売主がまだ住んでいる「居住中」の物件を内覧するとき、気を使ってしまって何も聞けないまま終わってしまう。そんな経験はありませんか。空室の方がゆっくり見られるし気も使わない、と感じる方は実際とても多いです。
たしかに、見やすさという点では空室が勝ります。これは間違いありません。
ただ、居住中には空室にはない決定的なメリットがあります。売主本人がそこにいるということです。売主は、業者が持っていない情報の宝庫なのです。
この記事では、業界17年の私が居住中の内覧で必ず聞いている10の質問と、聞く順番、そして聞いてはいけない質問をお伝えします。
この記事で分かること
- 居住中の内覧が実はチャンスである理由
- 住人について聞くべき3つの質問
- 暮らしの実態を知る4つの質問
- 管理組合の中身を探る2つの質問
- 本質を突く最後の1問
- 絶対に聞いてはいけない2つの質問
- 内覧時の最低限のマナー
なぜ居住中の内覧はチャンスなのか
空室の場合、知りたいことがあっても業者を通した「また聞き」になります。ピンポイントで確認するのが精一杯で、細かいニュアンスまでは伝わりません。
一方、売主を目の前にして聞けば、話はまったく違ってきます。しかも売主には告知義務があるため、知っていることについて嘘をつくのは難しい立場です。後で問題になれば困るのは売主自身ですから、聞かれたことには基本的に答えてくれます。
つまり、気を使うというデメリットは、考え方次第で大きなメリットに変わります。遠慮するのではなく、準備をして臨むべき場面なのです。
【住人について】最初に聞く3つの質問
質問1:上下左右にはどんな方が住んでいますか
まずはここからです。上下階は分からないという方もいますが、左右については知っているケースが多く、特に長く住んでいる売主ならかなり具体的に教えてくれます。
「隣はご家族で、お子さんはこれくらいの年齢」「ご主人はあまり見かけないので出張が多いのかもしれない」といった話まで出てくることもあります。元気なお子さんがいる家庭でも、きちんと挨拶してくれる方なら安心できますよね。
こうした情報は、業者を挟んだまた聞きでは個人情報の壁もあって、まず聞き出せません。
質問2:マンション内に気になる方はいますか
次はマンション全体の話です。クレーマー気質の方、細かい方、個性の強い方がいるかどうか。こうした情報は住んでいれば自然と伝わっているものです。
質問3:マンション内でトラブルは起きていませんか
住民同士のトラブルは告知事項にあたるため、売主としても伝えておかないと後々問題になりやすい部分です。つまり、きちんと聞けば答えてもらえる可能性が高い質問といえます。
あわせて「どんな家族構成の方が多いですか」も聞いておきましょう。正確な数字は分からなくても、ざっくりとした雰囲気は住んでいる人だからこそ分かります。
住んでいる人に関する情報は、まさに売主だけが持っている宝庫です。ここはしっかり質問してください。
【暮らしの実態】生活イメージを掴む4つの質問
質問4:お子さんがいるご家庭はどれくらいありますか
意外に思われるかもしれませんが、マンションにとって子育て世帯は多いほど良いのです。
中古マンションでは、新築時に購入した方々が年齢を重ねています。新陳代謝が起こらず高齢化が進むと、住民の視点がどうしても短期的になりがちです。
本来は長期修繕計画のうえで値上げが必要な局面でも、「年金生活で苦しいのでこれ以上支出を増やしたくない」「30年40年後に自分が生きているか分からない」という考えになるのは自然なことです。
一方、若い世代が多ければ長い目で物事を見る力が働きます。築年数にもよりますが、子育て世帯が多いかどうかは管理の健全性に直結するため、ぜひ確認してください。
質問5:普段の買い物はどこへ行きますか
スーパーの位置はネットでも分かりますが、「どちらが安いか」「どちらが行きやすいか」は住んでいる人にしか分かりません。
地図上ではA店の方が近くても、坂や信号が多くて、少し離れたB店の方が実際は便利、ということはよくあります。これはGoogleマップでは絶対に分からない情報です。
質問6:夜の雰囲気はどうですか
内覧はたいてい昼間です。しかし夜はまったく違う表情になる街もあります。
「駅からの帰り道はここが暗くなるので、少し遠回りしている」「坂を避けられるルートがある」「このスーパーを経由して帰ることが多い」「駅前は夜になると少し騒がしい」——こうした話は、自分で夜に歩いてみることも大切ですが、毎日暮らしている人の意見の方がはるかに具体的です。
質問7:生活音はどれくらい感じますか
ここは必ず聞いてください。音はストレスに直結する部分です。
「普段どれくらい音を感じますか」「音が気になるのはどんなときですか」と聞いてみましょう。お子さんがいる住戸なら「下の階から何か言われたことはありますか」という聞き方も有効です。相手にどう聞こえているかは、自分では分からないからです。
「ほとんど聞こえない」「たまにドンと音はするが気にするほどではない」といった具体的な答えが得られるだけで、入居後の心持ちは大きく変わります。
【管理組合】中身を探る2つの質問
管理は非常に重要ですが、管理会社に聞いても分からない領域があります。それが「住民側の実態」です。
質問8:総会の出席率はどれくらいですか
総会議事録が入手できればすぐ分かりますが、議事録は組合から売主に配られているので、出席していなくても把握しているはずの情報です。
質問9:総会の雰囲気はどうですか
淡々と管理会社の提案を承認していくだけなのか、それとも住民から質問や意見が活発に出るのか。活発であるほど、管理は良くなりやすい傾向があります。住民が管理に関心を持っている裏返しだからです。
ただし注意点があります。この質問をすると「管理が面倒だと思われて敬遠されるのでは」と勘違いする売主もいて、「何もしなくても大丈夫ですよ」「管理会社が全部やってくれます」と答えてしまうことがあります。
そのため、まず「総会には出席されていますか」と前提を確認してから聞くとよいでしょう。
私の場合は事前に資料を取り寄せて調査しているので、この質問は「答え合わせ」として使うことが多いです。数字が良いマンションでは「うちの組合は自分たちでも見積もりを取っています」といった回答が返ってきますし、「どなたか建築に詳しい方が住んでいませんか」と聞くと当たっていることもあります。そうした方が住民の中にいて、良い影響が根付いているわけです。
管理会社は数字や議題については説明してくれますが、住民側の温度感までは教えてくれません。だからこそ、この2問には価値があります。
【最後の1問】本質を突く質問
質問10:このマンションを買った決め手は何でしたか。住んでみてどうでしたか
これは今まさに自分がなぞろうとしている道そのものです。
購入の決め手は、利便性、間取り、日当たりなど、人によって多少違ってもある程度は重なります。そのうえで「実際に住んでみてどうだったか」まで聞ければ、購入後のイメージが一気に具体的になります。ここが最もリアルが出るところです。
この質問は、事前に自分なりの仮説を立てておくと深さが変わります。自分が感じているメリットを用意しておき、「駅までに坂がありますが、毎日の通勤は実際どうでしたか」といった形で投げかけるのです。準備しておくほど、聞ける幅も深さも広がります。
聞いてはいけない2つの質問
一方で、絶対に避けるべき話題が2つあります。
1つ目は価格に関すること。値段の話は、必ず業者と二人のところで話してください。売主の前で直接持ち出すのは避けるべきです。
2つ目はプライベートに踏み込みすぎる質問。話が弾んでくると、つい踏み込みすぎてしまう方がいます。住まいに関係することであれば問題ありませんし、売主から話してくださる分には構いません。しかし、あまり立ち入ってほしくない方もいます。
特に売却理由は、事前に業者から聞いておく方が賢明です。離婚など、必ずしも前向きとは限らない事情もあるからです。
内覧時の最低限のマナー
忘れてはいけないのは、物件を買うという行為であっても、取引相手は人であるということです。
- 挨拶、お礼をきちんと伝える
- 何かを見せてもらうときは必ず断りを入れる
- 時間を厳守する(遅刻は論外です)
- 「買ってやる」という態度で臨まない
よく「手土産を持っていった方がいいですか」と聞かれますが、必要ありません。かえって気を使わせてしまいます。
売主は部屋を掃除して待ってくれています。その礼儀とマナーを守ったうえで、聞きたいことはきちんと聞く。これが正しい姿勢です。
居住中の内覧で聞く10の質問チェックリスト
- 上下左右にはどんな方が住んでいますか
- マンション内に気になる方はいますか
- マンション内でトラブルは起きていませんか
- お子さんがいるご家庭はどれくらいありますか
- 普段の買い物はどこへ行きますか
- 夜の雰囲気はどうですか
- 生活音はどれくらい感じますか
- 総会の出席率はどれくらいですか
- 総会の雰囲気はどうですか
- 買った決め手は何でしたか。住んでみてどうでしたか
まとめ
居住中の内覧は気を使うぶん敬遠されがちですが、売主という情報源が目の前にいる貴重な機会です。見やすさでは空室が勝っても、得られる情報量では居住中が大きく上回ります。
住人のこと、暮らしの実態、管理組合の中身、そして購入の決め手。この10問を押さえておけば、そのマンションのことがかなり見えてきます。逆に、価格の話とプライベートへの過度な立ち入りは避けてください。
何も準備せずに行くと、結局「いいですね」で終わってしまいます。質問を用意して臨むかどうかで、得られるものは思っている以上に変わります。居住中の物件を見つけたら、遠慮ではなくチャンスと捉えて臨んでください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 居住中と空室、どちらの内覧が良いですか?
A. 見やすさでは空室が勝りますが、得られる情報量では居住中が圧倒的に有利です。売主は業者が持っていない情報を持っており、直接質問できます。気を使う点はデメリットですが、準備して臨めば大きなメリットに変わります。
Q. 売主は正直に答えてくれますか?
A. 基本的に答えてくれます。売主には告知義務があり、特に住民トラブルなどは告知事項にあたるため、嘘をつけば後で問題になるのは売主自身だからです。知っていることについては答えてもらえると考えてよいでしょう。
Q. 子育て世帯が多いマンションは騒がしくないですか?
A. 音の面はありますが、管理の観点では子育て世帯が多い方が良いとされます。高齢化が進むと住民の視点が短期的になり、必要な修繕積立金の値上げが通りにくくなるためです。若い世代がいると長期的な判断が働きやすくなります。
Q. 管理について聞くと嫌がられませんか?
A. 「管理が面倒だと思われるのでは」と勘違いして、実態より軽く答える売主もいます。そのため、まず「総会には出席されていますか」と前提を確認してから、出席率や雰囲気を尋ねるとよいでしょう。
Q. 価格の交渉は売主に直接伝えてもいいですか?
A. 絶対に避けてください。価格に関する話は、必ず業者と二人の場で行ってください。売主の前で直接持ち出すと、その後の交渉や関係に悪影響が出る可能性があります。
Q. 手土産は必要ですか?
A. 必要ありません。かえって気を使わせてしまいます。それよりも、挨拶やお礼、時間厳守、何かを見せてもらう際に断りを入れるといった基本的なマナーを守ることの方がはるかに大切です。
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