マンションの物件情報には必ず「総戸数」が書かれています。これは多い方がいいのか、少ない方がいいのか。よくいただくご質問のひとつです。
先に結論をお伝えすると、「何戸だから正解」という明確な答えはありません。ただし、はっきりした傾向はあります。そして、総戸数によってランニングコスト(管理費・修繕積立金)には毎月1万円以上の差が生まれることも、国土交通省のデータから読み取れます。
この記事では、業界17年の私が、小規模・中規模・大規模、そして番外編としてタワーマンションまで、それぞれのメリットとデメリットを本気で比較していきます。
この記事で分かること
- 総戸数によってランニングコストがどれだけ変わるのか(国交省データ)
- 小規模マンションが意外と「悪くない」理由
- 小規模でも避けるべき2つの危険なサイン
- もっともバランスが良いのは何戸くらいか
- 大規模マンションに潜む「余分に払っている」という落とし穴
- タワーマンションのランニングコストの現実的な水準
総戸数でランニングコストはどれだけ変わるのか
まず数字から見ていきます。管理費・修繕積立金は、戸数が少ないほど1戸あたりの負担が重くなる傾向があります。国土交通省のデータでも、これははっきり表れています。
- 20戸以下:もっとも割高。標準的な水準に対して月1万2,000円ほど高い
- 20〜30戸:8,000円ちょっと高い
- 中規模〜大規模:比較的安定する
- 500戸超:再び上がり出す
毎月1万2,000円の差は決して小さくありません。500戸を超えると再び上昇に転じるのは、パーティールームやジムといった共用施設が増えること、そしてエレベーターの交換費用や外壁修繕工事の特殊性といった建物側の事情が絡んでくるためです。
つまり、戸数は少なすぎても多すぎても割高になる。これがデータから見える傾向です。
ただし、このデータだけを見て「小規模はやめよう」「大規模を狙おう」と判断するのは、あまりに単純すぎます。ここからは規模ごとに詳しく見ていきましょう。
小規模マンション(〜30戸)のメリットとデメリット
まず20戸を目安に区切って考えます。たしかに1戸あたりの負担は重くなりがちです。しかし、私がこれまで数多くの管理組合を調査してきた実感として、小規模マンションでも「優良」「問題なし」と判断するケースは意外と多くあります。
小規模の強みは「管理への関心の高さ」
これには明確な理由があります。戸数が少ないマンションは、住民同士が顔見知りになりやすく、コミュニティが形成されやすいのです。
その結果、管理組合の役員も順番が回ってきやすく、何かあれば住民同士でコミュニケーションを取る。つまり、管理に興味が向きやすい性質があります。
管理会社が持ってきた提案をそのまま採決するのではなく、自分たちでも見積もりを取って工事費を精査する。こうした動きが見られるのが、実は小規模マンションなのです。ランニングコストは大規模より高くなりがちでも、管理の質でカバーしているマンションは確かに存在します。
立地が良い物件が多いという側面
もうひとつ見逃せないのが立地です。小規模マンションは、住宅地や閑静なエリアに建っているものが多くあります。住宅地には高さ制限があり、大きなマンションを建てられないためです。
そうしたエリアは人気の高い場所やブランドエリアであることも多く、まとまった土地が出にくい。つまり「小規模」という条件で除外してしまうと、立地の良いマンションを候補から外すことになります。これは非常にもったいないと考えています。
平均はあくまで平均です。悪いものも良いものもひっくるめた数字なので、戸数だけで切り捨てるのは避けたいところです。
小規模で避けるべき2つのサイン
ただし、小規模マンションには明確に警戒すべきサインが2つあります。
1つ目は「戸数が少ない×自主管理」です。
自主管理そのものが悪いとは思っていません。過去の調査事例では、理事長がマンション管理士の資格を持っていて、管理会社が入っている以上に良い内容で運営できているマンションもありました。
問題は、戸数が少ないと制約が出てくることです。もっとも大きいのが住宅ローンです。基準は金融機関によって異なりますが、大手メガバンクでは20戸を下回る自主管理マンションはそもそも融資対象外、というケースがあります。
銀行はお金を貸すとき担保を見ます。返済が滞った際にそのマンションを売って回収できるかどうか。20戸を下回る自主管理物件には担保価値がないと判断する金融機関が多いのです。実情がどうであれ、買いにくく売りにくい。この組み合わせにはネガティブな視点を持ってください。
2つ目は「戸数が少ない×縦に長い」です。
たとえば1フロア2戸で10階建ての20戸と、1フロア4戸で5階建ての20戸では、建物にかかる修繕費用がまったく違います。
大規模修繕では足場を組みますが、高さが上がるほど費用は上がります。エレベーターも同様で、階数が増えるごとに交換・メンテナンス費用が高くなります。ただでさえ1戸あたりの負担が重い小規模で、高さの負担が乗ってくるとかなり厳しくなります。
さらにここへ機械式駐車場が加わると、数字はより悪化します。「戸数が少ない・縦に長い・機械式駐車場あり」の3条件が揃ったマンションで、私が「これは良い」と判断できたものは、これまでの経験上ありませんでした。絶対とは言いませんが、それくらい厳しいシミュレーション結果になります。
中規模マンション(50〜200戸)がもっともバランスが良い
中規模に厳密な定義はありません。国交省の区切りに合わせれば30戸以上500戸未満ですが、これは幅が広すぎます。一般的にイメージされる中規模は100〜200戸あたりで、私の感覚では50戸から200戸くらいが中規模です。
この規模がもっともバランスが良いというのが正直なところです。可もなく不可もなく、ランニングコストが極端に高くなりにくく、管理も比較的安定しやすい。日本のマンションで最も多い規模でもあるため、選択肢も豊富で探しやすいというメリットがあります。
ただし、小規模と同じく「1フロアの戸数が少なく縦に長い」物件だけは警戒してください。そうでなければ比較的安定しやすい規模です。もちろん、個別にきちんと調査すればダメな物件もありますので、規模だけで安心しないことは大前提です。
大規模マンション(300戸〜)のメリットと落とし穴
国交省の区切りでは500戸ですが、私の感覚では300戸を超えれば大規模と考えてよいと思います。
メリットは共用施設の充実とコスト分散
300戸を超えると、ゲストルームやジムといった共用設備が充実しやすくなります。戸数が多いぶん1戸あたりの負担が軽くなるため、豪華な共用設備や立派なエントランスを備えても、比較的軽い負担で運営できるのです。
デメリットは「誰かがやってくれる」という空気
一方でデメリットは、小規模のちょうど裏返しです。住民同士のコミュニケーションが少なく、顔も知らない。管理組合の役員が一度も回ってこない人もいる。結果として、マンションの管理に興味を持ちにくくなります。人数が多いほど「誰かがやってくれる」という心理が働くのです。
そうなると管理会社の言いなりになりやすくなります。しかも管理会社にとっては、規模が大きいマンションほど動く金額が大きい。当然、狙われやすくなります。
実際に調査した事例をお話しします。駅徒歩1〜2分、300戸超、高さは11階建て、駐車場も機械式ではない。条件としては恵まれているにもかかわらず、修繕積立金だけで月4万円を超えていました。
この規模・この内容であれば、経験上、月2万円もかからずに運営できるマンションです。つまり半額以下で回せるはずのところを、4万円も払っている。月5万、6万なら「かなり悪い」と判断できますが、4万円は「ギリギリ許容範囲か」と見過ごされやすい絶妙な水準です。ランニングコストが極端に高くなるわけではないものの、払わなくてよいお金を払い続けている状態と言えます。
売り物件が重なりやすいという弱点
もうひとつの注意点が、規模が大きいと売り物件が一度にたくさん出やすいことです。特に築20年を超えると、当初に購入した方のお子さんが自立し、売却に動くタイミングが重なります。
立地が良く駅が近ければ、それなりの価格でも売れていきます。しかし駅から離れて利便性が高くない、車がないと生活しづらいといったマンションでは、古くなって売りが集まったときに価格下落の圧力を強く受けます。そこへ修繕積立金の値上げが重なると、売却は一段と難しくなります。
番外編:タワーマンションは月4万円を超えると考えておく
タワーマンションは戸数ではなく階数で区切られ、国交省の基準では20階以上が該当します。20階を高層と呼ぶかタワーと呼ぶかは議論の余地がありますが、一般的には20階超がタワマンの部類でしょう。
管理面でのリスクは、正直なところ高いと考えています。理由は工事費そのものが高額だからです。
- 20階を超えると足場を組めず、ゴンドラを吊るして施工する必要がある
- エレベーターは1台あたり1億円を平気で超える。戸数が多ければ10基程度あることも
- 給排水管の交換も高額になる
- 機械式駐車場を備えていることが多い
これらが重なると、資金は不足しやすくなります。私がこれまで行ってきた調査結果と、診断システムを構築する際に読み込んだデータの平均値から見ると、タワーマンションのランニングコストは月4万円を必ず超えると考えておいた方がよいというのが実感です。月2万〜3万円で収まるケースは、ほとんどないと思っています。
機械式駐車場がなければ4万円を切ることもありますが、機械式駐車場のないタワマンはかなり珍しく、その場合は別の面で何か事情があることも多いものです。
総戸数を見るときのチェックリスト
- 総戸数の傾向(20戸以下は約1万2,000円割高、500戸超で再上昇)を理解したか
- 小規模の場合、自主管理になっていないか確認したか
- 小規模・中規模とも「1フロアの戸数が少なく縦に長い」形状ではないか確認したか
- 機械式駐車場の有無を確認したか(特に小規模・縦長との組み合わせは要注意)
- 大規模の場合、管理費・積立金が規模に見合った水準か検証したか
- 大規模の場合、将来の売り物件集中に耐えられる立地か考えたか
- タワマンの場合、月4万円超のランニングコストを前提に資金計画を立てたか
- 戸数の傾向だけでなく、立地と管理組合の財務を個別に確認したか
まとめ
データで見れば、20戸以下は月1万2,000円ほど割高になり、500戸を超えると再び上昇します。もっともバランスが良いのは50〜200戸あたりの中規模です。
ただし、これはあくまで傾向であり平均です。小規模でも管理への関心が高く優良に運営されているマンションはたくさんありますし、大規模でも管理会社の言いなりになって余分なコストを払い続けているマンションもたくさんあります。
「小規模は良くない」「何戸以上を狙え」といった単純な話ではありません。私はこうした一律の断定がもっとも危険だと考えています。結局のところ、良いマンションかどうかは一件一件、立地と管理組合の財務を丁寧に調査しなければ分かりません。
表面的な数字ではなく、その裏側にある管理と財務の実態を見る。これを意識していただくことが、住みやすさと資産価値の両方を守ることにつながります。
「買っていいマンション診断」で管理の中身を確認しませんか
ハウスクローバーでは、管理組合の財務・修繕積立金・長期修繕計画の資料をアップロードするだけで、その物件を買っていいかどうかをA〜Eの5段階で判定する「買っていいマンション診断」を提供しています。私がこれまで積み重ねてきた管理調査のノウハウと判断基準をアルゴリズムに学習させており、修繕積立金の30年シミュレーションと専門家基準の解説が出ます。
無料会員の方は月額でご利用いただけ、ハウスクローバーの不動産エージェント経由でご成約いただいた場合は、お支払いいただいた利用料をキャッシュバックする設計にしています。管理組合の調査ができる不動産業者はほとんどいないのが実情ですので、複数の物件を比較検討する際にぜひご活用ください。
また、全国の優良な不動産エージェントを探せるプラットフォームも無料会員登録でご利用いただけます。
動画解説をご希望の方は、YouTubeチャンネル「HOUSECLOUVERちゃんねる」もあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q. マンションの総戸数は何戸くらいがベストですか?
A. ランニングコストのバランスがもっとも良いのは50〜200戸程度の中規模です。国交省のデータでは20戸以下が月1万2,000円ほど割高で、500戸を超えると共用施設や建物の特殊性から再び上昇します。ただし傾向にすぎないため、最終的には個別の管理状況で判断してください。
Q. 小規模マンションは避けた方がいいですか?
A. 一律に避ける必要はありません。戸数が少ないとコミュニティが形成されやすく、管理への関心が高い優良なマンションも多くあります。また住宅地の良い立地に建っていることも多く、除外するとかえって選択肢を狭めます。ただし自主管理との組み合わせ、縦に長い形状には注意が必要です。
Q. 戸数が少なくて自主管理だと何が問題ですか?
A. 住宅ローンが組みにくくなります。大手メガバンクでは20戸を下回る自主管理マンションを融資対象外とするケースがあり、担保価値がないと判断されるためです。実際の管理状態が良くても、買いにくく売りにくいという現実的なリスクが生じます。
Q. 大規模マンションなら管理費・積立金は安いのですか?
A. 1戸あたりの負担は軽くなる傾向がありますが、安心はできません。住民が管理に無関心になりやすく、管理会社の言いなりで工事費が割高になるケースがあります。実際に、本来は月2万円弱で運営できる規模の物件が、積立金だけで月4万円を超えていた事例もあります。
Q. タワーマンションのランニングコストはどれくらいですか?
A. 月4万円は超えると考えておいた方がよいでしょう。エレベーターが1台1億円を超える、足場が組めずゴンドラ施工になる、機械式駐車場を備えていることが多いなど、工事費そのものが高額になるためです。月2万〜3万円で収まるケースはほとんどありません。
Q. 「〇〇戸以上を狙え」という情報は信用できますか?
A. 単純すぎる判断だと考えています。データ上の傾向は確かに存在しますが、平均はあくまで平均です。戸数が多くてもパフォーマンスの悪いマンションは数多くありますし、その逆もあります。立地と管理組合の財務を一件ずつ確認することが不可欠です。
コメント
この記事へのコメントはありません。