所有している分譲マンションは、賃貸に出すことができます。
住み替えや転勤など、今住んでいるマンションから引っ越す場合、売却するか賃貸に出すのかを迷うこともあるでしょう。
賃貸に出したいと考えた時、住宅ローンが残っているとどうなるのか、心配になりそうです。
賃貸にすることのメリットやデメリット、注意点などを解説します。
宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー
ハウスクローバー株式会社の創業者兼CEO。また同時に、毎年全国から2〜300組ほどの不動産売買希望者の相談があり、実際の売買もサポートする現役の不動産エージェントでもある。業界歴は15年以上。多くの人から受ける相談内容と不動産業界の現状にギャップを感じ、住宅売買に必要なサービスと優良な不動産エージェントのネットワークを構築したプラットフォーム「HOUSECLOUVER」を企画運営している。自身が情報を発信しているYoutubeやブログは多くの住宅購入者にとって欠かせないバイブルとなっている。
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マンションを売却でなく、賃貸に出すという選択肢
所有するマンションから引っ越す場合、多くの人は売却することを考えます。
しかし「賃貸に出す」というのも、選択肢の一つです。
賃貸に出せば、何もしなくても家賃収入を得られますが、入居希望者がすぐに見つかるとは限りません。
また、賃借人とのトラブルが起こることも考えられます。
知識がないまま賃貸に出してしまうと、失敗して結果的に売却することになる可能性があり危険です。
特に住宅ローンが残っている場合は、金融機関との契約内容にも関わってくるため、注意が必要となります。
賃貸にするメリットやデメリットを知り、賃貸に向いている物件かどうかを見極める必要があります。
マンションを賃貸に出すメリット
マンションを賃貸に出すと、家賃収入が得られるほか、節税できるなど資産として活用することができます。
家賃収入が得られる
マンションを賃貸に出せば、家賃収入を得られることが大きなメリットです。
家賃収入は不労所得と呼ばれ、文字どおり働かずに得られる収入をいいます。
売却しても現金を手にすることができますが、あくまでも不動産に対する対価であり、余分な収入ではありません。
家賃収入は、賃借人がいる限り続きます。
住宅ローン残債がある場合は支払いに使え、ローンが完済している場合はプラスの収入となります。
分譲マンションを賃貸に出すと「分譲賃貸」と呼ばれ、一般的な賃貸物件の家賃相場よりも、高額になることが多いです。
さらに人気のエリアや利便性が高い場所、築浅やハイレベルな設備など好条件の物件であれば、高額の家賃収入が得られる可能性があります。
確定申告をすることによる節税
所有するマンションを賃貸に出していると、所有コストなどを確定申告で経費として計上し、節税できます。
経費として計上できるものは、以下の通りです。
- 固定資産税
- 管理手数料
- 火災保険料
- 地震保険料
- 入居者募集費用
- 住宅ローン利息
また、マンションのリフォームやクリーニングが必要になった場合、修繕費として確定申告で計上できます。
ただし、単年で計上できる修繕費は、1つの工事が20万円未満であることや、3年以内で工事が完了できることなど、基準を満たしていなければなりません。
これらの条件を満たさない場合は、税務上では資産となり、減価償却という方法で毎年一定金額を経費として計上します。
修繕を行った場合は、経費となるのか、資産として減価償却を行うのかを確認してから確定申告を行いましょう。
マンションを賃貸に出すデメリット
所有するマンションを賃貸に出すことは、メリットだけでなくデメリットもあります。
賃貸に出す場合は、デメリットを理解しておくことが大切です。
空き家の期間もランニングコストがかかる
賃貸に出したからと言って、必ず借主がいるとは限りません。
空室になれば、当然ですが家賃収入が入らないうえにランニングコストがかかるという、マイナスの状態となってしまいます。
ランニングコストとは、主に以下のような支出です。
- 固定資産税
- 管理費
- 修繕積立金
修繕積立金とはマンションの大規模改修など、マンション全体や共用部分の修繕に使われるものをいいます。
居住空間である専有部分の修繕を行う場合は自己負担のため、修繕費用が必要になることも見ておかなければなりません。
契約形態によっては、賃借人に出ていってもらえない
自分の居住場所として賃貸に出しているマンションが必要になった場合でも、必ずしも賃借人に退去してもらえるとは限りません。
所有する物件に住めない可能性があることを、賃貸に出す際には知っておくことが大切です。
賃借人の退去については、契約形態によって異なります。
自分が住む可能性がある場合の契約は定期借家契約にしましょう。
定期借家契約では契約期間が終了すれば退去してもらえますが、普通借家契約では貸主の都合で退去してもらうことができません。
定期借家契約と普通借家契約の違いについては、以下の表を参照してください。
定期借家契約 | 普通借家契約 | |
契約方法 | 書面のみ | 書面または口頭 |
契約期間 | 制限なし | 1年以上 |
契約終了の通知 | 1年以上の契約の場合は満期の6か月前までに通知が必要 | 規定なし |
契約更新の有無 | 期間満了で契約終了 | 更新可能 |
貸主からの中途解約 | 特約に定まっていれば可能 | 正当事由が必要だが基本的には不可 |
借主からの中途解約 | 200㎡以下の場合は申請可能 | 特約に定まっていれば可能 |
定期借家契約は、将来的に住む予定がある場合に適した契約ですが、賃借人としても、ある一定の期間で退去しなくてはならないため、普通貸借契約よりも貸出賃料は安くなることが一般的です。
立地や築年数によっては思うように収入を得られないことも
マンションの需要には、立地や築年数が大きく影響します。
条件が良くなければ借り手が見つからず、家賃を安くする必要があり、収入が大幅に少なくなる可能性があります。
立地が良い物件とは、人気があるエリアや沿線、オフィス街への通勤が便利であるほか、駅に近かったりスーパーやコンビニなど商業施設が多かったりすることが挙げられます。
マンションを賃貸に出すときの注意点
マンションを賃貸に出す場合、気をつけなければならない点があります。
どのような注意点があるのか、くわしく見ていきましょう。
住宅ローンは事業ローンへの借り換えが必要
住宅ローンが残っている場合はそのまま賃貸に出すことができないため、事業ローンへの借り換え、または完済が必要です。
住宅ローンは借り入れた本人が居住する不動産を購入するための金融商品なので、賃貸に出せば目的が変わってしまいます。
状況によっては住宅ローンをそのまま継続できるケースもあるので、金融機関に相談してみてください。
転勤による引っ越しで、数年後に戻ることが確定している場合などは、ローンの継続が認められる可能性があります。
住宅ローン控除は受けられなくなる
住宅ローン控除を受けている場合、賃貸に出すと控除が受けられなくなります。
控除の要件の一つとして、自分が居住する物件であることとされているためです。
賃貸中での売却は空き家よりも安くなる
賃貸中であっても売却できますが、賃貸中の売却は空き家の状態よりも安くなるので注意が必要です。
賃貸中の物件では、利用方法が制限されていることや、購入後にすぐに住むことができないため、住宅ローンの利用ができないことが理由となります。
投資用としての売却になるので、審査の厳しい事業用のローンを組まなければいけないことから、買い手も限られます。
また投資用の場合は、投資効率を計る「利回り」という指標で価格が判断されるので、一般的に投資効率が悪いファミリー向けマンションは価格がどうしても安くなります。
一般的な目安ですが、1割ほど相場よりも安くなることが多いです。
契約形態に気をつける
賃貸契約は、普通借家契約と定期借家契約の2種類があります。
マンションを賃貸に出す場合には、状況に合わせて適切な契約形態を選ばなければなりません。
一般的には、普通借家契約を結びます。
普通借家契約は2年ごとに契約更新をするケースが多く、基本的に貸主から更新を断ることはできません。
借主に退去を求める場合は、正当な事由が必要です。
6か月前までに退去してもらいたい旨を通知し、立ち退き料を支払わなければなりません。
もちろん、立ち退きの交渉をしても、断られたら強制的な退去はできません。
中長期的に賃貸として貸すのではなく、一定期間のみ賃貸に出すのであれば、期限を定められる定期借家契約にする必要があります。
賃貸に出すことを検討したい時
マンションを賃貸に出すことには、様々な注意点がありますが、賃貸に出すことを検討してもいいケースもあります。
ここからは
住宅ローンが払い終わっている
賃貸に出す場合に重要となるのが、住宅ローンの状況です。
すでに完済している場合は、問題なく賃貸に出すことができます。
家賃収入をローン返済に充てる必要がないため、空室リスクに悩まずに済むのもポイントです。
売却を急ぐよりも、どの程度の家賃収入が得られるのか、空室にならずに借り手が見つかるのかといった状況を見て、希望に合わない場合に売却を考えてはいかがでしょうか。
転勤などで戻ってくる予定がある
転勤などで一時的に引っ越しても、将来的に戻る予定があるなら、賃貸に出してマンションを持ち続けることがおすすめです。
住宅ローンが残っている場合、賃貸で得られた収入を返済に充てられます。
売却してしまうと、戻ってきた時にまた新しく購入するか、賃貸に住むことになります。
空室にして残しておくと、戻ってきて住もうとしたときに、予想以上に老朽化が進んでいる可能性が高いです。
戻ってくるのであれば、売却せずに所有し続け、賃貸に出すことを検討してはいかがでしょうか。
将来的な値上がりが期待できる
保有しているマンションが将来値上がりを期待できるのであれば、今すぐに売却をするのではなく、賃貸に出しておくこともおすすめです。
ただし、売りたいと思うタイミングで賃借人が退去してくれるかという問題や、思惑通りに値上がりするかどうか不透明であるというデメリットもありますので、慎重な判断が求められます。
マンションの売却か賃貸かを迷った不動産エージェントに相談しよう
所有するマンションを売却するのか賃貸に出すのかを迷った時には、不動産エージェントへの相談がおすすめです。
近くの不動産会社や、大手の不動産会社に相談するのが安心と思われるかもしれません。
しかし、売却か賃貸かの相談は、相談先が重要です。
なぜなら、売却と賃貸の両方を得意としていなければならないためです。
売買が得意で賃貸はあまり扱っていない担当者だと売却をすすめる可能性が高いでしょう。
ハウスクローバーでは、全国からエージェント(担当者)を探せます。
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