2025年から、国土交通省が不動産仲介業者の物件「囲い込み」を処分対象にすると公表しました。
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国土交通省、不動産仲介業者の物件「囲い込み」を処分対象に - 日本経済新聞
不動産仲介業者による「囲い込み」が後を絶たない。売却依頼のあった物件を他社に紹介せず、売り手と買い手の双方から仲介手数料を取ろうとする行為だ。国土交通省は宅地建物取引業法の通達を改正し、2025年から ...
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私から言わせてもえらば、「ようやくか」という印象です。
物件の「囲い込み」とは?
物件の囲い込みとは、不動産仲介業者が売主から預かった物件を、他の不動産仲介業者には紹介させずに、自社で両手仲介を狙う行為のことを言います。
最もポピュラーな取引は、下のイラストのように、売主と買主にそれぞれ不動産仲介業者がおり、成約した際は、それぞれの顧客から仲介手数料が支払われます。
これを「片手仲介(仲介手数料が片方からもらえる取引)」や、「共同仲介(2社で共同して仲介を行う取引)」などと呼んだりしています。
一歩で両手仲介は下のようなイラストになります。
一社で売主・買主のそれぞれの仲介を行うことから「両手仲介」と呼ばれています。
片手仲介と比較して、両手仲介は一度の取引で、もらえる仲介手数料が倍になることから、売り物件を預かった不動産仲介業者は、他の不動産仲介業者の紹介を拒否し、自社に直接問い合わせをしにくる顧客にしか紹介をしないようにします。
これを「囲い込み」と言います。
さらに詳しく
日本の不動産業界は、「売主重視・買主軽視」とされてきました。
これは、売主を押さえた方が確実に儲かるという、これまでの悪しき慣習から出来上がった風習です。
囲い込みのデメリット
囲い込みは、不動産仲介業者にとっては利益がある取引となりますが、顧客からしてみれば、良いことは何一つない、最悪の行為です。
売主にとっては、より高く早く売れる物件であっても、自社の顧客にしか紹介しないため、母数が減ることから、価格も安くなることが多く、時間もかかります。
買主にとっては、売主の味方から直接購入しなければいけなくなるので、人が死んだなどの法令上、告知が必要な内容については教えてくれますが、将来の資産価値のリスクや管理上のリスクなど、言わなくても良いことは教えてくれません。
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元々、不動産業界では当たり前のように行われていた行為ですが、8年ほど前にワイドショーで取り上げられ問題が表面化しました。
これをきっかけに一時的に囲い込みは減少したように見えましたが、まだまだ不動産仲介業者による囲い込みは平然と行われています。
そこでようやく国土交通省が動いた、というのが今回のニュースです。
レインズの禁止規定と、今回の処分は何が違うのか?
これまでにも、レインズの規定で、他の業者への紹介拒否を明確に禁止していました。
レインズとは?
レインズとは、全国の売り物件情報が掲載されている、不動産業者だけがアクセスできる物件データベースシステムです。
全国の物件にアクセスできることから、売主の物件情報がより広く取引されるように作られたものです。
レインズの規定と、今回の国土交通省の処分とでは、何が違うのか?
まだ国土交通省の処分がどんなものになるか不明ですが、私の予想では(というよりも希望)、宅建業者の処分歴に掲載されるのではないかというものです。
宅建業者を管理している国土交通省では、宅建業者の処分歴を公表しています。
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不動産の売買・管理 宅地建物取引業者 - 国土交通省 ネガティブ情報等検索サイト
www.mlit.go.jp
記事と同じ「処分」という言葉が使われていることから、この処分歴の対象になるのではないかというのが、私の予想です。
「是正の指示処分」ということで、一発で処分となるわけではないですが、累積で何らかの処分が下るというのは、不動産業者からすると結構恐怖です。
この処分歴に載るということは、不動産会社からすると、死刑宣告とまではいきませんが、業務に支障が出ることは間違いありません。
一方で、これまでのレインズの規定は、罰則規定もなく、ルールも形骸化されていました。
実際私もお客様から相談を受けた物件が、囲い込み物件であったときに、宅建協会や東京都の不動産業課に相談しましたが、「売主からの訴えでないと何もできない」とのことで、レインズの罰則規定が、いかに形だけかを身に染みて実感した経験があります。
なので、今回の国土交通省が、囲い込みの確認ができたら「是正の指示処分」の対象となることから、どれくらい効果があるのか、期待したいところです。
少なくともレインズの規定のような、形骸化だけにはなってほしくないと願っています。
「是正の指示処分」でもまだまだ甘い日本
今回の件で、ようやく国土交通省が動いたのですが、世界的に見ればまだまだ甘いです。
例えば、世界で最も不動産取引市場が発達しているアメリカでは、そもそも両手仲介そのものが法律で禁止されている州が大半で、禁止されていない州でも、囲い込みをしたら免許停止処分などの重い処罰が下されます。
それに比べれば、日本はまだまだ甘いというのが現実です。
「囲い込み」は無くなるのか?
最後に、今回の件で、囲い込みは無くなるのでしょうか?
正直、私としては、一定の抑止力にはなるものの、効果は限定的なような気がしています。
というのも、事実の確認がレインズの掲載状況によるもので、囲い込みの手法は年々、巧妙化してきています。
また一般媒介契約といったレインズへの掲載義務がない形態で、一社だけに依頼している実質、専任と変わらないのに、合法的に囲い込みをしているケースもあります。
また、今回の規定はレインズに掲載されている物件を対象としており、そもそもレインズに掲載義務があるのに、そもそも掲載していない業者もいます。
そのような中で、一体どこまで「囲い込み」抑制の効果があるかは、疑問に感じているところです。
実際、先掲した動画のときにも、自民党議員が処分の厳罰化について言及していましたが、そこまでの厳しい処分規定にはならず、形骸化しています。
(国土交通省の大臣ポストは、自公政権になってから、ずっと公明党の独占ポストなので、何か政治的な絡みがあるのでしょうかね、、、)
何にせよ、囲い込みは大手も多く行っていて、大手だから安心というのは、不動産業界では通用しません。
不動産売買は、どこの業者も大切ですが、どの担当者で取引をするかが、とても重要なポイントになります。
私が企画運営している「ハウスクローバー」では、全国の優良な担当者が探せます。
またサイトの運用規定で、囲い込みなどの消費者にとって不利益となるような行為を厳しく禁止しています。
不動産売買をお考えの方は、このような仕組みを活用していただくと良いのではないかと思います。
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