この記事で分かること
- 重要事項説明(重説)とは何か、いつおこなわれるか
- 契約前に必ず確認したい7つのポイント
- 売買契約書と重要事項説明書の違い
- 契約当日に慌てないための準備
不動産の購入で、いちばん緊張する瞬間はどこだと思いますか。
物件が決まったときでも、住宅ローンが通ったときでもなく、私は「契約」の場面だと考えています。契約は法律行為なので、一度サインをすると、そう簡単には後戻りできません。だからこそ、その直前におこなわれる「重要事項説明」を、どれだけ落ち着いて読めるかが、その後の満足度を大きく左右します。
私はこれまで業界で17年、年間300組以上のご相談に向き合ってきました。その経験から言えるのは、契約でつまずく方の多くが、重要事項説明を「難しそうだから」と読み流してしまっているということです。
この記事では、中古住宅の売買契約を例に、重要事項説明のどこを見ればいいのかを、プロが実際に確認しているポイントに絞ってお伝えします。専門用語はできるだけかみ砕いて説明しますので、契約の前に一度目を通しておいてください。
重要事項説明とは何か
重要事項説明とは、宅地建物取引業法という法律の第35条で定められた、不動産会社の義務です。
契約が成立する前に、宅地建物取引士(宅建士)が、書面を交付したうえで、その物件に関する重要な事柄を買主に説明します。口頭だけで済ませることはできず、必ず書面が用意されます。この書面を「重要事項説明書」、現場では略して「重説(じゅうせつ)」と呼びます。
ポイントは、重要事項説明が「契約の前」におこなわれるという点です。つまり、ここで説明された内容に納得できなければ、契約をしないという選択ができます。重説は、買主が最後に立ち止まって考えるための、大切な機会だと言えます。
なお、2022年5月からは制度が新しくなり、重要事項説明書は電子データで受け取ることも認められるようになりました。あわせて押印も不要になっています。オンラインで説明を受ける「IT重説」も広がっていますので、来店が難しい方は担当者に相談してみるとよいでしょう。
プロが必ず確認する重要事項説明の7つのポイント
重要事項説明書には多くの項目が並びますが、買主として特に注意して読んでほしいのは、次の7つです。
1. 登記された権利(誰の、どんな権利がついているか)
まず確認したいのが、その不動産にどんな権利がついているかです。
登記簿には、所有者は誰か、住宅ローンの担保である抵当権がついていないか、差押えなどがないか、といった情報が記録されています。通常は、決済のときに売主側のローンが完済され、抵当権も抹消されますが、その段取りが説明のなかで明確になっているかを確認してください。
2. 法令上の制限(その土地で何ができるか)
次に、都市計画法や建築基準法など、法律による制限です。
たとえば、いま建っている建物を将来建て替えられるのか、増改築に制限はないか、といった点は資産価値に直結します。中古で気に入って買ったのに、いざ建て替えようとしたら思ったような家が建てられない、というのは避けたいところです。
3. 飲用水・電気・ガスなどのインフラと私道負担
水道・電気・ガス・排水といった生活インフラが、どのように引き込まれているかも重要です。
特に戸建てや土地では、前面道路が「私道」で、その一部を負担する必要があるケースがあります。私道負担があると、通行や掘削(インフラ工事のために道路を掘ること)に他の所有者の承諾が要る場合もあるので、内容をよく確認してください。
4. 建物状況調査(インスペクション)の結果
中古住宅で私が特に大切だと考えているのが、建物状況調査、いわゆるインスペクションの結果です。
2018年の法改正で、中古住宅の取引では、建物状況調査を実施したかどうか、実施した場合はその結果の概要を、重要事項説明で伝えることが義務づけられました。建物の傷みや不具合を、専門家がどう評価したのかが分かる情報です。調査がおこなわれている場合は、その結果に必ず目を通しておきましょう。
5. 手付金・契約解除・違約金の条件
契約時に支払う「手付金」の扱いも、しっかり確認したい項目です。
一般的な売買契約では、手付金は「解約手付」として扱われます。これは、相手が契約の履行に着手するまでの間であれば、買主は手付金を放棄することで、売主は手付金の倍額を返すことで、契約を解除できるという仕組みです。加えて、どのような場合に契約を解除できるのか、違約金はいくらに設定されているのか、といった条件も、トラブルを防ぐために事前に把握しておいてください。
6. 住宅ローンが成立しないときの措置(ローン特約)
住宅ローンを利用する方にとって、これは特に重要です。
「ローン特約(住宅ローン特約)」とは、予定していた住宅ローンの審査が通らなかった場合に、契約を白紙に戻し、支払った手付金を返してもらえるという取り決めです。この特約が付いているか、期限はいつまでか、対象となる金融機関やローンの金額はどう書かれているかを確認しておけば、万が一のときにも安心です。
7. 契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)
最後に、引き渡し後に見つかった不具合を、誰がどこまで負担するのかという取り決めです。
これは、以前は「瑕疵(かし)担保責任」と呼ばれていましたが、2020年4月の民法改正で「契約不適合責任」という名称に変わりました。契約の内容と実際の物件が食い違っていた場合に、売主に修補や代金の減額などを求められる、という考え方です。中古住宅では、この責任を負う期間や範囲が契約ごとに異なるため、重要事項説明と契約書の両方で内容を確認してください。
売買契約書と重要事項説明書は別のもの
ここで、ひとつ整理しておきたいことがあります。
「重要事項説明書」と「売買契約書」は、別の書面です。重要事項説明は契約の前におこなわれ、物件そのものの情報や取引の条件を説明するものです。一方、売買契約書は、これも宅地建物取引業法(第37条)で交付が義務づけられた書面で、売主と買主が実際に取り交わす契約そのものを記したものです。
流れとしては、まず重要事項説明を受けて内容を理解し、納得したうえで売買契約を結ぶ、という順番になります。重説で気になる点があれば、契約書にサインをする前に、遠慮なく質問してください。ここで立ち止まることは、決して失礼なことではありません。
契約当日に慌てないための準備
私が普段お客様にお伝えしているのは、「重要事項説明書は、できれば当日ではなく、事前に受け取って読んでおきましょう」ということです。
分厚い書面をその場で初めて見て、一度で理解するのは、プロでも簡単ではありません。事前に一度目を通し、分からない言葉や気になる条件に印をつけておけば、当日は疑問点の確認に集中できます。信頼できる担当者であれば、事前の共有をお願いすれば快く応じてくれるはずです。逆に、それを渋るような相手であれば、少し慎重になったほうがいいかもしれません。
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契約前チェックリスト
契約の前に、次の項目を確認できているか、振り返ってみてください。
- 登記された権利を確認し、抵当権の抹消の段取りが明確になっている
- 法令上の制限を確認し、建て替えや増改築の可否を把握している
- インフラの引き込み状況と、私道負担の有無を確認している
- 建物状況調査(インスペクション)の結果に目を通している
- 手付金の額と、契約解除・違約金の条件を理解している
- 住宅ローン特約の有無と、その期限を確認している
- 契約不適合責任の期間と範囲を、契約書とあわせて確認している
- 重要事項説明書を、契約当日より前に受け取って読んでいる
まとめ
不動産の売買契約は、契約当日そのものよりも、その前の重要事項説明をどう読むかで、満足度が大きく変わります。
重説には難しい言葉が並びますが、買主として本当に見ておきたいのは、今回お伝えした7つのポイントに絞れます。権利関係、法令上の制限、インフラと私道、インスペクションの結果、手付金と解除の条件、ローン特約、そして契約不適合責任です。この7つを押さえておけば、契約の場でも落ち着いて判断できます。
そして何より、分からないことを気軽に聞ける担当者がそばにいることが、いちばんの安心につながります。ハウスクローバーは、物件ではなく「担当者」から探せるプラットフォームです。契約前の細かな不安まで一緒に確認してくれるエージェントを、無料会員登録から探してみてください。
よくある質問
Q. 重要事項説明は、契約と同じ日に受けても大丈夫ですか。
法律上は同じ日でも問題ありませんが、私は事前に書面を受け取って読んでおくことをおすすめしています。当日初めて分厚い書面を読むと、内容を十分に理解しないままサインをしてしまいがちだからです。
Q. 重要事項説明は誰がしてくれるのですか。
宅地建物取引士(宅建士)という国家資格を持った人が説明します。説明の際には宅建士証の提示があります。
Q. オンラインで重要事項説明を受けることはできますか。
できます。「IT重説」と呼ばれ、テレビ会議などを使ってオンラインで説明を受けられます。2022年からは重要事項説明書を電子データで受け取ることも認められています。来店が難しい場合は担当者に相談してみてください。
Q. 住宅ローンが通らなかったら、手付金は戻ってきますか。
「ローン特約(住宅ローン特約)」が付いていれば、審査が通らなかった場合に契約を白紙に戻し、手付金は返還されます。特約の有無と期限は、重要事項説明で必ず確認してください。
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