この記事を読むとわかること
- 一戸建て売却に関わる全てのこと
- 一戸建て売却の流れ
- 現役のプロによるフェーズごとの注意点やポイント
「子供が小さい時に一戸建てを買ったけど、自立したし街中のマンションに引っ越そうか」「親から相続した実家を売却したい」など一戸建てを売る理由は人それぞれです。
理由は十人十色であっても、一戸建てを売却するときの流れや、失敗しやすいポイントは共通するものです。
この記事では15年以上現役として活躍しているプロが、一戸建てを売却をしようと考えたときの準備や、全体の流れ、失敗しやすい注意点などを網羅していきます。
これから一戸建ての売却を考えている方はぜひ最後までご覧ください。
またボリュームもありますので、特定のポイントについて知りたい方は、目次の「表示」をクリックして目次が開いたら、目的の箇所をクリックすると直接ジャンプできます。
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1、一戸建て売却の心得
まず一戸建てを売却するにあたり、事前に準備しておくことから解説していきます。
最低限の知識は身につけておく
一戸建ての売却を考えたときに、すぐに価格査定を依頼するのではなく、事前にある程度の知識を身につけておいた方がいいです。
不動産の専門家に任すとしても、事前に自身も知識を少しでも持っていた方が、不動産業者との話もスムーズに進みます。
また不動産業界には誠実ではない業者や担当者もたくさんいますので、自衛的な意味でも最低限の知識は身につけておいた方が良いでしょう。
この記事で関連するところを一通り読んでいただくことで、それなりの知識が身に付くようになっています。
経済状況やご自身の状況を把握する
経済状況によって相場は変動しますが、一戸建てに関してはマンションのように投資マネーの流入が少なく、実際に住む用途として買われることが多いため、経済状況に左右されにくい物件種別と言われています。
ですので、特に相場による売り出しタイミングについては、そこまで気にしくなくても良いかと思います。
他にもご自身の状況として、売却に時間をかけられるかどうかによっても販売戦略は変わってきます。
また住み替えの場合は、タイミングが非常に重要で、順序も複雑になってきますので、別記事に詳しくまとめてあります。
単なる売却のみでなく、新規購入を伴う住み替えをお考えの方は、以下の記事も併せてご参照ください。
-
https://houseclouver.jp/sale/sumikae-kaisenkou-urisenkou-timing/
houseclouver.jp
2、一戸建て売却の準備
次に実際に不動産業者に問い合わせをする前に準備しておくことを解説していきます。
大体の相場を押さえておく
まずある程度の相場について把握しておきましょう。
一戸建ての相場の求め方は、土地と建物に分けて考えます。
土地価格の求め方
土地価格については、プロであれば相場の成約事例(実勢価格)を用いることができますが、一般には公開されていない情報になりますので、公示価格を利用します。
公示価格とは、国土交通省が毎年3月に全国の標準地を不動産鑑定士が評価をし公示をする価格のことです。
実勢価格とは違うこともありますが、大体の目安を知るには大変参考になる数字です。
公示価格を調べる際はこちらのサイトが見やすくて便利です。
-
土地価格相場が分かる土地代データ|公示地価・基準地価・地価マップ・推移|2024年[令和6年]
日本全国の土地価格データを掲載しています。2024年[令和6年]の最新の公示地価も掲載。地価マップ、土地価格相場、地域別平均値、地価ランキング、地価推移が分かります。「土地価格相場が分かる土地代データ ...
tochidai.info
このサイトから自分が売りたいと考えている場所の近くの標準地の価格を参考にしましょう。
ここで求めた平米単価、もしくは坪単価をご自身の一戸建ての土地の広さに乗じて求めます。
建物価格の求め方
建物価格については構造と築年数、そして広さを考慮して考えます。
まずは構造ごとの耐用年数を把握します。
構造 | 法定耐用年数 |
---|---|
木骨モルタルの住宅 | 20年 |
軽量鉄骨造 | 19年 |
木造・合成樹脂造 | 22年 |
金属造、主要な鉄骨の肉厚が3〜4mm以下 | 27年 |
金属造、主要な鉄骨の肉厚が4mm超 | 34年 |
鉄骨鉄筋コンクリート造 | 47年 |
次に建物の新築時の価格を把握します。
この新築時は実際に建てたときの金額ではなく、今の物価で同じ建物を建てたらいくらになるかという考え方をします。
これは火災保険の建物評価額の算定などによく利用される方法です。
木造住宅の新築費単価(単位:千円/㎡)
木造 | |
---|---|
東京、神奈川、大阪 | 178 |
埼玉、千葉、山梨、長野、岐阜、愛知、三重、滋賀、京都、兵庫、奈良、岡山、山口、沖縄 | 160 |
北海道、宮城、山形、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、和歌山、鳥取、島根、広島、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分 | 142 |
青森、岩手、秋田、宮崎、鹿児島 | 125 |
木造以外の新築費単価(単位:千円/㎡)
コンクリート造 | 鉄骨造 レンガ造、石造 |
|
---|---|---|
東京 | 249 | 211 |
神奈川 | 224 | 190 |
茨城、埼玉、千葉、山梨、静岡、愛知、三重、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、島根、岡山 | 199 | 169 |
北海道、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、長野、岐阜、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄 | 174 | 148 |
エリアごとの新築費単価を用いて売却予定の建物の新築時の価格を求めます。
これらの数字が揃ったら最後に以下の計算式で現在の概算価格を計算します。
建物の計算式
新築時価格 ×(耐用年数ー築年数)/ 耐用年数
ここで計算された土地価格と建物価格を足すと大体の売り出し価格がわかります。
あとはリフォーム歴やメンテナンス状況、現況やメーカーなど、様々な要素で調整して価格を出していきます。
ある程度の売り出し価格が把握できている状態で、不動産業者に査定を出すとイメージが湧きやすくなります。
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周辺の新築分譲戸建の価格も参考に
あとは周辺の新築分譲戸建の価格もある程度は参考にします。
周辺の新築分譲戸建と比較してお得感の出る価格であれば問題ありませんが、それと比較して同等の水準や高いようだと「それなら新築で」となる方も一定数いるので、多少苦戦することも想定できます。
土地が広かったりすると、新築分譲戸建と比較して割高に見えやすくなる傾向があります。
事前に準備しておくといいもの
次に事前に準備しておくといいものを解説します。
登記識別情報(権利証)
近年取引された不動産であれば登記識別情報という書類で、昔であれば権利証という和紙に字が書かれた書類です。
登記簿の内容や所有者などが記載されています。
再発行できない書類ですので、万が一手元にない場合は、不動産業者に事前に申告しておきましょう。
ない場合は、司法書士の権限で登記を移す手法を取りますが、余分に費用がかかります。
間取り図などの建築図面
木造であればそこまで詳しい図面がないかもしれませんが、間取り図や建築図面があると買主に喜ばれます。
図面の有無で価格が変わることはありませんが、あった方が好ましい書類です。
特に確認済証や建築済証は買主の用途などにもよりますが、必須となることもあるので、あるのであれば事前に用意しておきましょう。
固定資産税等がわかるもの
毎年自治体から送られてくる固定資産税の請求書を用意しておきましょう。
固定資産税を確認できるだけでなく、土地の上に他の付属建物がないかどうかを把握するのに役立ちます。
土地の測量図
昔のものでも土地の測量図があれば用意しておきましょう。
無くても、前回の測量から時間が経っていれば再度確定測量をすることが大半ですので、特に問題はありません。
リフォームの内容がわかるもの
これまでのリフォーム履歴がわかるものがあれば用意しておきましょう。
内容としては、リフォーム見積もりや契約書などです。
一戸建てはマンションと違い、所有者によって修繕状況が大きく変わります。
定期的にメンテナンスがされている物件であれば、築年数が経っていても価格のプラス材料になります。
住宅ローン関係の資料
住宅ローンの残債がまだ残っているのであれば、住宅ローンの返済予定表や、毎年年末ごろに届く残高証明書などを準備しておきましょう。
相続の場合は分割協議書など
相続の場合、法定相続人の全員の同意がないと売却することができませんので、分割協議がまとまっているかどうかは大切な情報です。
私もよく契約まで漕ぎ着けたものの、相続人の一人が首を縦に振らず契約自体が流れたということを何度か見聞したことがあります。
すでに登記がされている場合は大丈夫ですが、まだの場合は可能であれば分割協議書などの書面を用意しておくと良いでしょう。
実際に必要になる書類や他の所有者(予定者)の合意方法などについて担当のエージェントとしっかり打ち合わせをするようにしてください。
売却時に問題となりやすいケース
一戸建てを売却する際に比較的遭遇することが多いケースで、気が付かない間に違法建築になってしまっていることがあります。
特に増改築をした一戸建てに頻発しています。
増改築をする際には建築基準法で、面積が10平米以上の増築工事と、準防火地域・防火地域内での増築工事については確認申請が必要となります。
少しの変更だからと知らぬ間に違法建築状態になっていることがあるのです。
違法建築だと、銀行から住宅ローンは借りられないので、現金客のみしか対象とならないこともあります。
増改築の履歴があるのであれば、確認申請の控えがあるか必ず確認し、紛失もしくは未申請であれば、仲介業者に最初に伝えておくようにしましょう。
また他にも売却にあたって不利になりそうなことであっても、知りうるべき事実については全て担当者に伝えてください。
事前に告知をしておかないと、後から告知義務違反に問われることもありますので、注意するようにしてください。
3、不動産仲介業者の担当者を探す
ここにきて、いよいよ不動産仲介業者を探すフェーズとなります。
不動産仲介業者を選ぶこのフェーズが、一戸建てを売却する上で最も重要となります。
正確には、不動産仲介業者というよりも担当者(以下、不動産エージェント)を探すという言い方の正しいです。
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不動産という商品はもともと個別性が強く、その中でも一戸建ては建物の状態の判断や建築の知識、土地取引の知識や経験も必要となり、マンションと比較して取り扱い難易度が高い物件種別です。
担当者のスキルによって売れる価格が変わるのはもちろんのこと、引き渡した後のトラブルの有無も、担当者によって変わります。
なので、どこの不動産仲介業者に依頼するかではなく、どの担当者(不動産エージェント)に依頼するかという視点がポイントです。
ハウスクローバーは、全国の優良な不動産エージェントが探せる唯一のサイトです。
事務局の審査をパスしていることはもちろんのこと、利用したユーザーの評価も参考にしながら探すことができます。
発生する費用は、実際に不動産エージェントに依頼をして、成約した際にかかる仲介手数料のみとなっております。
ぜひこれから一戸建ての売却を検討されている方も、現在の売却活動がうまくいっていない方も、ご利用ください。
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コラム①:事前にリフォームはした方がいい?
住みながら販売活動をするのではなく、空き家として売り出す場合、事前にリフォームをした方が売りやすいのかということをよく聞かれますが、基本的には特に何もしなくてもいいと考えています。
理由として、
- 費用対効果が良くない
- リフォームした分、高くなっていると思われることがある
- 自身でリフォームをしたい層もいる
があげられます。
費用対効果が良くない
プロの不動産業者が行うリフォームは、通常よりも低価格で、費用対効果の高いリフォームの勘所を押さえた上で行われますが、一般の消費者が低価格で費用対効果いの高いリフォームを行うことは、やや難易度が高いと考えられます。
リフォームした分、高くなっていると思われることがある
またリフォームをしたところで、買主候補の方に「リフォームした分、高いんですよね」と言われてしまうことが多いです。
実際にそうでなかったとしても、そのように思われがちです。
自身でリフォームをしたい層もいる
買主候補の中には、ご自身でリフォームやリノベーションをしたいという層も一定数います。
その人たちからしてみたら、リフォームをしてあるとその分価格に反映されているので「損」という感情が芽生えてしまいます。
この層の人たちは、むしろ何もされていない状態であることを好みます。
ただし、物件の印象があまりにも悪いと、それはそれで問題があるので、最低限クリーニングを入れるとか、次にあげるホームステージングの利用を検討しましょう。
コラム②:ホームステージングはした方がいい?
ホームステージングとは、売り出し中の家に家具や照明、観葉植物などを置いて、モデルルームのように室内を演出することを言います。
中古住宅流通が中心の欧米では、ホームステージングをしなければ売れないと考えられているほど、重要視され活用されています。
日本ではまだ事例は少ないものの、リフォーム済み物件などで徐々に利用が進んできています。
一般の方の売却物件でもステージングされている物件が散見されるようになってきていて、今注目を浴びているサービスの一つです。
ただしサービスの利用には費用もかかりますので、費用対効果を考えながら利用するかどうかを判断しましょう。
コラム③:仲介で売り出すか、買取業者に買い取ってもらうか
一戸建てを売り出すときに、仲介で売り出すか、買取業者に買い取ってもらうかを検討することがあるかもしれません。
それぞれの違いですが、仲介で売り出すということは、不動産仲介業者を利用して広く一般の方を対象に販売活動をすることになります。
そして買取業者に買い取ってもらうということは、一般の方を対象にするのではなく、不動産業者である買取業者に買い取ってもらうことになります。
どちらが高く売れる可能性が高いかと言えば、仲介で売る方が高く売れる可能性が高いです。
一方で買取業者を利用するメリットとしては、スピード感と確実性。そして手離れがいいということです。
一般の仲介だとどうしても時間がかかりますし、住宅ローンを利用するので、本審査で落ちてしまい契約が白紙撤回になってしまうリスクがあります。
また買主が業者となる買取の場合は、契約不適合責任を不担保とすることが多いので、後から修繕費用を請求されたりするリスクを減らせます。
遠方に引っ越す時や、しばらく人が住んでおらず建物の状態に不安がある時、またタイミングが非常に重要となる住み替えの時など、状況によって、仲介と買取のどちらがいいかを判断していくようにしましょう。
4、不動産業者と媒介契約を締結する
不動産仲介業者や不動産エージェントに問い合わせをして、打ち合わせをした後は、実際に売却活動にあたり、不動産仲介業者と「媒介契約書」を締結します。
媒介契約書には3つの種類があり、それぞれ状況に応じて取捨選択をします。
ここからは3つの媒介契約の種類と、それぞれの注意点や活用するべき状況について解説していきます。
専属専任媒介契約
一つ目の契約が専属専任媒介契約と呼ばれるもので、媒介契約の中で最も縛りが厳しいものとなります。
まず依頼する側は、一社の不動産仲介業者にしか依頼をすることができません。
(ちなみに2人の不動産エージェントに依頼をする場合で、2人が同じ不動産仲介業者に所属するときは、一社専属でも構いません)
また依頼者が自身で売主を見つけたとしても仲介を不動産業者に依頼し、仲介手数料を支払わなければなりません。
一方の不動産業者に対しても縛りが強く、5営業日以内のレインズ(※)掲載義務、1週間に1回以上の報告義務、最長3ヶ月間の契約期間などの制限があります。
(※)レインズ:不動産業者だけがアクセスできる流通物件のデータベース
一社に限定する契約となるので、依頼先が不誠実な業者であったり、担当者のスキルや経験がなかったりすると、依頼者の損失が大きくなります。
またレインズ掲載後は、掲載情報や販売状況をご自身でも確認することができますので、必ずレインズのIDとパスワードを受け取るようにしてください。
専任媒介契約
同じく一社専属ではあるものの、依頼者は自身で買主を見つけて直接契約を締結することができます。
一方不動産仲介業者の縛りも、専属専任媒介契約よりはやや緩くなり、7営業日以内のレインズ(※)掲載義務、2週間に1回以上の報告義務、最長3ヶ月間の契約期間などの制限になります。
こちらも一社専属となりますので、依頼先によって結果が大きく変わります。
一般媒介契約
一般媒介契約は、依頼者にとって一社だけでなく複数社に同時に依頼することができます。
また不動産業者の縛りもゆるく、レインズの掲載義務無し、報告義務もなし。契約期間の縛りもありません。
複数社に依頼することができるメリットがある一方、不動産業者への縛りもほとんどないので、不動産業者が力を入れやすい専任媒介や専属専任媒介が推奨されることもありますが、実際に不動産業界で15年以上活動してきた経験で考えても、一般媒介契約で複数社に依頼をした方が、不動産仲介業者同士の競争が働き、メリットも大きいと感じています。
それぞれの比較表はこちらです。
複数社との契約 | 売主が見つけた買主との取引 | レインズへの登録義務 | 売主への報告義務 | 契約有効期間 | |
---|---|---|---|---|---|
専属専任媒介契約 | × | × | 5営業日以内 | 1週間に1回以上 | 3ヶ月以内 |
専任媒介契約 | × | ○ | 7営業日以内 | 2週間に1回以上 | 3ヶ月以内 |
一般媒介契約 | ○ | ○ | 義務なし | 任意 | 3ヶ月以内 |
また媒介契約のより詳しい解説と、「囲い込み」などの不利益行為の詳細はこちらの記事でより詳しく解説していますので、こちらおも合わせてご参照下さい。
-
https://houseclouver.jp/sale/hudousan-cyukai-kakoikomi/
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コラム④:販売価格はどのようにして決めるのか
販売活動において販売価格の決め方は、不動産業者の担当者(不動産エージェント)の考え方や経験値などに大きく左右されます。
また販売価格によって、その後の販売活動が上手くいくこともあれば、失敗してしまうこともある重要なポイントですので、しっかり担当者と打ち合わせをしながら決めていきましょう。
まずおおよその相場を求めてから個別の評価をしていきます。
そして販売期間がどれくらい取ることができるかで、価格を決めていきます。
販売期間に余裕がある場合は、多少高くしても構いませんが、住み替えや売り急ぐ場合は、安すぎず高いと思われないギリギリの価格設定をしていきます。
販売価格は相場や物件の状態だけでなく、周辺の販売状況によっても変わってきますので、担当者とよく相談して決めるようにしてください。
コラム⑤:土地の確定測量はした方が良いか
一戸建てを売るときは、土地の取引の側面もありますので、確定測量は後々のトラブルを回避する意味でも基本的にはした方がいいです。
現存する測量図が10年以内で、境界杭が残っていて、境界確定の覚書も残っているのであれば、確定測量図ありという形で売却もできます。
しかし、測量時期が前回の時からかなり時間も経っていたり、境界確定の覚書もないのであれば、再度確定測量をした方がいいです。
販売にあたっての実施のタイミングですが、一番多いのは、販売開始時に仮測量といって、ある程度正確な面積を求めておき(境界確定の立ち会いはしない)、契約後に確定測量を実施するというパターンが多いです。
しかし、確定測量自体に1ヶ月半から2ヶ月ほどの時間がかかることや、古い塀やブロックなどがある場合や杭が残っていない場合、隣地の所有者と合意が取れないと契約が白紙撤回になってしまうケースもありますので、できれば販売開始時から確定測量は進めておいた方がいいかと思います。
コラム⑥:インスペクションは実施するべきか
インスペクションとは建築士の資格者で、国土交通省の研修を受けたインスペクターという資格者が、専用の機械などを用いながら建物の状況を調査していく検査のことです。
外壁や雨漏りの状態、床下の状態や建物の傾きなど、時間をかけて細かく検査していき、事前に建物の状態を明らかにするものです。
インスペクションに関しては、どちらかというと買主にとってメリットがある制度ですので、売主がやらなければいけないということはありません。
現にオーストラリアでは、売主と調査会社の癒着が問題となり、法律で買主しかインスペクションを実施することはできなくなっております。
ただ日本では現状、そのような問題は起こっておらず、事前にインスペクションをやっておくと親切ではあります。
最初に問題があればそれをオープンにしておいた方が、買主にとっても安心材料にはなります。
5、販売活動の開始
不動産仲介業者と媒介契約が終わったら、物件情報がレインズに登録され、その他SUUMOやアットホームなどの物件情報サイトにも掲載されて広く買主を募集します。
実際に依頼している不動産仲介業者に問い合わせが入り、内覧の段取りや日時の調整が行われていきます。
空き家の場合は、不動産仲介業者に鍵を預けておけば良いですが、住みながら売却する場合は、生活スペースに購入希望者がやってきて内覧することになります。
お互い緊張感のある内覧になりますが、色々聞かれることもありますので、聞かれたことには丁寧に回答しましょう。
値段に関する話は基本的にはタブーですので、そういった話が出た際は、担当者に助け船を出してもらいましょう。
住んでいる状態のお部屋を売れやすくするために
空き家の状態であれば、家具やものなどは撤去することができますが、住んでいる状態での販売活動は少し勝手が違います。
片付ければいいというのはどなたでも分かると思いますが、どれくらい片付ければいいのでしょうか。
基本的には次の引越しの時に持って行かないようなものは、全て捨てておくことが理想です。
もちろんお子様などもいらっしゃる場合は、なかなか難しいかもしれませんが、少しでも印象を良くするためにも不必要なものは極力減らすべきです。
また収納も内覧者が確認したいポイントでもありますので、ある程度見られても良い状態にしておくと良いでしょう。
片付けのポイントとして、人は最初の10秒で印象が決まると言われていますので、玄関周りや、リビングなどに入って一番最初に目につきやすい箇所を集中的にキレイにすると効率がいいです。
また匂いも視覚と同じくらい印象に残りやすいので、柑橘系のドゥヒューザーなどを活用するのも、イメージ戦略として有効な手段となります。
6、商談と価格交渉
実際に内覧をこなしていくと、具体的に話を進めていきたいということで購入申し込みが入ります。
俗に「商談」と呼ばれるものです。
買付証明書と呼ばれる書面が仲介業者を通じて提出されます。
買付証明書とは?
買付証明書には、先方の購入希望価格や手付金の額、その他希望内容や有効期限を記載されています。
この商談・交渉がまとまれば契約という前提での書面となります。
買付証明書に記載されるのは、
- 記入日
- 買主の住所や名前、捺印
- 購入希望価格
- 手付金の額
- ローン特約の有無
- 買付証明書の有効期間
- その他希望内容(引渡し時期やインスペクションの実施など)
となります。
また住宅ローンの事前審査に通っているかどうかもポイントになります。
住宅ローンにとっていなければ、買える人かどうかもわからないためです。
価格交渉のポイント
価格交渉はほとんどの物件で入ります。
どこまで価格交渉に応じるのか、デッドラインを決めておくと良いでしょう。
買い手の価格交渉にも様々なスタンスがあり、「あわよくば」的なものもあれば、「この値段でないと買わない」というものから様々です。
この辺りは間に入る仲介業者が相手の感触を確認しながら、調整をしていきます。
また他に検討されている方の状況や、内覧の予定なども総合的に加味しながら交渉を進めていきます。
囲い込みが損をしやすい理由
囲い込みが損をしやすいと言われている理由はこの価格交渉のところに如実に出ます。
囲い込みをされてしまうと、本来はいるはずだった問い合わせ件数や内覧件数が目に見えて減ります。
実際私がこれまで売却のお手伝いをしてきた統計を見ても、自社の集客が2割、他社の業者からの集客が8割ほどです。
もちろん自社の集客では、大手のポータルサイトには全て掲載していましたし、囲い込みも当たり前ですが、一切していません。
それほど他業者が持っている買主候補は多いのですが、ここを止められてしまうと、問い合わせ件数や内覧件数が減るのは当然と言えば当然です。
問い合わせや内覧件数がたくさんあれば、それだけ具体的な検討者も増えますので、交渉には有利になります。
買主も交渉はしたいものの、欲しいと思う物件は買いたいので、売主の方が有利となります。
しかし囲い込みをされていると、その分母が減りますので、必然的に売主は弱気になり、必要以上に大きな価格交渉に応じてしまうリスクがあります。
これこそが囲い込みが損をしやすいと言われている所以です。
-
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7、不動産売買契約の締結
商談がまとまったら次は不動産売買契約の締結となります。
不動産エージェントが法令上の制限や個別の調査をまとめ、重要事項説明書や不動産売買契約書を作成します。
そして関係者が一同に会し、説明を受け、それぞれの書類に売主と買主がそれぞれ署名捺印をしていきます。
(最近は新型コロナの影響もあり、持ち回りと言って、買主と売主が別々の場所で署名捺印をする形も増えました)
契約時には、買主から手付金と呼ばれる売買代金の一部に充当すべき金銭を受け取ります。
もし万が一、住宅ローンの本審査が否決になった場合は、白紙撤回となり、手付金は返却しなければいけません。
また解約をするときのペナルティーとして扱われます。
売主の状況によっては、不動産エージェントの判断で手付金を仲介業者預かりとすることもあります。
コラム⑦:収入印紙代を節約できる電子署名契約とは?
2022年5月の宅建業法改正により、不動産売買契約における電子署名契約が認められるようになりました。
それまでも重要事項説明書の説明をWeb上で行えるようにするWeb重説の社会実験も行われていましたが、この改正により本格的に運用ができるようになりました。
通常の紙による不動産売買契約書には印紙税と呼ばれる税金が、売買価格によってかかります(物件価格により数千円〜数万円)。
その税金は収入印紙を購入し、不動産売買契約書に添付する形で納税します。
しかし電子署名契約書では、この印紙代がかかりません。
また対面で行わなくても良いので、遠方に引っ越している時や、小さなお子様がいらっしゃるご家庭でも、自宅にいながら重要事項の説明と売買契約の締結を行うことができます。
希望すれば録画もできますので、後から言った言わないのトラブルを防ぐこともできます。
メリットが非常に多い制度ですが、問題は電子契約に対応できる業者がまだまだ少ないこと。
もし希望される際は、不動産エージェントに確認するようにしましょう。
コラム⑧:仲介手数料の支払いのタイミング
不動産エージェントに支払う売買仲介手数料ですが、法的には契約時に支払い債権が発生するとされています。
ですので、不動産エージェントは契約時に一括時に請求することもできます。
しかし、実際は会社によって対応が違い、契約時と決済時に半金ずつや、決済時に一括など様々なタイミングが存在します。
実際の支払いのタイミングについては、不動産エージェントや所属の仲介業者がどのようなルールなのか確認や相談をするようにしましょう。
8、住宅ローンの抵当権抹消手続き
住宅ローンが残っている場合、売買契約が終わったら抵当権抹消の手続きの準備をします。
具体的には住宅ローンを借りていた銀行へ連絡をし、書類の準備などをしてもらいます。
この書類がないと抵当権の抹消ができずに、引渡しができなくなってしまうので、引渡し予定日にもよりますが、早め早めに連絡をして準備をしておくようにしておきましょう。
9、引越しの準備や片付け
住宅ローンの本審査が承認され、ある程度引き渡しの期日が決まってきたら、引越しの準備や片付けをしていきます。
空き家の場合は、残置物の片付けを。
住んでいる場合は、引越しの準備や業者の手配をしていきます。
もし大きな家電や家具などの要らないもので、買主がもし欲しいというものがあれば置いていくこともできますので、契約時などに打ち合わせをしておくといいでしょう。
また契約後から引き渡しまでは、物件に傷をつけないようにするなど、善管注意義務がありますので、片付けの時に傷をつけてしまわないように注意しましょう。
10、物件の立ち会い確認
引越しが終わり荷物がない状態で、引き渡し前に状態の確認を買主立ち会いのもと、行います。
ケースバイケースになりますが、引き渡し前の立ち会いを行わないこともあります。
また引越し前でも、買主のリフォームによる業者の調査などの依頼があることもありますが、可能な限り協力してあげると良いでしょう。
11、決済・引き渡し
長い販売活動の仕上げになるのが、決済・引き渡しです。
物件の売買代金の残代金が精算され、物件の所有権を移転させます。
具体的には、銀行の応接室などに売主と買主、仲介業者や司法書士が集まって行います。
銀行の窓口がやっている時間帯(平日の9時〜15時までの間)に行われますので、お仕事の方は有給を取る必要があります。
決済の流れとしては、司法書士が所有権の移転登記に必要な書類を確認し、売主と買主のそれぞれの署名と捺印を必要書類に取り付けて、問題がなければ銀行に住宅ローンの実行を依頼します。
住宅ローンは一旦買主の口座に入金され、そこから売主の指定口座に入金される流れになります。
そして着金を確認できたら、領収書や鍵、図面などを買主に引き渡して決済は終了となります。
住宅ローンの抵当権抹消がある場合は、その後司法書士と一緒に借り入れをしていた銀行に赴き、抵当権抹消の書類を受取り、司法書士に預けて取引が終了となります。
これをもって全ての手続きが完了となります。
ただし、契約に定められている不適合期間中に、物件に問題があった場合は、もう少しだけ対応が必要となる場合があります。
12、確定申告
一戸建てを売却した翌年の2月16日〜3月15日までの間に確定申告を提出します。
もし1月に一戸建てを売却したとしたら1年以上間が開く事になりますので、忘れないように注意しましょう。
一戸建てを売却したときの税金や優遇制度の解説は以下の記事で詳しく解説していますので合わせてご参照ください。
-
https://houseclouver.jp/sale/hudousan-baikyaku-tax/
houseclouver.jp
一戸建て売却の流れと失敗しないための注意点
ここまで一戸建て売却の流れや注意点などについて解説してきました。
一通りの知識があるに越したことはありませんが、知っていることと出来ることは全く違うこともまた事実です。
ここに解説してきた注意点に気をつけながら失敗しないためには、やはり担当者選びが最も重要です。
あなたのできないことをサポートし、トラブルを回避して、少しでも高値で売れるように全力でサポートしてくれる頼もしい存在となります。
少なくても担当者選びを間違えなければ、大きく失敗するリスクは低いと言えるでしょう。
担当者選びは、全国の優良な担当者が探せるサイト「HOUSECLOUVER」をぜひご活用ください。
経験年数や実績、人柄など、現役のプロが面談をして、合格した担当者のみを掲載しています。
また掲載された後も、他の利用者による評価や、厳しい規則(囲い込みをしたら掲載停止など)を用いて運用している中立的なプラットフォームです。
-
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まとめ
step
1一戸建て売却の基本知識を身につける
- 損をしないためにも最低限の知識は身につけておく
- 経済状況や相場、ご自身の状況を把握する
step
2一戸建て売却の準備
- おおよその売却価格をインターネットで調べる
- 一戸建て売却時にリフォームは必要なし
- 住み替えの場合は買い先行か売り先行かを考える
- 書類等の準備をする
準備するべき書類
- 登記識別情報(権利証)
- 間取り図などの建築図面
- 固定資産税等がわかるもの
- 土地の測量図
- リフォームや修繕履歴の時期や内容がわかるもの
- 住宅ローン関係の資料
- 相続の場合は分割協議書
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3不動産仲介業者の担当者を探す
- 一戸建て売却成功の秘訣は担当者選び
- 全国の優良な担当者(不動産エージェント)が探せるサイト「HOUSECLOUVER」を活用する
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不動産売却や住み替えは、不動産エージェント探しから|ハウスクローバー
全国の優良な不動産エージェントが探せるサイトです。一定の基準と運営による面談をパスした担当者のみ掲載しています。また掲載後も囲い込みに対するペナルティーなど、消費者が損をすることがないように厳格なルー ...
houseclouver.net
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4一戸建ての販売価格を決める
- 話が上手すぎる高額査定に注意
- 売却にかけられる時間から売り出し価格を決める
- 買取業者のメリットが感じられるのであれば検討の価値あり
- インスペクションはできれば実施した方がいい
- 測量もできれば確定測量を進める
- 最低でも仮測量図は発行できるようにしておく
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5媒介契約書を締結する
- 専属専任媒介契約・専任媒介契約・一般媒介契約の違いを理解する
- おすすめの媒介契約は、囲い込み防止ができる一般媒介契約
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6販売活動開始
- 物件情報サイトやホームページでの記載を確認
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7お部屋の内覧
- お部屋を売れやすくするホームステージングの活用も費用対効果を考え検討する
- 住んでいるのであれば、引越しの時に捨てるであろうものは処分する
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8商談と価格交渉
- 買付申込書が入れば商談
- 価格交渉は担当者の腕の見せ所
- 囲い込みをされていた場合、値段を大幅に下げざるを得ない場合がある
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9売買契約の締結
- 収入印紙を節約できる電子署名による契約も検討してみる
- 手付金の受け取りと、仲介業者によっては仲介手数料の支払い
- 売り先行の場合は、住み替え先物件を探す
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10住宅ローンの抵当権抹消の手続き(住宅ローンの残債がある場合)
- 引渡し日に間に合うように余裕を持って早めに段取りをする
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11引越しの準備や片付け
- 余裕を持ったスケジュールで
- 大物家具などは買主にいらないかどうかを聞いてみる
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12物件の立ち会い確認
- やらないこともある
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13決済・引渡し
- 銀行の窓口がやっている平日日中に行われる
- 残代金が支払われ、司法書士手数料や仲介手数料を支払う
- 着金が確認できたら住宅ローンの抹消書類を司法書士と取りに聞く(住宅ローンの残債がある場合)
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14確定申告
- 売却した年の翌年2月16日から3月15日に行う
- 確定申告をするのは利益が出た場合のみ
- 住み替え先の住宅ローン減税を利用するか、3000万円の特別控除を利用するかを選ぶ
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宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー
ハウスクローバー株式会社の創業者兼CEO。また同時に、毎年全国から2〜300組ほどの不動産売買希望者の相談があり、実際の売買もサポートする現役の不動産エージェントでもある。業界歴は15年以上。多くの人から受ける相談内容と不動産業界の現状にギャップを感じ、住宅売買に必要なサービスと優良な不動産エージェントのネットワークを構築したプラットフォーム「HOUSECLOUVER」を企画運営している。自身が情報を発信しているYoutubeやブログは多くの住宅購入者にとって欠かせないバイブルとなっている。
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