この記事で分かること
- 売主から見た売買契約の流れ
- 手付金の受け取りと「手付解除」の仕組み
- 契約不適合責任という売主の重要な責任
- ローン特約が売主に与える影響
買主が決まり、いよいよ売買契約。売却のゴールが見えてくる瞬間です。
ただ、契約は売主にとっても法律行為であり、署名のあとに「そんな条件だったのか」と気づいても後戻りはできません。買主向けの契約解説は世の中に多くありますが、売主の視点で注意点を整理したものは意外と少ないものです。
私は業界17年のなかで、売主側の契約に数多く立ち会ってきました。この記事では、売主が契約前に押さえておくべきポイントを、実務の流れに沿ってお伝えします。
売買契約までの流れ
買主から購入申込書(買付証明書)が届いたら、価格・引き渡し時期・条件の調整が始まります。
条件がまとまったら、契約日を決めて売買契約を結びます。契約の場では、宅地建物取引士が買主へ重要事項説明をおこない、そのあと売買契約書に双方が署名します。売主は重要事項説明の対象ではありませんが、契約書の内容にはすべて拘束されます。契約書の案文は事前に受け取り、必ず読み込んでおいてください。
手付金の受け取りと手付解除
契約時に、買主から手付金(物件価格の5〜10%程度が一般的)を受け取ります。
この手付金は「解約手付」として扱われるのが通常です。相手が契約の履行に着手するまでの間であれば、買主は手付金を放棄して、売主は受け取った手付金の倍額を返して、契約を解除できます。売主側から解除すると倍返しになる、という点は特に覚えておいてください。
契約不適合責任(売主のいちばん大事な注意点)
契約不適合責任とは、引き渡した物件が契約の内容と食い違っていた場合に、売主が負う責任です。2020年4月の民法改正で、以前の「瑕疵担保責任」から名称と内容が変わりました。
たとえば雨漏りやシロアリ被害、設備の故障などが引き渡し後に見つかると、買主から修補や代金減額などを求められる可能性があります。
売主としての最大の防御策は「隠さないこと」です。知っている不具合は、告知書(物件状況報告書)に正直にすべて書いてください。伝えたうえで買主が了承した内容には、原則として責任を負いません。逆に、知っていて告げなかった不具合は、契約書で責任を免除していても免れられません。設備の動作状況も契約前に確認し、「設備表」に正確に記載することがトラブル防止につながります。
ローン特約は売主にも影響する
買主が住宅ローンを利用する場合、契約には「ローン特約」が付くのが一般的です。
これは、買主のローン審査が通らなかった場合に契約が白紙になり、手付金も買主へ返す、という取り決めです。売主から見れば、契約しても一定期間は白紙解除のリスクが残るということです。特約の期限がいつまでか、事前審査に通った買主なのかを、担当者を通じて確認しておきましょう。
契約書で確認すべきその他の条件
引き渡しの時期は、引っ越しや住み替え先の入居と整合しているか。固定資産税や管理費の精算の起算日はいつか。エアコンや照明など、どの設備を残してどれを撤去するのか。境界の明示(戸建て・土地の場合)は済んでいるか。細かいようですが、こうした点の曖昧さが後のトラブルの種になります。
売主の契約前チェックリスト
- 契約書の案文を事前に受け取り、読み込んだ
- 手付金の額と、手付解除(売主は倍返し)の仕組みを理解した
- 知っている不具合をすべて告知書に記載した
- 設備表の内容と実際の動作状況を確認した
- 契約不適合責任の範囲・期間を確認した
- ローン特約の期限と、買主の事前審査の状況を確認した
- 引き渡し時期が引っ越し計画と整合しているか確認した
- 残す設備・撤去する設備を明確にした
まとめ
売主の契約でいちばん大切なのは、「正直に開示すること」と「条件を曖昧にしないこと」です。この2つを徹底すれば、契約後のトラブルはほとんど防げます。そして、告知書や設備表の書き方まで丁寧に導いてくれる担当者がいれば、初めての売却でも安心して契約に臨めます。
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よくある質問
Q. 契約後に売主の都合でキャンセルできますか。
相手が契約の履行に着手する前であれば、受け取った手付金の倍額を買主に支払うことで解除できます(手付解除)。それ以降の解除は違約金の対象になり得ます。
Q. 古い家なので不具合が心配です。契約不適合責任を負わない方法はありますか。
個人間の売買では、特約で契約不適合責任を免除したり期間を限定したりすることが実務上おこなわれています。ただし、知っていて告げなかった不具合は免責されません。条件は買主との合意次第なので、担当者に相談してください。
Q. 手付金はいくらで設定すべきですか。
物件価格の5〜10%程度が一般的です。少なすぎると簡単に手付解除されやすくなり、売主にとって不安定な契約になります。金額の設定は担当者と相談して決めましょう。
Q. 売主も契約の場に出席する必要がありますか。
原則として出席します。契約書への署名と手付金の受け取りがあるためです。どうしても難しい場合の持ち回り契約などの方法は、担当者に相談してください。
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