2022年、住宅ローン減税に大きな改正がありました。
長く続く低金利時代において、住宅ローンの金利よりも住宅ローンの控除率が高い状態が続いており、「逆ざや」状態となっていた状況が是正された格好になります。
これまでも住宅ローン減税においては、消費税増税のタイミングでの控除期間延長、面積要件の緩和など、ことあるごとに改正がされてきました。
そこでこの記事では、2022年に変更される内容と合わせて、現在の住宅ローン減税の内容について、体系的に解説していきます。
これから住宅購入をお考えの方は、ほとんどの方が関係してくる内容となりますので、ぜひ最後まで一読ください。
2022年以降、住宅ローン減税改正で何が変わった?
2022年の住宅ローン改正では、一般的に「改悪」と言われていることも多く、税金が戻ってくる金額が実際に減ります。
しかしその一方で、特に中古住宅では住宅ローン減税の適用要件が大きく緩和され、これまで対象とならなかった多くの中古住宅も対象となることになり、一概に「改悪」というものでもないのが、筆者の正直な感想です。
そこで、どんな変更点があったのか、細かくみていきたいと思います。
控除率の改定(一律1%→0.7%)
最も大きな改正点は、控除率の改定です。
これまで年末時点の住宅ローン残高に対して1%であったのが、0.7%に変更となりました。
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(引用:令和4年度 国土交通省税制改正概要 国土交通省)
この控除率は、新築・中古にかかわらず、共通した内容になります。
例えば、年末時点で2000万円の住宅ローンの残高があった場合、これまでであれば20万円戻ってきていたものが、14万円になります。
これが10年続きますので、見た目の数字以上に戻ってくる金額には大きな差が開きます。
これこそが「改悪」と言われる所以です。
※買取再販物件とは、不動産会社が中古物件を買い取って、リフォームなどをして再販をする物件のことを言います。
控除期間
控除期間は、売主が不動産会社である、新築住宅や買取再販物件については、一律13年。
それ以外の物件については一律10年となります。
しかし元々消費税増税対策として、2019年に住宅ローン減税の控除期間が3年延長されていたことを考えると、特に大きく変化はなかったという印象です。
ここで注意が必要なのが、新築住宅・買取再販物件であって、一定の水準を満たさない物件の扱いです。
2023年中に入居する物件はともかく、2024年と2025年に入居する物件については、住宅ローン控除が受けられなくなります。
新築住宅については、基本的に何らかの基準を満たしてくると思うので、住宅ローン減税が使えない物件はほぼなくなると予想されますが、中古住宅の買取再販物件は、現在の市場を見る限り、相当数の物件がここに該当していますので、注意が必要になります。
控除対象の上限額
住宅ローン減税では、対象となる控除額の上限が定められています。
これ以上の住宅ローン残高があったとしても、超えた分について適用がされません。
また中古住宅における認定住宅は、消費税課税物件(売主が不動産会社)が対象となり、個人が売主となる消費税非課税物件は、仮に認定住宅の適用を受けていたとしても「その他住宅」の扱いになります。
〜2021年 | 2022年・2023年 | 2024年・2025年 | ||
新築住宅 買取再販 |
認定住宅 | 5000万円 | 4500万円 | |
ZEH | 4000万円 | 4500万円 | 3500万円 | |
省エネ基準 | 4000万円 | 3000万円 | ||
その他住宅 | 3000万円 | 0万円(※1) | ||
中古住宅 | 認定住宅 | 3000万円(※2) | ||
その他住宅 | 2000万円 |
(※1)2023年までに新築の建築確認がされている場合は2000万円
(※2)2022年以降は、ZEH・省エネ基準を含む
その他注意すべき改正内容
今回の改正では、控除率以外にも様々な改正があります。
ここからはそんな改正内容をまとめていきます。
所得要件の引き下げ
これまでは、年収が3000万円が超える年は住宅ローン減税が適用できないとされてきましたが、2022年以降は2000万円以下に変更されました。
新築住宅・買取再販の床面積緩和要件
この改正は2019年に行われていますが、これは当面維持される形になっています。
この緩和要件では、それまで面積が50平米以上でないと住宅ローン減税は適用されませんでしたが、40平米以上に緩和されました。
注意点として、新築住宅、もしくは消費税がかかる(売主が不動産会社)中古住宅であること。
また面積が広告などに使用される建築基準法の面積でなく、不動産登記法の基準となる登記簿上の面積となることです。
建築基準法の面積は壁の中心から面積を測る壁心と呼ばれる面積で、登記簿上の面積よりも広くなります。
ですから登記簿上で40平米ギリギリの物件は対象外となる可能性もありますので必ず謄本の面積を確認しましょう。
またこの面積の緩和要件については2023年までに建築確認を受けた新築住宅であるとされています。
また年間の所得が40平米以上50平米以下の場合は、先述の所得要件よりさらに厳しい1000万円以下という要件もついています。
中古住宅の築年数要件
この変更が今回の改正では大きなポイントになるのではないでしょうか?
これまで中古住宅で住宅ローン減税の適用を受けるためには、中古マンションをはじめとするRC造や鉄骨造の場合は築25年、木造住宅の場合は築20年以内である必要がありました。
これらの築年数に当てはまらない場合は、現行の耐震基準に適合していることを証明する必要があり、実際適用できない物件もたくさんありました。
その築年数要件がなくなり、今回の改正では登記簿の建築年で昭和57年(1982年)1月1日以降の建築が確認できればOKとなりました。
これまで多くのトラブルも発生していた内容だけに非常に意義のある改正と言えます。
この改正により、これまでの制度であれば住宅ローン減税が利用できない物件の多くが利用できるようになると考えられます。
また同じく築年数要件があった登録免許税の税率軽減や、贈与税の非課税枠の利用についても住宅ローン減税と同じ条件が適用されます。
住宅取得資金の贈与税の非課税措置の延長
住宅ローン減税ではないものの、住宅取得資金に関わるものなので、合わせてご紹介します。
父母、祖父母などの直系尊属から、住宅取得などのための資金を贈与する場合、省エネ等などの優良な住宅では1000万円、その他の住宅については500万円が非課税となります。
こちらは2023年までの延長となります。
旧耐震物件についてはこれまで通り
一方で旧耐震住宅と呼ばれる住宅については、これまで通り基本は全ての税制優遇は不適用となります。
適用を受けるためには、現行の耐震基準を満たすことの証明(耐震基準適合証明書など)が必要になります。
かなり大きな改正がされた2022年の住宅ローン減税改正ですが、ここで解説したことをぜひ押さえておきましょう。
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宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー
ハウスクローバー株式会社の創業者兼CEO。また同時に、毎年全国から2〜300組ほどの住宅購入希望者の相談があり、実際の購入もサポートする現役の不動産エージェントでもある。業界歴は15年以上。多くの人から受ける相談内容と不動産業界の現状にギャップを感じ、住宅購入に必要なサービスと優良な不動産エージェントのネットワークを構築したプラットフォーム「HOUSECLOUVER」を企画運営している。自身が情報を発信しているYoutubeやブログは多くの住宅購入者にとって欠かせないバイブルとなっている。
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