「自分の年収だと、いくらの家が買えるんだろう?」マイホーム探しを始めると、まず気になるのが予算の話です。多くの方がネットで調べたり銀行の事前審査を受けたりして、「あなたなら〇〇万円まで借りられます」という上限金額を確認します。
ただ、その金額をそのまま信じて物件を探すと、購入後に生活がカツカツになり、本来の「暮らしを豊かにする」というマイホームの目的そのものが達成できなくなるケースが本当に多いのです。
この記事では、不動産業界歴17年以上の私が、年収400万・600万・800万・1,000万の4パターンに分けて、銀行の上限金額と「本当に無理なく買える予算」の差を具体的な数字でお伝えします。マンションと戸建てで予算がどれだけ変わるかも合わせて解説しますので、家探しの最初のステップとして参考にしてみてください。
この記事で分かること
- 銀行が貸してくれる上限額と「無理なく返せる金額」の決定的な違い
- プロが推奨する返済比率の目安(手取り25%・額面20%)
- マンションと戸建てで予算が約1,000万円変わる理由
- 年収400万・600万・800万・1,000万別の無理のない購入予算
- 年収800万円が「実は一番危ない」と言われる理由
- 同じ年収でも予算が1,000万円以上変わるケース
- ペアローンの落とし穴と組む際の注意点
この記事を読むことで、ご自身の年収で本当に買って大丈夫な物件価格と、銀行の提示する上限金額に潜むリスクが具体的に分かります。
この記事は動画でもご覧になれます。
無理なく買えるマイホーム予算とは
無理なく買えるマイホーム予算とは、銀行が貸してくれる上限金額のことではありません。家族の生活水準・教育費・老後資金・将来のライフプランを維持しながら、無理なく返済を続けられる現実的な金額のことを指します。
私の視点では、銀行の審査基準とプロの推奨基準には、年収によって1,000万〜3,500万円もの差が出ます。この差を知らずに上限ギリギリで購入してしまうと、住宅ローンに生活が縛られる「家計破綻予備軍」になりかねません。
銀行の借入上限を信じてはいけない理由
銀行の審査基準は返済比率35%
返済比率とは、年収のうち何パーセントを住宅ローン返済に回すかを示す数字です。たとえば年収500万円の人が年間100万円のローンを返済している場合、返済比率は20%になります。
銀行はこの返済比率をもとに審査をしますが、一般的な基準は35%前後です。つまり「年収の35%まで返済に回しても大丈夫」という前提で上限額を計算してくるのです。
プロが推奨するのは手取り25%(額面20%)
これまでの現場経験から推奨している基準は、手取り収入の25%、額面で言うと20%程度です。銀行の35%とプロの20%では、もう月とすっぽんぐらい違うのが現実です。
なぜここまで差があるのかというと、銀行は「貸し倒れにならないか」を見ているだけで、お客様の生活が豊かに維持できるかまでは見ていないからです。一方でプロは、購入後の生活費・教育費・老後資金まで含めて、家族が幸せに暮らせる予算を逆算しています。
マンションと戸建てで予算が約1,000万円変わる理由
同じ年収でも、マンションと戸建てでは無理なく買える物件価格が変わります。
月々のランニングコストの差
マンションの場合、毎月のランニングコストとして以下が発生します。
– 管理費:1.5万〜2万円
– 修繕積立金:1万〜2万円
– 駐車場代(必要な場合):1万〜2万円
合計すると、月3万5,000円〜7万円が住宅ローンとは別にかかってきます。一方の戸建ては、これらの月々の固定費がほぼかかりません。もちろん将来の修繕費用は別途積み立てる必要がありますが、月々の固定支出という意味では戸建ての方が圧倒的に少ないのです。
物件価格に換算すると約1,000万円の差
仮にマンションのランニングコストを月4万円とし、その分を住宅ローンの返済に回せると考えると、金利条件にもよりますが約1,500万円分の借入に相当します。修繕積立金の概念(将来の外壁塗り替えや防水のために月1万〜2万円積み立てる必要性)を考慮すると、最終的に約1,000万円ほど戸建ての方が予算を上げられる計算になります。
最近、マンション相場が高騰している影響で、戸建てに流れる方が増えているのもこの予算差が背景にあります。中古戸建てが注目されているのも同じ理由です。
年収別 無理なく買えるマイホーム予算
ここからが本題です。年収400万・600万・800万・1,000万円の4パターンで、銀行の上限と無理のない予算を比較していきます。
年収400万円の場合
- 銀行の上限額:約3,600万円
- 無理のない月々返済額:6万5,000円
- 無理のない物件価格(マンション):約2,300万円
- 無理のない物件価格(戸建て):約3,300万円
年収400万円の方の月収手取りはボーナスなしで約26万円。仮に銀行の上限近くで借りた場合、月々のローン返済が約9万3,000円、管理費等が2万5,000円かかると、生活費は14万円しか残りません。これでは教育費や日々の生活費を考えると、相当きつい家計になります。
年収600万円の場合
- 銀行の上限額:約5,400万円
- 無理のない月々返済額:9万5,000円
- 無理のない物件価格(マンション):約3,400万円
- 無理のない物件価格(戸建て):約4,400万円
年収600万円の方は、不動産会社から「5,000万円台までいけますよ」と言われるケースが多い年収帯です。月収手取りは約38万円。銀行上限で借りるとローン14万円・管理費3万円で生活費は21万円残りますが、教育費を考えるとやはり厳しい水準です。
年収800万円の場合(実は一番危ない)
- 銀行の上限額:約7,200万円
- 無理のない月々返済額:12万5,000円
- 無理のない物件価格(マンション):約4,500万円前後
- 無理のない物件価格(戸建て):約5,500万円前後
年収800万円と聞くと「そこそこ稼いでいる」というイメージを持ちますが、実はこの年収帯が一番危ないのが現場の感覚です。
理由は2つ。1つ目は税金や社会保険料の負担が重くなり、額面の割に手取りが伸びにくいこと。2つ目は、生活水準そのものが400万・600万円帯の方より上がっているケースが多いことです。月の手取りは約49万円ですが、銀行上限で借りると返済18万7,000円・管理費3万円を引いて生活費は27万円。生活水準が高い家庭ではこれでも足りない可能性が十分にあります。
年収1,000万円の場合
- 銀行の上限額:約9,000万〜9,500万円
- 無理のない月々返済額:15万円
- 無理のない物件価格(マンション):約5,500万円
- 無理のない物件価格(戸建て):約6,500万円
年収1,000万円なら自由度が高そうに思えますが、実はカツカツで暮らしている方が多いのも事実です。学費が私立中心になっている家庭が多い、車を所有している、海外旅行に毎年行く、といった生活コストが積み上がりやすい年収帯だからです。
私がライフプランニング相談で見てきた限り、年収1,000万円あるのに貯金ができないという方は、皆さんが思っている以上に多くいらっしゃいます。
銀行や不動産会社が提示する金額と、私が考える無理のない予算には、年収1,000万円のケースで約3,500万円の差が出ます。これはお子さん2人分の大学費用や老後資金に匹敵する金額なので、冷静な判断が必要です。
同じ年収でも予算が1,000万円以上変わる理由
ここまで年収別の目安をお伝えしてきましたが、これはあくまで一般的な平均値の話です。同じ年収でも、家族構成や月々の支出、貯蓄額によって、無理のない予算は1,000万円以上変わります。
ケース比較:年収600万円のAさんとBさん
Aさんの場合
- 共働き世帯(世帯年収900万円)
- 車なし
- 貯金800万円
- 無理のない予算:約4,000万円
Bさんの場合
- 片働き(ご主人1馬力)
- お子さん3人
- 車のローンあり(月3万円)
- 貯金200万円
- 無理のない予算:約2,500万円
同じ年収600万円なのに、無理のない予算には1,500万円もの差が生まれます。だからこそ「年収倍率〇倍」という単純な計算式ではなく、家計の中身まで踏み込んだシミュレーションが必要なのです。
ネットのシミュレーターで判断するのは危険
「自分の正確な予算はどうやって知ればいい?ネットのシミュレーターでも分かる?」とよく聞かれます。
シミュレーター自体は悪いものではありません。ただし、ネット上のシミュレーターは「いくら借りたら月々の返済はいくらになるか」という単純計算しかできず、家族構成・月々の支出・お子さんの人数・将来のライフイベントといった、本当に予算を左右する要素は一切考慮されていません。
参考情報として使うのは問題ありませんが、最終判断の根拠にしてしまうのは非常に危険です。本当に安全な予算は、収入・支出・資産・将来のライフプランをすべて織り込んだうえでシミュレーションして初めて算出できます。
自分の正確な予算を知るための2つの方法
ライフプラン全体を踏まえた予算計算は、ご自身でやるには難易度が高い作業です。実用的な方法は2つあります。
方法1:ファイナンシャルプランナーへの有料相談
お金を払ってプロのFP(ファイナンシャルプランナー)に相談する方法です。手堅く正確な予算が分かります。
方法2:ハウスクローバーの無料シミュレーター
私が企画運営している「ハウスクローバー」では、無料会員登録をしていただくと、ご自身で各種数値を入力するだけで無理のない予算を計算できるシミュレーターを無料で使えます。家探しの最初のステップとして活用していただける機能です。
ペアローンを組む際の注意点
最近のマンション相場の上昇により、ペアローンを検討するご夫婦が増えています。共働きでローン控除を2人分使えるメリットがある一方、私の見解としてはあまり推奨していません。
ペアローンのリスク
- 離婚時の精算が非常に複雑になる(現在3組に1組が離婚すると言われている時代)
- どちらか一方が職を失った場合、返済不能リスクが配偶者にも波及する
- 個人信用情報の事故が連動する(一方に傷がつくと、もう一方にも影響する)
ペアローンを「2人三脚」に例えると、片方が転んだらもう片方も転ぶ構造になっています。今のマンション価格を考えるとペアローンを組まざるを得ないケースもありますが、組む場合は必ず銀行の上限ではなく、余裕のある予算で借りることが大前提です。
購入前にチェックしたい予算判断リスト
家探しを始める前に、以下の項目をひとつずつ確認してみてください。
- 銀行の上限額ではなく、手取りの25%(額面20%)以内の返済額になっているか
- マンションの場合、管理費・修繕積立金・駐車場代を含めた総支出で計算しているか
- 教育費(公立・私立)・老後資金・予備費が確保できる予算になっているか
- 貯蓄を全額頭金に投入していないか(生活防衛資金は最低6ヶ月分残す)
- 共働きの場合、片方の収入が止まっても返済が続けられる予算か
- 将来の昇給を前提にした「ストレッチした予算」になっていないか
まとめ
マイホーム購入で最も大切な最初のステップは、銀行が貸してくれる上限金額ではなく「家族が無理なく返済を続けられる予算」を知ることです。年収400万円なら約2,300万円〜3,300万円、年収1,000万円なら約5,500万円〜6,500万円が、私の現場感覚での目安となります。
ただし同じ年収でも、家族構成・貯蓄・月々の支出によって予算は1,000万円以上変わります。ネットのシミュレーターで月々の返済額を試算するだけでは、本当の安全予算は見えてきません。ライフプラン全体を踏まえたシミュレーションで、ご自身の本当の予算を把握することが、後悔しないマイホーム購入の第一歩になります。
家は人生で最大の買い物です。「銀行が貸してくれるから」「不動産会社にすすめられたから」という理由で予算を決めず、必ず冷静な判断軸を持って探し始めてください。
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家探しの最初の一歩として、ぜひハウスクローバーをご活用ください。動画解説をご希望の方は、YouTubeチャンネル「HOUSECLOUVER(ハウスクローバー)」でも私が住まい選びの本音をお伝えしています。チャンネル登録もあわせてよろしくお願いします。
よくある質問(FAQ)
Q. 銀行が貸してくれる上限額で買ってはいけないのはなぜですか?
A. 銀行は「貸し倒れにならないか」だけを審査基準にしており、購入後の生活水準・教育費・老後資金までは考慮していないためです。上限額で借りると、返済比率が手取りの30〜35%にも達し、生活費が圧迫されて家計が破綻するリスクが高まります。
Q. 年収800万円が「一番危ない」と言われる理由は?
A. 額面の割に税金・社会保険料の負担が重く手取りが伸びにくいことに加え、生活水準が400万・600万円帯より上がっている方が多いためです。銀行上限の7,200万円で借りると、生活費に余裕がなくなる可能性が高い年収帯です。
Q. マンションと戸建てではどちらが予算を上げやすいですか?
A. 戸建ての方が約1,000万円ほど予算を上げられます。マンションは管理費・修繕積立金・駐車場代で月3.5万〜7万円のランニングコストがかかるためです。ただし戸建ても将来の修繕費用は別途積み立てる必要があります。
Q. 年収倍率〇倍という基準はあてになりますか?
A. 単純な年収倍率は目安にしかなりません。同じ年収600万円でも、共働き・貯蓄800万円のAさんと、片働き・子ども3人・貯蓄200万円のBさんでは、無理のない予算が1,500万円以上変わります。家計の中身まで踏み込んだ判断が必要です。
Q. ペアローンは組むべきですか?
A. 個人的には1馬力で借りられるなら1馬力をおすすめします。住宅ローン控除を2人分使えるメリットはありますが、離婚時の精算が複雑になる、片方が職を失うと返済不能リスクが配偶者にも波及する、個人信用情報が連動する、といったリスクがあるためです。組む場合は必ず余裕のある予算で借りてください。
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