくつか気を付けなければいけないポイントがあります。このポイントを見逃してしまうと受けられるはずだった住宅ローン減税が受けられず、結果的に大きな損をしてしまう可能性もあります。そうならないために注意する点をこれからお伝えしていきます。
※この内容は2021年12月31日までの内容です。2022年1月1日以降の住宅ローン減税の内容についてはこちらの記事を参照ください。
→ 「2022年、住宅ローン減税が大きく変更に。新築・中古の条件を解説」
宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー
ハウスクローバー株式会社の創業者兼CEO。また同時に、毎年全国から2〜300組ほどの住宅購入希望者の相談があり、実際の購入もサポートする現役の不動産エージェントでもある。業界歴は15年以上。多くの人から受ける相談内容と不動産業界の現状にギャップを感じ、住宅購入に必要なサービスと優良な不動産エージェントのネットワークを構築したプラットフォーム「HOUSECLOUVER」を企画運営している。自身が情報を発信しているYoutubeやブログは多くの住宅購入者にとって欠かせないバイブルとなっている。
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中古マンションの購入でも使える住宅ローン減税
新築だけじゃないの?中古でも使えるの?そういった質問を受けることも多いですが、結論からいうと中古マンションでも条件が合えば使うことができます。ではどのような条件が必要で、どのようなポイントに気を付ければいいのかをみていきましょう。
また中古マンションにおける住宅ローン減税は増税前と後で変わりますので、比較表も掲載しておきます。また消費増税によって変わるのは、売主が不動産会社となっている物件のみで、個人が売主となる中古マンションには消費税がかからないため、従来通りになります。
消費税増税前と増税後の住宅ローン減税の比較
居住の用に供した | 適用される消費税率 | 年末時点での住宅ローン残債額限度 | 最初の10年間の住宅ローン減税 | 11年目から13年目までの住宅ローン減税 |
2019年9月30日以前 | 8% | 4,000万円(認定住宅等5,000万円) 非課税の住宅(売主個人)は2,000万円 | 1% | 11年目以降の住宅ローン減税は無 |
2019年10月1日~2020年12月31日* | 10% | 1% | 「住宅ローンの年末残高×1%」か「建物価格×2%÷3」の低い方 |
中古マンションで適用されるための要件
中古マンションで適用されるためにはどのような要件が必須となるのでしょうか。もちろん全ての中古マンションで適用が認められるわけではなく、適用外となってしまう物件もあります。まずは住宅ローン控除の条件を確認してみましょう。
所得や住宅ローンに関する条件
所得が年間3000万円以下であること、そして住宅ローンの返済期間が10年以上のものであることが条件になります。さらに居住を開始した年の前後二年の間に3000万円特別控除などの特例を受けていないことも条件です。
物件に関する条件
登記簿面積が50平米以上の住宅であること、そして耐震性能があることが条件になります。さらにマンション取得後6か月以内に入居し、その年の12月31日まで住み続けていることが必要となります。
ここで一番のポイントが「耐震性能がある」という条件です。これを証明するためには築25年以内のマンションであること、もしくは耐震基準適合証明書の発行、既存住宅売買瑕疵保険への加入により耐震基準を満たしていることを示す必要があります。
築25年以内であれば無条件で適用されますが、25年を超える場合に耐震基準適合証明書の発行、既存住宅売買瑕疵保険への加入により耐震基準を満たしていると証明することが必須条件です。
それではその「耐震基準適合証明書」と「既存住宅売買瑕疵保険」が一体どういうもので、どうしたら基準を満たすことができるのかをご説明していきます。
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耐震基準適合証明書
住宅ローン減税においてなぜこの証明書が重要なのか、そしてどのように発行するのかをこちらでお話していきます。
そもそも耐震基準適合証明書とは何なのかというと、こちらは建築士が建物の耐震性が現在の建築基準法に適合していることを証明した書類になります。つまり住宅ローン減税の条件となる「耐震性能がある」という条件を証明する書類となるわけです。
どのように発行するのか
建築士事務所に所属する建築士や指定確認検査機関等に連絡をし、現地調査や書類の作成、申請を依頼することになります。
費用はどのくらいかかるのか
診断費用は依頼する建築事務所によって変わりますが、10万円~15万円程度が相場となっています。一枚につきいくらという計算をするところもあります。ちなみに耐震基準適合証明書は原本を提出する必要がります。
また必要な枚数は人によって変わりますが、通常であれば住宅ローン控除分と、登録免許税の減税分の2枚です。もし親からの贈与があり、住宅購入時の非課税枠を使うのであれば税務申告用にも必要になります。それぞれの状況に合わせて必要枚数を申告するようにしましょう。
※住宅ローン減税の物件要件で必要になる書類は、住宅購入時の贈与税非課税枠の適用にも必要になります。
いつ手続きをすればいいのか
原則として売買物件の引き渡しまでに家屋調査が完了している必要があります。調査から発行するのに大体1週間程度かかりますので、引き渡しまで2~3週間ほど余裕をもって手続きを進めるのがいいでしょう。
発行されるために必要なもの
中古マンションであれば無条件に発行できるわけではなく、新耐震基準(1981年6月以降に建築確認を受けた建物)以降の中古マンションで、かつ「検査済証」が発行された中古マンション、もしくは現行の耐震基準にまで耐震改修工事がされていて、その公的な証明書が取得できる中古マンションに限られます。
注意点
基本的には引き渡しを受ける前、つまりまだ所有権が売主側にある時期に申請をして手続きを進めなければなりません。そのため売主の立ち合いや、申請者の名前を売主の名義で書類を作成したりと売主の協力が必要となってきます。不動産エージェント等を通すことで、よりスムーズに手続きを進めることができるでしょう。
関連記事:「中古マンション購入の流れと、やってはいけない間違えを、現役のプロが伝授します」
既存住宅売買瑕疵保険
聞きなれない言葉かもしれませんが、こちらも住宅ローン減税を受けるうえでとても重要になってきます。この保険が一体何なのか、詳しく解説していきます。
既存住宅売買瑕疵保険とは物件の引き渡し後、構造体力上主要な部分、外壁や屋根等の雨水を防止する部分において不具合があった場合に、その補償が売主ではなく、保険から支払われるというものです。
売主が個人であることが多い中古住宅売買において、その取引に安心を付与する制度で、中古住宅流通の活性化の期待を受けている制度ですが、保険加入にあたっての事前検査が必要となりますが、加入要件が厳しくそこまで普及が進んでいません。
売主が不動産事業者の場合、すでにこちらの保険に加入しているケースもありますが、個人の売主の場合は加入していないケースが多いです。また住宅ローン減税は「耐震基準適合証明書」があれば適用されますが、「住まいの給付金」についてはこの既存住宅瑕疵保険証が必要になります。
ご自身で調べるのは難しい部分なので、不動産エージェントを通して事前に確認してもらうのが確実な方法です。
不動産業者でもやりがちな間違え
住宅ローン減税は、住宅取得時における制度の中でも、もらえる金額多くインパクトの大きい制度です。また住宅ローン減税だけでなく、登録免許税の減税や、時には住宅購入時の贈与税の非課税枠も絡んでくるので、これらの取得に関する実務が非常に重要であることがお分かりいただけると思います。
だったらそのあたりのことは、「不動産業者に任せておけば安心」というわけでもありません。不動産のプロといわれる不動産業者の中でも、昨今の複雑化する制度の中で、これらの知識を持ち合わせていない業者も多く、実際トラブルが多く発生しています。
ここから、よくプロの業者でも勘違をしているケースを紹介します。ちなみに紹介するのは、筆者が実際の業務で何度も経験しています。しかも誰もが知るような大手不動産会社の営業担当者からも聞かれるから驚きです。
関連記事「これからは不動産エージェントを選ぶ時代」も合わせてご参照ください。
1981年6月以降の新耐震基準であれば使える?
「新耐震基準であれば耐震性を満たしているので、全てローン減税の対象となります。」と本気で思っている業者が多数います。新耐震基準とは1981年6月の建築基準法改正後に建築確認を受けた中古マンションのことを指しますが、それだけでは適用条件を満たしません。
先述したように、中古マンションであれば建築後25年を超えていれば、「耐震基準適合証明書」と「既存住宅瑕疵保険」が必要になるのですが、この「耐震基準適合」という言葉で単純に新耐震基準であれば大丈夫だと勘違いしている業者が多くいるのです。
マンションの場合、なかなか所有者の合意形成や費用の問題もあり耐震改修工事や耐震診断をすることは出来ないのが現状です。築25年を超える物件で現行の耐震基準を満たしていると証明するために必要なのが「検査済証」です。これは両方の書類に必要になります。
そもそも検査済証とは「建築申請通りに建てられたことを証明する書類」のことで、取得は任意の書類です。しかも完成したタイミングでしか検査を行えないようになっており、後から発行することや、紛失したからといって再発行することができない書類です。
なぜ検査済証が必要になるのかといえば、建築確認の段階では耐震基準を満たす計画であったとしても、実際建築されたものは計画と違っているということがあったからです。検査済証がないと、建築申請どおりに建てられた証明ができないため、どうしても必要になるのです。
その他にも、上記でご説明したように、物件だけの要件だけ満たしていればいいというわけではないからです。例えば所得が3000万円を超えている方や、購入後も長期間入居しない方、特別控除を直近で受けられた方、そういった場合は減税の対象にはなりません。
フラット35の適合証明書と勘違い
似たような証明書にフラット35の「適合証明書」という書類があります。これは住宅金融支援機構のフラット35を利用する際に取得が必要となる証明書です。こちらも同様に建物の耐震性や安全性等を検査し、証明する書類ではありますが、耐震基準適合証明書とは別ものです。
住宅ローン減税の書類として「適合証明書」で代用することはできませんし、「適合証明書」が取得できた物件だからといって「耐震基準適合証明書」が発行できる物件とはなりません。簡単にいうと「適合証明書」の方が取得は簡単です。あくまでも住宅金融支援機構の基準に合致していれば取得が可能です。
しかし不動産業者の中にもこの二つを混同しているケースがあり、結果的に住宅ローン減税を申込できなかったというケースもあります。不動産業者に任せておけば絶対に安心というわけでもないのです。
建物面積が50㎡以上あれば大丈夫?
他にも、物件の床面積が50平米以上必要という部分で勘違いをしているケースも散見されます。というのもマンション販売のチラシに記載している面積と、住宅ローン減税の対象となる登記簿面積とは違っていることがほとんどだからです。
マンションの部屋の面積は壁の中心から計測する建築基準法による「壁芯面積」と壁の内側から計測する不動産登記簿法による「内法面積」があり、登記簿面積は後者の内法面積が使われています。
そのため販売チラシでは壁芯面積上で50平米を超えていたとしても、実際の内法面積では50平米を下回っているケースもありますので注意が必要です。
失敗すると取り返しがつかない
もし何か見落としてしまった場合、購入したあとでも手続きすれば何とかなるのではないかと考え、お問い合わせをいただくこともあります。しかし、この手続きに関してはやり直しがききません。物件引き渡し後に気づいたとしてももう引き返すことはできず、泣き寝入りするしかないのが現状です。
物件そのものが対象とならなかったケースや、耐震基準適合証明書の手続きが間に合わなかった、間違えた説明をされたなど、様々なトラブルにより減税を受けられない事例が後を絶ちません。
住宅ローン減税は10年間にわたって毎年ローン残高の1%の控除を受けることができます。つまり10年間で数百万円の控除を受けることができます。たった一回の見落としや間違えで、本来得られるはずだった控除を逃してしまうのはほんとうに悔やまれることでしょう。
住宅ローン減税の条件と、住宅取得等資金贈与の非課税枠の条件は同じ
住宅取得等資金贈与の非課税枠とは何かというと、住宅の購入や新築・増改築等をするための資金を親や祖父母からもらう場合に一部非課税になる制度のことです。増税前と増税後で控除額が変わります。
住宅取得資金贈与
家屋の取得日に関する契約日 | 省エネ等住宅 | 一般住宅 | ||
消費税率10% | それ以外 | 消費税率10% | それ以外 | |
2016年1月1日~19年3月31日 | ー | 1,200万円 | ー | 700万円 |
~2020年3月31日 | 3,000万円 | 1,200万円 | 2,500万円 | 700万円 |
~2021年3月31日 | 1,500万円 | 1,000万円 | 1,000万円 | 500万円 |
~2021年12月31日 | 1,200万円 | 800万円 | 700万円 | 300万円 |
そしてこの制度を利用する際にも要件がいくつかあります。
- 贈与を受けた年の、子の合計所得が2000万円以下であること
- 贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上であること
- 住宅の床面積が50平米以上240平米以下であること等
そして中古住宅の場合、物件が以下のいずれかに該当することが条件となります。
- マンション等の耐火建築物は築25年以内、木造建築物等は築20年以内に建築されたもの
- 新耐震基準に適合していることについて証明されたもの
- 既存住宅売買瑕疵保険に加入している一定のもの
- 新耐震基準に適合しない物件であっても、取得の日までに耐震改修工事の申請等をし、かつ居住の日までに耐震修正工事を完了している等の要件を満たすもの
所得や居住に関する条件や、物件に関する条件、贈与の時期等の条件がありますが、その中の「中古住宅の場合」の条件が今回の住宅ローン減税の条件と同じとなっています。つまり住宅ローン減税を受けるという前提で物件探しをしていれば、自ずとこちらの非課税枠も使える物件でもあるということになります。
ただし上記以外にも細かな要件がありますので、もしご利用を考える場合はエージェントや税理士に相談し、確認するほうがいいでしょう。
中古マンション購入時の住宅ローン減税で失敗しないために
では住宅ローン減税で失敗しないためにはどうすればいいのでしょうか。それは、失敗しないためにはあらかじめ物件について念入りに調べ、減税を受けられる物件なのかどうかを見極める必要があります。
もちろん上記で説明した内容をチェックしていけばいいのですが、住宅購入の際は様々な手続きが発生し、見落としてしまうケースもあります。たった一度の見落としで、数百万円の損をしてしまうことになります。
また、不動産業者の中には要件を詳しく知っておらず、本来減税を受けられていたはずの物件なのに減税を受けられなかったというケースもあります。そうならないためにも、経験やスキルがあって信頼のできる不動産エージェントをあらかじめ探しておき、物件探しの場でプロの目で一緒に物件をチェックしてもらい、安全に手続きを進めていくことが何よりものポイントではないでしょうか。
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宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー
ハウスクローバー株式会社の創業者兼CEO。また同時に、毎年全国から2〜300組ほどの住宅購入希望者の相談があり、実際の購入もサポートする現役の不動産エージェントでもある。業界歴は15年以上。多くの人から受ける相談内容と不動産業界の現状にギャップを感じ、住宅購入に必要なサービスと優良な不動産エージェントのネットワークを構築したプラットフォーム「HOUSECLOUVER」を企画運営している。自身が情報を発信しているYoutubeやブログは多くの住宅購入者にとって欠かせないバイブルとなっている。
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