オフィスのデスクより、
物件を探しているとき、「ん?この物件安いな」と思う時があります。しかもなかなかの好立地。よくよく詳細を読んでいると、土地の所有形態が「借地」となっていたりします。
こういう経験、あなたもないでしょうか? 今日は借地権の中で、「定期借地権付きマンション」について説明ていきたいと思います。
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そもそも借地権付きマンションって?
借地権付きマンションという言葉自体、ご存知でない方も多いかもしれません。土地の権利形態のことになるのですが、世に出回っているマンションはほとんど「所有権」になっています。これは、その名の通り所有する権利です。
マンションの場合、住人全体で持分を決めて一つの土地を共有する格好になりますが、所有権の場合、その土地を「持っている」と捉えることが出来ます。 それに対して「借地権」とは、その名が示すように、自分の土地とはならず、他人の土地を借りてマンションを建てている状態のことをいいます。
土地は元来先祖から受け継いだもので、自分の代で売却するわけにはいかないという地主さんは多くいます。逆にその土地が駅近の一等地にある場合、何もしなければ固定資産税がとてつもない額になりますし、かといって賃貸住宅を建てるようなリスクを取りたくなという思惑もあります。
そんな思惑と上手く合致したのが、この「借地権」です。借地権では、その土地を利用している間は地代を得ることが出来、利用が終われば更地にして返還を受けることが出来ます。地主がリスクを負うことなく、資産活用が出来ることから一時期出回った時期もあります。
「定期借地権付きマンション」とは?
借地権は通常期限を定めません。そうすると地主としては、いつ土地が使えるようになるか分からないため、土地を利用する期間を定めた「定期借地権」という形態が多く利用されています。
つまり定期借地権付きマンションとは、土地の利用期間が定められたマンションなのです。
買い手のメリット
一番のメリットはその価格の安さです。定期借地権付きマンションには土地代がかからないため、通常のマンションと比較して初期費用が安く済みます。これが冒頭の「なんでこんなに安いんだろう?」という疑問の答えです。通常の所有権マンションと比べて30%~40%程度安いと言われています。
また都心の駅近など利便性の高い立地であることが大半です。
買い手のデメリット
「定期借地権付きマンション」の場合、期限が到来すれば「解体」されます。また購入時に地主に権利金を納めなければいけないことが多く、土地の固定資産税は払わなくていいものの、「地代」を毎月支払う必要があります。
その他にも通常の「修繕積立金」や「解体準備積立金」などを加えると、意外と月々のランニングコストが重くなります。また残存期間が短くなれば、値段を安くしても売れない可能性が高くなります。その他、住宅ローンも借りにくいという欠点もあります。
定期借地権付きマンションの資産価値は?
立地や利便性などは抜群にいいなど、通常であれば資産価値に反映されそうな好条件を備えていても、期間に定めがある以上、中古マンション市場での評価は相対的に低くなります。
また残存期間が短くなればなるほど、設備の更新や修繕の実施について揉めることが多くなります。なぜなら「どうせ壊すから」という人と「住んでいる間は住みやすくしてほしい」という違う価値感が入り混じり、合意の形成が難しくなるからです。そうすると資産価値は負のスパイラルに陥ります。
定期借地権付きマンションは、どちらかといえば「賃貸」の要素も色濃く、「購入」と「賃貸」のちょうど間くらいの感覚です。また購入した時から資産価値がゼロに向かって動きだすので、よほど立地にメリットが無い限り資産価値としては厳しいのかなと思います。
投資用としてはアリかも?
ただし、もともと資産としてのキャピタルゲイン(売却益)はほどんど考えず、安くて立地が良い分収益性が高いため、インカムゲイン(賃貸収入)を追求すると割り切ってしまえば、どうでしょうか?
購入費用は早い段階で回収してしまって、その後は純利益として収益を得るのも、面白いかもしれません。収入は借地権か所有権は関係ないので、立地さえ良ければそれなりの収益性はあります。そして取得は通常のマンションよりも安いので、計算が合えばアリなのかもしれません。
いずれにしても、定期借地権付きマンションは少し特殊な形態になります。安いからと言って安易に飛びつくのではなく、将来のこともよく考えて検討するようにしましょう。
宮田明典