「もし自分の家族のために中古マンションを選ぶとしたら、プロはどんな条件で選ぶのか」——先日、こんな質問を受けました。とても面白い質問だと思います。
私は業界歴17年、これまで多くのお客様に物件をご紹介してきました。お客様にご紹介するときも「自分でも住めるかどうか」という視点は必ず持つようにしていますが、最終的にはお客様の価値観が優先されます。一方で、両親や妻、子どものために選ぶとなれば、そこには私自身の価値観がストレートに反映されます。
この記事では、私が家族のために中古マンションを選ぶなら絶対に外さない7つの条件を解説します。そしてこの7つは、私の家族に限らず、中古マンションを買うすべての方に共通して大切なポイントです。「どこは譲ってはいけなくて、どこは妥協してよいのか」という優先順位の付け方まで含めてお伝えします。
■ この記事で分かること
- プロが家族のために中古マンションを選ぶときの基準は「安心」と「安全」であること
- 絶対に外さない7つの条件(駅からの距離・新耐震基準・管理組合・修繕積立金・自己居住率・災害リスク・流動性)
- 賃貸化率(自己居住率)を物件情報サイトで自分で調べる方法
- 「ずっと住むつもりなら資産価値は関係ない」が危険な理由
- 7つの条件以外は妥協してよいという、プロの優先順位の付け方
- 7つをすべて自分で確認するのが難しい場合の現実的な解決策
この記事は動画でもご覧になれます。
結論|家族のために選ぶ基準は「安心」と「安全」
結論からお伝えすると、私が家族のために中古マンションを選ぶなら、基準は「安心」と「安全」の2つです。この2つを具体的な条件に落とし込むと、次の7つになります。
- 駅からの距離を「表示」ではなく「実際に歩いて」確かめる
- 新耐震基準以降の建物を選ぶ
- 管理組合がしっかり機能している
- 修繕積立金が健全に回っている
- 自己居住率が高い
- 災害リスクが低いエリアにある
- 流動性(売りたいときに売れる力)がある
この7つは「安くてお得な物件を見つけるテクニック」ではありません。家族に長く、安心して住み続けてほしいと考えたときに、外してはいけない最低ラインです。ここから1つずつ解説していきます。
条件1:駅からの距離は「表示」ではなく「実際に歩いて」確かめる
1つ目は立地、特に駅からの距離です。ただし物件資料に書いてある「徒歩◯分」という表示を、そのまま信用してはいけません。
不動産広告の徒歩表示は「道路距離80mにつき1分」という定義上の測り方で計算されています。信号待ちや坂道は考慮されていないため、徒歩7分と書いてあっても、実際に歩いてみると7分では着かないことがよくあります。
家族のために選ぶなら、私は数字よりも「駅から物件までの道がどういう環境か」を重視します。駅前の雰囲気はどうか。夜に帰ってくる道はちゃんと明るいか。子どもに通ってほしくないような場所を通らずに済むか。こうした安全面は、物件資料の数字からは絶対に読み取れません。
確認の方法はシンプルです。まずGoogleマップで駅から物件までの経路と所要時間を測ってみる。そのうえで、実際に自分の足で歩いてみる。買い物帰りの荷物を持って歩くことや、ベビーカーを押して歩くことまで想定してみると、その立地の本当の住みやすさが見えてきます。
条件2:新耐震基準以降の建物を選ぶ
2つ目は、新耐震基準以降の建物であることです。
新耐震基準とは、1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認を受けた建物に適用されている基準です。旧耐震基準が「震度5強程度の地震で倒壊しない」ことを想定していたのに対し、新耐震基準は「震度6強〜7程度の地震でも倒壊・崩壊しない」ことを求めています(出典:国土交通省)。想定している地震の大きさがそもそも違うのです。
マンションは戸建てに比べれば、よほどの地震でない限り倒壊のリスクは高くありません。それでも私が新耐震にこだわるのは、耐震性だけの問題ではないからです。
旧耐震の時代のマンションはコンクリートの厚みが薄いものが多く、これは音の問題につながりやすい要素です。さらに、建物の寿命にも関わってきます。マンションは内部の鉄筋が錆びると寿命を迎えると言われていますが、鉄筋を覆っているコンクリートはアルカリ性で、鉄筋の酸化を防いでいます。このコンクリートが酸性雨などの影響で少しずつ中性化していき、中性化が鉄筋まで届くと、鉄筋を錆びから守れなくなります。コンクリートに厚みがあるほど、この進行に対する余裕があるということです。
たとえば自分の両親に中古マンションをすすめる場面を考えてみてください。老後になってから建て替えの話が持ち上がり、お金もなくてどうすることもできない——そんな状況になったら困ります。地震への安全はもちろん、長く快適に住み続けられるという安心のためにも、新耐震基準以降であることは外せない条件です。
条件3:管理組合がしっかり機能している
3つ目は、管理組合がしっかり機能しているかどうかです。
マンションは結局のところ共同生活です。管理組合の運営がどうかで住みやすさは大きく変わりますし、建物の維持保全を通じて、資産価値にも直結します。「マンションは管理を買え」という格言があるくらい、ここは私が普段からずっとお伝えしているポイントです。
では、管理組合が機能しているかどうかをどう確かめるか。購入前に、管理会社や売主から取り寄せられる書類の中に「総会議事録」があります。総会でどんな議題が出て、どんな議論がされ、何が決まっているのか。議事録を読み解くと、そのマンションの管理組合が実際に機能しているかどうかが見えてきます。
正直なところ、議事録を取り寄せて読み解くのは、プロでないとなかなか難しい部分です。ただ、外からは見えないところだからこそ、買う前にしっかり見ておきたいポイントです。私自身、家族のために選ぶなら必ずここを調査しますし、お客様の物件でも同じように調べたうえでご提案しています。
条件4:修繕積立金が健全に回っている
4つ目は、修繕積立金が健全に回っているかどうかです。
ここで言う「健全」とは、管理組合の財務、つまりお財布事情のことです。適切なタイミングで必要な修繕工事ができるだけのお金が積み上がっていて、なおかつ将来、積立金が急激に値上がりする心配が小さい状態を指します。
少し前に、大規模修繕工事をめぐって施工会社の談合が行われ、管理会社へのキックバックが常態化しているというニュースが報じられました。業界の中にいる人間からすると以前から知られていた話ですが、こうした構図の犠牲になっている管理組合は実際にたくさんあります。そういうマンションを買ってしまうと、積立金はいつか必ず足りなくなります。
修繕積立金は、住宅ローンとは別に毎月かかり続けるランニングコストです。高くなれば生活を圧迫しますし、最悪の場合、お金が足りないのに住民の反対で値上げの決議も取れず、必要な工事がどんどん遅れていくという悪循環に陥ります。そうなると建物の見た目も傷み、劣化が進み、長く住むことが難しくなっていきます。
長期修繕計画と積立金の残高、値上げの予定、過去の工事履歴。この条件も管理組合の健全性と直結するところで、外すと住んでから痛い思いをします。私はお客様の物件でも必ずここを調査したうえで、「買ってもいい」「これはやめた方がいい」をお伝えしています。
条件5:自己居住率が高い
5つ目は、自己居住率が高いマンションであることです。
マンションの部屋の持ち主には、自分で住むために買った人と、部屋を誰かに貸して運用する投資目的の人の2種類がいます。賃貸に出されている部屋の割合(賃貸化率)が高いマンションは、住人の入れ替わりが激しく、ゴミ出しや騒音といったトラブルが起こりやすい傾向があります。もちろん全員がそうではありませんが、借りて住んでいる人は「ずっとここに住み続ける」という意識が薄くなりがちで、所有者との温度差はどうしても出てきます。
さらに条件4とつながる話として、投資目的の所有者が多いマンションは、修繕積立金の値上げなど将来のための決議が通りにくくなる傾向もあります。賃貸化率は、住み心地と管理の健全性の両方に関わる数字です。
この賃貸化率は、自分でもある程度調べられます。SUUMOやLIFULL HOME’Sなどの物件情報サイトで、マンション名で検索してみてください。売買情報の下に賃貸の募集情報が出てくることがあります。募集が1部屋程度なら気にしなくてよいですが、常に数部屋が賃貸募集に出ているようなマンションは、表に出ているのは氷山の一角で、賃貸で住んでいる人がかなり多いと推測できます。
最近はマンションごとの口コミやレビューが見られるサイトもあります。規模の大きいマンションであれば住人の生の声が載っていることもあるので、あわせて確認しておくとよいでしょう。
条件6:災害リスクが低いエリアにある
6つ目は、災害リスクが低いエリアであることです。
災害の多い日本では、これまで大丈夫だった場所でも、これからも大丈夫だとは言い切れなくなってきています。水害、液状化、津波といったリスクは、国や自治体が公開しているハザードマップで確認できます。国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」を使えば、住所を入力するだけで複数の災害リスクを重ねて確認できるので、候補物件が出てきた段階で必ず見ておいてください。
マンションは戸建てと違い、水害で建物そのものが致命的な被害を受けるケースは多くありません。それでも、家族には災害リスクの高い場所をすすめたくないというのが本音です。何かあるたびに心配でやきもきするのも嫌ですし、あえて災害リスクの高い立地に家を買う合理性があるのか、と考えてみてほしいのです。
もう1つ、見落とされがちなのが火災、特に地震の際の延焼リスクです。昔ながらの街並みで古い建物が密集しているエリアは、火災の延焼が起こりやすいとされています。地震で同時多発的に火災が発生すると、消防が駆けつけられず、延焼を止められなくなります。阪神・淡路大震災でも、市街地での大規模な延焼被害が発生しました。住宅密集地の物件を検討するときは、この視点も持っておいてください。
お客様に対しては、私はこうしたリスクの説明を一通りしたうえで、最終的にどこに住むかはお客様の判断にお任せしています。知ったうえで住むなら、それも1つの選択だからです。ただ、自分の家族に選ぶなら、ここは一段厳しく見ます。
条件7:流動性(売りたいときに売れる力)がある
最後の7つ目は、流動性です。売ろうと思ったときにいつでも売れるか、貸そうと思ったときにすぐ貸せるか。いわゆる資産価値の話です。
「ずっと住み続けるつもりだから、資産価値は関係ない。売らなければ損失は確定しない」という考え方があります。この考え方に対して、私は違う意見を持っています。
人生は予定通りにいかないことだらけです。転勤、介護、離婚、収入の変化、老人ホームへの入居。買うときは無理のない予算でしっかり計画していても、リーマンショックのような不景気が来ることもあります。そうなったときに、流動性のある家を持っていれば、売って住宅ローンを完済し、身軽になるという選択肢が取れます。資産価値が残っている家なら、住宅ローンの残債よりも高く売れて、手元にお金が残ることさえあります。
逆に、資産価値の下落が住宅ローンの返済スピードより早い物件を買ってしまうと、売ろうと思っても残債を返しきれず、売るに売れない状態になります。身動きが取れなくなり、最悪の場合は競売ということもあり得ます。流動性のない家は、いざというときに選択肢を奪うのです。
そして大事なのは、流動性や資産価値とは「どれだけ欲しい人がいるか」だということです。住みやすい街の、住みやすい物件ほど欲しい人は多い。つまり流動性は住みやすさと連動しています。家族のために選ぶなら、将来どういう状況になっても動けるように、私はここを特に厳しく見ます。
7つの条件以外は妥協してよい
「この7つを全部満たすマンションに、本当に出会えるのか」と思われたかもしれません。
私の答えはこうです。7つの条件を満たす物件は存在します。そのかわり、それ以外の条件は妥協の候補にしてください。
マンション選びには、エリア、間取り、広さ、築年数の新しさ、階数、眺望、部屋の綺麗さなど、たくさんの条件があります。多くの方は間取りや部屋の綺麗さ、眺望といった目に見える部分ばかりを気にしますが、そこはリフォームで変えられたり、住めば慣れたりする部分でもあります。ほとんどの方には予算という制約があるのですから、どこかで優先順位を付けなければなりません。
今日お伝えした7つは「妥協しない方がいい条件」、言い換えれば必要最低限満たしておいてほしいラインです。逆に、この記事で挙げなかった条件は、ある程度妥協しても後悔につながりにくいポイントです。ここの切り分けこそが、一般の方とプロの物件の見方の一番大きな違いだと思います。
家は買って終わりではなく、買ってからがスタートです。住み始めた後の暮らしと、その先の未来まで考えると、この7つの条件の重みが分かっていただけるはずです。
7つすべてを自分で確認するのは難しい
ここまで読んで、「全部を自分でやるのは難しい」と感じた方も多いと思います。その感覚は正しいです。
駅からの距離やハザードマップ、賃貸化率などは自分でも調べられます。一方で、総会議事録を取り寄せて管理組合の実態を読み解いたり、長期修繕計画と積立金の健全性を判断したり、流動性を見極めたりするのは、経験がないと正直難しい領域です。
だからこそ、マンションをはじめ不動産を売買するときは「誰と買うか」が非常に重要になります。管理の中身や資産性までしっかりチェックして、家族に選ぶつもりで物件を見てくれる担当者が付いていれば、失敗する確率は大きく下げられます。
残念なことに、自分の家族にはこうやって慎重に選ぶくせに、お客様に対しては売ることしか考えていない——そんな担当者もたくさんいるのがこの業界の現実です。物件を探し始める前に、まず担当者を選ぶ。この順番をぜひ覚えておいてください。
中古マンション購入前のチェックリスト
物件を検討する段階になったら、この記事の7つの条件を以下の項目で確認してください。
- 駅から物件まで実際に歩いたか(夜の道の明るさ・信号・坂道・駅前の雰囲気)
- 1981年6月以降に建築確認を受けた新耐震基準の建物か
- 総会議事録を取り寄せ、管理組合が機能しているか確認したか
- 長期修繕計画と修繕積立金の残高・値上げ予定を確認したか
- 物件情報サイトでマンション名を検索し、賃貸募集の多さ(賃貸化率)を確認したか
- ハザードマップで水害・液状化・津波・延焼リスクを確認したか
- 将来売りたくなったときに売れる物件か(流動性・資産価値)を確認したか
まとめ
私が家族のために中古マンションを選ぶなら、基準は「安心」と「安全」です。具体的には、駅からの距離を実際に歩いて確かめること、新耐震基準以降であること、管理組合が機能していること、修繕積立金が健全であること、自己居住率が高いこと、災害リスクが低いエリアであること、そして流動性があること。この7つは絶対に外しません。
この7つは、私の家族に限らず、家を買うすべての方に共通する「妥協しない方がいい条件」です。逆に言えば、間取りや部屋の綺麗さといったそれ以外の条件は、予算に応じて妥協してよいポイントです。
そして、この7つをすべて自分で確認するのは簡単ではありません。管理や資産性の中身まで踏み込んで調べてくれる担当者と一緒に探すことが、家族の住まい選びで失敗しないための一番の近道です。
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よくある質問(FAQ)
Q. 中古マンションの選び方で一番重要な条件は何ですか?
A. あえて1つ挙げるなら管理です。「マンションは管理を買え」という格言があるとおり、管理組合が機能し、修繕積立金が健全に回っているかどうかで、住みやすさも資産価値も大きく変わります。総会議事録や長期修繕計画を購入前に取り寄せて確認することをおすすめします。
Q. 旧耐震基準の中古マンションは買ってはいけませんか?
A. 家族に長く安心して住んでほしいという前提なら、私は新耐震基準(1981年6月1日以降に建築確認)の物件をおすすめします。耐震性の違いに加え、旧耐震時代の建物はコンクリートが薄いものが多く、遮音性や建物の寿命の面でも不利になりやすいためです。
Q. マンションの賃貸化率(自己居住率)はどうやって調べればいいですか?
A. SUUMOやLIFULL HOME’Sなどの物件情報サイトで、マンション名を検索してみてください。売買情報の下に賃貸の募集情報が表示されることがあり、常に数部屋が募集に出ているマンションは賃貸化率が高いと推測できます。正確な戸数ベースの割合を知りたい場合は、担当者を通じて管理会社に確認する方法もあります。
Q. ずっと住み続けるつもりでも、資産価値を気にする必要はありますか?
A. あります。人生は予定通りにいかないもので、転勤・介護・収入の変化などで住み替えが必要になることは珍しくありません。資産価値が残る家なら、売却してローンを完済し次に進めますが、資産価値のない家はローンの残債が邪魔をして売るに売れず、身動きが取れなくなるリスクがあります。
Q. 7つの条件をすべて満たす物件が見つからないときはどうすればいいですか?
A. 7つの条件は「妥協しない方がいいライン」なので、まずはそれ以外の条件(間取り・階数・眺望・部屋の綺麗さ・築年数の新しさなど)を妥協できないか検討してください。それでも見つからない場合は、エリアや予算の設定自体を担当者と一緒に見直すことをおすすめします。7つを外して妥協するのは、後悔につながりやすいので避けてください。
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