オフィスのデスクより、
今日は契約から引き渡しまでの間に、所有者の方が室内を汚したり破損させてしまったりした場合にどうするか?
その取り扱いについてある実話(私の話ではありません)をもとにシェアさせていただきます。
以前、Tiktokのコメント欄に質問をいただいたことがありました。
「中古物件購入したのですが、まだ売主さんが住んでいます。引き渡しまでの間に新たな傷をつけられたりした場合は請求はできますか?」というもの。
詳しく話を聞くと、猫が住んでいるみたいで、元々傷が多いところにさらに傷が増えないか不安だったそうです。
基本的な話をすれば売主には善管注意義務が発生します。
「善良なる管理者の注意義務」の略で、売主は対象物件の管理者として注意をしながら室内を使用することが求められます。
普通に考えたら買主が決まって契約が済んでいるので、当然といえば当然です。
私は経験したことがないケースだったので、一般論をお伝えして終わっていましたが、実際そのようなことが起こったらどうなるのかなと気になってはいました。
ちょうどそこにツイッターでフォローし合ってる業者さんがピンポイントな事案を教えてくれました。
その内容がこちら(原文ママ)
専門用語については末尾に解説のせておきます。
↓
現在、個人間での売買で物件引き渡し後の居室内における経年劣化について裁判まで行きそうなんですが、内容としては契約時には綺麗だったお部屋が5ヶ月後の引き渡しの際にクロス・巾木に尋常じゃない傷や削れが有り、売主側は経年劣化(※1)として突っぱねている状態。
状況報告書(※2)には傷や汚損等に関しては発見していないとあり、またそのような事項について売主側からの説明もなかった。 破損箇所を見ると飼っていた小型犬が噛んだりしていたように見える
買主としては明らかに経年劣化じゃないし、費用負担だけしてくれればいいとの事で破損箇所が酷い部分だけ見積もりを取り、売主に請求。売主側仲介は顧問弁護士に相談した結果
結論から述べると売主に修補の義務はない。(1)クロス等については、そもそも本契約書上で定めている 契約不適合(瑕疵)(※3)に該当しない。 売買契約書第12条(契約不適合による修補請求等)では、 シロアリの害、給排水管の故障以外の契約不適合について 責任を負わないとされている。
(2)そもそも物件状況等報告書は、クロス等のような内装に ついての説明ではない。 中古物件なので、物件状況等報告書に記載があるように前提として、 売買物件には経年変化に伴う変化や通常使用による摩耗・損耗がある と記されている。
③専有部分の壁・柱等の腐食、穴、亀裂、汚損とは、クロス等のような 内装を指しているのではなく、実際の壁等の躯体部分のことである。 さらにクロス等は、設備でもないことから設備表(※4)での説明ではない。 以上の見解により、売主に修補義務はないとの判断をしております。
とあまりにも酷いないだったそうで、経緯を見守っておりました。そして先日結果が出ました。
その結果がこちら
↓
この件に関して、結果出ましたので共有します。買主は勝てませんでした。原因として売主が契約時〜引き渡し時までの間に新たに出来た傷かどうかを証明できない事にあります。逆に悪意の証明が出来れば裁判で有利となります。裁判をする以外での話し合いに関しては
物件状況報告書に記載が無くても、FRK(※5)などの書類には売買物件には経過年数に伴う変化や通常損耗による摩擦・損耗がありますのでご承知おきください。という条文がある為、そこに集約されるみたいです。
対策としては契約時に居室内の動画撮影が最も有力なようです。個人間売買の引き渡しが長い場合は要注意ですね。
とのこと。悪魔の証明と言われているやつでね。
証明のしようがないので、このようなケースでは動画撮影が有効なんだそうです。
気まずいかもしれませんが、今回のように動物を飼っていたり小さいお子さんがいらっしゃるご家庭においては自衛的にそのような対応をさせてもらうことも検討した方がいいかもしれないですね。
今回のようなケースは売主に人道的な非はあると思いますが、法的に証明ができないと、、、と言うことを覚えておいて損はないと思います。
宮田明典
P.S
今回の質問がTiktokで、ケーススタディがTwitterというのが何とも現代らしい内容ですね。
(※1)経年劣化:時間の経過によって品質が低下すること。人為的な傷などは当てはまりません。
(※2)状況報告書:物件状況報告書と言います。契約書に付帯する書類で売主しか知り得ない事実について告知する書面です。知っていて嘘をつくと俗に言う「告知義務違反」になります。
(※3)契約不適合(瑕疵):目に見えない欠陥のことを言います。もともと瑕疵(かし)担保責任と呼ばれていましたが、民法改正によって契約不適合責任に変わりました。法律上は売主の責任が増えた形になりますが、特約などで従前の瑕疵(かし)担保責任と同じような内容となっています。主な対象は、主要構造部分(屋根や柱、基礎など)、給排水管の故障、雨漏りに関わることなどに限定されています。
(※4)設備表:付帯設備表のことを言います。この書類も契約に付随する書類となります。設備の一覧とその故障の有無などを記します。故障がないとされていたもので、故障していた場合は、初期不良とみなし引き渡し後7日間とするものか、設備付帯はそもそも免責としている契約書が多いです。
(※5)FRK:不動産協会のうちの一つ。主に大手が加盟する団体で、その団体が発行している書類の雛形をFRKの契約などと呼んだりしています。