不動産売却の基礎知識

売主が損をする、不動産仲介における囲い込みとは?原因と対策を現役のプロが伝授

不動産 売る

この記事を読むとわかること

  • 不動産売却における囲い込みとは
  • 実際どれくらい囲い込みは起こっているのか
  • 売主にとって囲い込みが損するメカニズム
  • 囲い込みはなぜ起こるか
  • 囲い込みを防ぐための3つのアイディア

不動産を売却するときに情報収集をしていて、「囲い込み」という言葉について見聞することがあるかもしれません。

「囲い込み」と聞いて良いイメージは湧かないものの、実際どんな行為で、それが売主にとってどんな影響があるのか。

実際の囲い込みの実態について、正しく理解されている方は業界の方でない限りなかなかいないのが現状ではないでしょうか?

そこで不動産業界に15年以上在籍し、さらに現在でも現役として活動をする筆者が、囲い込みの実態や、原因から対策まで詳しく解説をしていきます。

これから不動産を売ろうと考えている人は、損をしないためにもぜひ最後までご覧ください。

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不動産売却における囲い込みとは

囲い込み 不動産

不動産仲介業者は、売主から依頼を受けた売り物件については、レインズと呼ばれる不動産業者だけがアクセスできる物件データベースシステムに掲載し、他の不動産業者からも広く買主候補を募集し、少しでも高く売れるように努めなければいけないという、売主に対する義務があります。

そして囲い込みとは、「レインズに掲載し、他の不動産業者からも広く買主候補を募集する」という行為を、ある理由のために売り物件を自ら囲い込んで、レインズに掲載しなかったり、他の不動産業者からの紹介依頼を断るなど、物件を「囲い込む」行為から囲い込みと呼ばれています。

売主からすれば、より多くの買主候補を募った方が高く売れる可能性が高まりますので、このような囲い込みは売主にとって最悪の背任行為です。

法律で取り締まっていないの?

囲い込み自体は、レインズの利用規定にて禁止されていますが、宅建業法で禁止されているものでもなく、罰則規定というものがありません。

やってはいけないけど、やったところで業者としてペナルティがないというのが現状です。

不動産取引市場が最も発達しているアメリカでは、囲い込みが発覚したら一発アウトなほど、厳しい規定があるのと比較するのと、かなり違いがあります。

囲い込みが発覚した場合は

ただし実際に囲い込みが発覚した場合は、その不動産業者が加盟している協会か、免許を発行している主体である国土交通省や各都道府県の不動産業課に連絡しましょう。

どちらも是正の連絡は宅建業者に行ってくれます。

特に免許の発行をしている国土交通省や各都道府県の不動産業課は行政指導を出すこともできますので、抑止効果としては高いと思います。

囲い込みが社会問題になったきっかけ

囲い込み自体は、かなり古くから不動産業界では当たり前のように存在していましたが、社会問題としてクローズアップされたのは、とある報道番組の特集がきっかけです。

ある大手不動産仲介業者の元社員による告発がきっかけでした。

実際のそのときの特集がこちらです。

この動画を見ていただくと、囲い込みがどんなふうに行われているのかのイメージがかなり湧きます。

この特集がきっかけとして、囲い込みに対する取り組みが始まりました。

その取り組みの一環として始まったのが、レインズ登録の確認制度です。

不動産仲介業者に依頼すると、レインズに登録した際にIDとパスワードが発行されます。

このIDとパスワードを利用して、レインズに掲載されているか、販売状況が正確に反映されているか(販売中や申込ありなど)を確認することができるようになりました。

しかし一般の方に周知されているとは言い難く、実際に売主にIDとパスワードを発行しない業者も多く、浸透しているとは言い難い状況です。

もしあなたが不動産業者に依頼されたときは、必ずIDとパスワードを受け取るようにしてください。

囲い込みの現在の実態は?

社会問題となったこともあり、囲い込みは減ったのでしょうか。

残念ながら、まだまだ囲い込みは無くなってはいません。

ひと昔のように、そもそもレインズに掲載しないという、あからさまな業法違反をしている業者もいますが、コンプライアンスの問題もあり、大手ではあからさまな囲い込みは減ってはいます。

それでも、不動産業者間の話では、手法がより巧妙になってきているということです。

なぜ囲い込みは無くならないのか

これだけ社会問題になり、コンプライアンス的なリスクもある中で、なぜ囲い込みが無くならないのか。

それは日本の不動産業界特有の「両手仲介」という仕組みがあります。

両手仲介とは、売主と買主の双方の仲介業務を行うことを言います。

囲い込み 不動産

イラストを見ていただくとわかりやすいと思いますが、通常の仲介はこの2パターンで、売主から依頼を受けた業者が直接買主を見つけた方(両手仲介)が、他の業者が買主を連れてきたケース(片手仲介)と比べて収入が単純に倍になります。

この仕組みがあるからこそ、両手仲介が無くならないのです。

ちなみにアメリカでは、少しでも高く売りたい売主と、少しでも安く買いたい買主の双方の仲介をすることは、利益相反となるため、そもそも両手仲介が法律で禁止されています。

売主にとって囲い込みはどのように損失につながるのか

囲い込み 不動産

ここまでに、囲い込みが発生するメカニズムや、囲い込みが売主にとって背任行為であるということを解説してきましたが、なんとなく理解はできても、実際にどのように損失につながるのか。

ここからは様々なケースを紹介しながら、イメージしやすいように掘り下げていきます。

問い合わせや内覧の件数が変わる

まず自社だけの集客と、他の不動産会社のネットワークを利用した集客でどれくらい違いがあるのでしょうか。

明確なデータがあるわけではありませんが、私は不動産業者の経営者として12年、サラリーマンとして3年、不動産業界にいますが、その過去の実績データで見ると、自社の集客で成約したのは2割くらいです。

(当たり前ですが、私は自身の会社も含め一切囲い込みはしていないので、フラットなデータだと思います)

残りの8割は他の業者さんが連れてきた買主で成約しています。

ちなみに自社の集客は、一般的によく利用されるポータルサイトは全て掲載していました。

それでも他の業者さんが連れてきた買主で多く成約しています。

また大手であれば買主は多く集まると考える方もいらっしゃるかもしれませんが、不動産業界は従業員数1〜4人規模の会社が86%を占めています。

9人までの会社も含めると全体の95%を占めます。

つまりほとんどが中小零細企業です。

参照「(公)不動産流通推進センター 2023不動産統計集」

先ほどの私が経営していた会社での話になりますが、実際に成約した8割の他業者のうち、大手の割合は1〜2割くらいです。

大手よりも地場の中小零細業者さんが連れてきた買主で成約した件数の方が圧倒的に多いです。

つまり囲い込みをされてしまうと、自社集客にこだわりポータルサイトに全部掲載しても、それがたとえ大手だったとしても明らかに問い合わせや内覧は減ります

実際の売却シーンを想像してみましょう

それではここからは、どのように損をしやすい状況が発生していくのか、あなたもご自身が売主になった気持ちで読み進めていってください。

まず物件を売り出したときに、囲い込みをせずにオープンに集客をした場合、売却を始めて1ヶ月目の内覧数が10件でした。

一方で囲い込みをされている場合、売却を始めて1ヶ月目の内覧数が5件でした。

どちらが高く売れる気がしますか?

この状態で仮に5000万円で販売をしていた物件に4500万円で買付(申込)が入りました。

さて、どう返事をしますか?

1ヶ月で10件内覧が入っていれば、現在検討されている方も何名かいる状況です。

また今後も内覧はそれなりに入ってくるでしょう。

一方で、1ヶ月で内覧が5件だった場合。

現在検討されているかもいるかもしれませんが、人数的には少し心許ないでしょう。

どちらが強気に交渉ができると思いますか?

前者の方がもちろん強気で交渉できます。

現状を伝えれば、本当に物件が欲しい買主であれば向こうのほうがこちらの交渉金額を飲まざるを得ない状況となります。

後者の場合は、買主の方が優勢ですので、全額を受け入れないとしても、泣く泣く大きな交渉金額を飲んでしまうかもしれません。

しかもここに不動産業者の思惑がもう一つ見え隠れするのです。

不動産業者は売却価格が高く売れることよりも両手の方が儲かる

ここがポイントになるのですが、囲い込みをされたケースでは、不動産業者も買主と一緒になって価格交渉をまとめようとしてきます。

ここで両手仲介のイラストを再掲します。

囲い込み 不動産

このイラストを見て実際に計算をしてみるとわかることがあります。

例えば、仲介業者Aからしてみると、片手仲介のパターンで5000万円で売却できた時の仲介手数料は156万円になります。

しかし、両手仲介のパターンで4500万円で売却した時の仲介手数料は、売主からもらう分は141万円と5000万円で売却した時と比べると減りますが、買主からも141万がもらえるので、片手仲介のパターンよりも仲介業者Aの収入は多くなります。

オープンな集客をしていれば、たまたま自社で集客した買主が購入すればラッキーくらいの感覚で、基本的には他者が連れてくる買主候補の方が多いので、片手仲介がベースとなります。

片手仲介がベースであれば、純粋に高く買ってもらえるように交渉するだけです。

そもそも売主から依頼を受けているので、少しでも高く売るという本来の業務なので当然と言えば当然なのですが。

このような仕組みから、囲い込みがどのように売主の損失につながるか分かりますでしょうか?

仲介手数料無料や半額はかえって損になることも

囲い込み 不動産

最近見かけることも多いと思いますが、仲介手数料無料や半額を謳っている業者は、レインズの規定やコンプライアンスに抵触しないよう、合法的な囲い込みを提案してきます。

合法的な囲い込みとは、媒介契約の種類でレインズに掲載義務のない「一般媒介契約」を利用することです。

囲い込みで宅建業法違反になるのは、レインズに掲載している物件の紹介拒否をした場合ですので、レインズ掲載の義務がなければ違法ではありません。

少しでも諸費用が安くなるという魅了を利用して、仲介手数料は買主から取るという手法で集客をしますが、ここまで解説してきた通り、このやり方はいくら仲介手数料が安くても、総額ではかえって損する可能性も高いということを覚えておきましょう。

不動産売却で囲い込みを防ぐための3つのアイディア

囲い込み 不動産

それでは最後に不動産売却で囲い込みを防ぎ、あなたの利益を守るためにどのようにすればいいのか。

そのアイディアを3つほどご紹介します。

1、一般媒介契約で依頼をする

一つ目のアイディアは「一般媒介契約」を利用するです。

先ほど、一般媒介契約にはレインズの掲載義務がないと説明しましたが、他の媒介契約にはない複数者への依頼ができるという特徴があります。

以下は媒介契約の内容と比較表です。

複数社との契約売主が見つけた買主との取引レインズへの登録義務売主への報告義務契約有効期間
専属専任媒介契約××5営業日以内1週間に1回以上3ヶ月以内
専任媒介契約×7営業日以内2週間に1回以上3ヶ月以内
一般媒介契約義務なし任意3ヶ月以内

一般媒介契約で複数者に依頼するということは、言い方は悪いですが「業者間で競争をしてもらう」ということです。

いくらレインズへの掲載義務がないとはいえ、他社との競争があるので、義務がなくてもレインズにはまず掲載します。

囲い込みをしても他社に契約が流れるだけなので、囲い込みの余地すらありません。

業者の中には、「専任でないと引き受けない」という業者もいます。

個人的には、そこは売主の自由なので、そういう業者は断ってもいいと思います。

また「一般だと本気にならない」と言う方もいますが、そんなことはありません。

売り物件を一般媒介契約で受けるとしても 不動産業者からしてみると、成約の角度が高い物件であることには変わりないので、なんだかんだでしっかりやります。

私は特に買いの仲介が得意でしたので、いろんな売主側の業者とやり取りをしていますが、一般媒介契約の方が動きがいいと思うことは多々ありました。

専任を預けるなら「この人なら」という担当者に

次は、専任媒介を預けるとしたらの解説です。

囲い込みをしない。さらにスキルと経験も文句なし!と信頼できるのであれば、私は専任契約でも構わないと思います。

特に「住み替え」の場合は、タイミングがものをいうので、専任媒介の方がうまく行きやすいです。

また住み替えの場合は、購入と売却が同時に進んでいくのが理想的なので、業者の立場から考えても囲い込みは発生しにくいと考えています。

いずれにせよ、担当者選びが肝要となりますので、業者や担当者選びについてまとめた記事お併せてご参照ください。

不動産売却 仲介業者の選び方のポイントや注意点を解説 | 不動産を売るならハウスクローバーのエージェントで
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不動産売却時の仲介業者や担当者の選び方を、現役のプロが理由や事例も含め解説しています。これから不動産売却をお考えの方は事前に知っておくべき知識となりますので、ぜひご参照ください。

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また住み替えについてもまとめた記事がありますので、住み替えをお考えの方はこちらも併せてご参照ください。

住み替えの買い先行と売り先行 タイミングとそれぞれのローン対策 | 不動産を売るならハウスクローバーのエージェントで
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家を住みかえる時の売買のタイミングについて徹底解説しました。売り先行や買い先行のそれぞれに向く人やローンの対応策、そしてメリット・デメリットについてまとめました。

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自社でポータルサイト掲載禁止条項を付ける

最後のアイディアですが、これを最後に持ってきたのは、不動産業者に見られてしまうと非難轟々となりそうだったので、あえて目につきにくい最後に持ってきました。

しかしとても強力な方法だと考えています。

不動産業界に一切の忖度なしの方法です。

その内容ですが、媒介契約書の特約に「甲が物件情報サイトに本契約の対象物件を掲載することを禁止する。物件情報サイトへの掲載は他業者に甲が依頼することを乙は承認する」と言う条文を載せるというものです。

(媒介契約書の雛形では甲が不動産業者、乙が消費者となっているものが多いです)

あえて「両手仲介禁止」としなかったのは、自社のお客さんにも紹介することもあるので、それまで制限してしまうのは逆に買主候補を狭めてしまう可能性があるからです。

「自社でポータルサイトに掲載しなかったらどうやって集客するの?」と思うかもしれませんが、それについては問題ありません。

不動産業者の中には、いろんな不動産業者が売りに出している物件をレインズで見つけて、ポータルサイトに掲載させて欲しいと依頼してくる業者がたくさんいますので(大手も含む)、それらの業者にお任せすれば大丈夫です。

こうすることで、先ほどのような囲い込みのメカニズムを排除することができます。

また媒介契約にあたっても、消費者にとって不利益に当たる内容とはなりませんので、条文は有効なものとして認められます。

もし他の業者に依頼をしないのであれば、解約して構いません。

この方法であれば、専任媒介契約であっても囲い込みが起こるメカニズムを排除することができます。

ただこの方法は、斬新すぎて受け入れてもらえない業者もあると思います。

しかし不動産業界で一番強いのは「売主」です。

家を購入するときは不動産仲介業者に嫌われるのは避けるべきですが、売主の立場であるときは多少嫌われても構いません。

それくらい売主という立場は強いのです。

あなたにとってどれが最適かをしっかり検討してみましょう。

不動産売却時の囲い込みを防いで損をしないように

囲い込み 不動産

この業界に長くいるからこそ分かりますが、この業界には残念ながら消費者よりも業者利益や都合が優先されてしまうことが多々あります。

だからこそ、担当者を選ぶ必要性も高まってきていますし、基本的な知識を持つことはあなたの利益を守ることにもつながります。

ハウスクローバーでは全国の優良な担当者を探すことができるプラットフォームとなっておりますので、不動産売却をお考えの際はぜひご利用を検討してみてください。

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