ハウスクローバーの宮田です。
この記事は、私が15年以上、不動産業界で営業をしてきた中で、特に印象に残ったお客様のストーリーをご紹介する「CLOVER STORY(クローバー ストーリー)」の連載記事です(お客様の許諾済みです)。
不定期配信になりますが、ぜひ読み物として楽しんでいただければと思います。ストーリーの中にも、住宅売買の参考になるようなエッセンスを散りばめていきます。
前回のストーリーも、ぜひ合わせてご覧ください。
登場人物
M様:千葉県の自宅の所有者(現在ICUに入っている)。私に問い合わせをしてくれた方。
M様の奥様
K様:M様の長兄
T様:M様の長女
S様:T様のご主人
前回までのあらすじ
前回の記事では、M様の長女T様ご夫妻の住み替えで、住み替え先の売買契約を巡り、大手不動産会社の支店長との話し合いについて触れました。
結果は、大手不動産会社にコンプライアンス的な不備があり、そこを突く形でこちらが完全勝利をしました。
不動産業界の「グレー」な部分を実例を垣間見ることができた出来事でした。
その後のM様について
そもそも今回のストーリーは、M様がYoutubeで私を見つけていただき、住み替えの依頼をいただいたことがきっかけでした。
M様は途中で体調を崩し、ICU(集中治療室)に入り、意識も戻る見込みも薄いことから、親族を巻き込んだ住み替えのプロジェクトに変わっていきました。
その後のM様について、しばらく触れておりませんでしたが、あれからどうなったかというと、長女T様ご夫妻の、ご自宅マンションの売却査定に伺う直前にお亡くなりになりました。
意識が奇跡的に戻ることにも、可能性は低いながら期待していたところもあったので、M様が亡くなったと聞いた時は、とても悲しい気持ちでした。
その後は、被後見人制度の手続きから、相続の手続きに切り替え、結果的には、M様のご自宅の売却も、想定よりも少し早まることになりました。
M様の残したもの
M様の葬儀は身近な親族のみで執り行われたとのことでした。
亡くなって2、3週間ほど経った頃、ちょうどM様のご自宅の解体の見積もりをするために、現地を見たいとの買主側からの要望に合わせて、私もM様のご自宅に訪問しました。
M様の仏前で手を合わせて、焼香をした後、横にいらっしゃったM様の奥様に、お悔やみの言葉を伝えた後、ここ最近、私が考えていたことを伝えました。
「M様は最初、ご自身の住み替えを目的として私にお声がけを頂いたのですが、自覚はもちろん無かったと思いますが、もしかしたらどこかでこうなることを予期していて、私に声をかけられたような気がしています。
“宮田さん、あとはよろしくお願いします”とM様に言われた気がしました。そして、M様はなんとなくですが、僕たちの近くにいて見守ってくれている気がしています。」
と伝えたところ、M様の奥様も
「実は私もそんな気がしていました。実際に宮田さんと繋がっていなかったら、とても大変な状況になっていて、途方に暮れていたと思います。娘の方も、いろいろ助けられたようで、宮田さんを繋いてくれたのも、きっと何かの導きで、主人も安心していると思います。」
と、おっしゃっていただきました。
ちょうどM様のご自宅に来る前までに、長女T様のご自宅マンションの査定で伺った際に、別の不動産会社で売り先行の無茶な提案を、直前でストップをかけることができたのと、自宅マンションが短期の高額売却に成功したタイミングでした。
思えば、今回の件に関しては、奇跡とも呼べるような偶然がたくさん重なりました。
ここで、もう一度、その奇跡のような偶然をまとめておきます。
M様のご自宅の高額売却
大手各社での査定価格は、高いところで2,100万円でしたが、結果として私のところで、2,600万円で売却ができました。
解体費込みでこの価格なので、結果としては相当良いもので、M様の不測の事態にも、買主様が柔軟に応じてくれました。
またタイミング的にも、もう少し遅かったら、一旦売り止めになっていたと思うので、これ以上の無い、売却結果だったと思います。
M様の長女T様のご自宅マンションの高額売却
T様のご自宅も、他の不動産会社の査定や、過去の成約事例を見ても、4,300〜4,400万円の査定ですが、4,780万円で短期成約に至ったこと。
M様のご自宅の引き渡しまでに、住み替えを終わらせておくことが必要でしたが、結果として売りに出して1週間で買主様が決まりました。
ちょうどこのマンションを買いたいと思っていてくれていた方で、契約の時に、長めの引渡し期日にも快く了承をいただきました。
先述しましたが、他の不動産会社で、売り先行で進めていたら、きっとこうはなっていなかったと思います。
住み替え先での、大手不動産業者との完全勝利
前回のストーリーで紹介しましたが、住み替え先の新築戸建てを解約したいとなった時、解約にあたって、一切の金銭負担がなく解除することができました。
本来であれば、手付金と仲介手数料満額を取られる可能性があったものの、たまたまT様のご主人M様が、出張先に委任状を忘れていってしまい、大手不動産業者の担当者が、数字欲しさにコンプライアンス的に問題がある行為で契約を進めたことで、その行為を持って無効を主張することができました。
結果として、手付金も戻ってきましたし、仲介手数料も当然支払う必要はありませんでした。
もしこの時の契約が、正規の手続きを踏んでいたものだったら、正直ここまで良い条件での決着はつけられなかったと思います。
この時あたりから、私はM様親族の間で、神様のような扱いになります(笑)
解体見積もりの現場にて
冒頭で、M様のご自宅にお伺いした時のことです。
もともとお伺いしたタイミングは、買主様サイドで解体の見積もりをしたいから、解体業者に現地を見させて欲しいとの依頼に合わせたものでした。
この時に、ついでに家財の処分についても見積もりをしてもらおうと考えていました。
数十年住んできたご自宅なので、大型の家具はもちろん、荷物の量も、それなりに広めの一軒家でしたので、相当な量になります。
もちろん、捨てられるものは捨てるつもりでしたが、ざっと私が見た感じでも、100万円は裕に超えるだろうなと見ていました。
しかし実際の見積もりは、18万円でした。その時にまだ家にあった荷物全部合わせてです。
最初その数字を聞いた時の私の反応は「えっ!?嘘でしょ!?」というものでした。
買主側の業者で、担当者は別件があり、別の担当者が来ていましたが、この解体業者とやり取りは初めてだったそうで、私と同じ反応でした。おそらく、100人の業者のうち99人は、ひっくり返るくらいの数字です。
これまで不動産業者として15年余り、いろんな現場に立ち会ってきましたが、それで採算合うの?というレベルの話です。これまで聞いたことのないような数字でした。
さらに細かい荷物を捨ててくれれば、もっと安くなりますとのこと。ものすごい衝撃でした。
結果として、細かい荷物はM様のご親族一同総出で肩付けたそうですが、最終的に費用は掛からなかったそうです。
相当なラッキーだと思います。また私にとっても、良い業者さんと知り合えたなという収穫までありました。解体費用も聞いてはいませんが、相当安かったのだと推測しています。解体費込みで申し込まれてきた金額についても、腑に落ちました。
事実は小説よりも奇なり
M様との出会いや、その後のご親族一同を巻き込んだ住み替えプロジェクトにおける、要所要所での奇跡のような偶然の重なり。
途中でM様が亡くなるという不幸もありましたが、全てのきっかけは、M様が私をYoutubeで見つけて相談をしてくれたことでした。
今回のストーリーでも触れましたが、時間が経つごとに、間違いなくM様が近くにいて、私という存在を通して、滞りなく物事が進むように見守ってくれているんだろうなと感じるようになりました。
途中から、私が神様のような崇められるような存在になっていきましたが(笑)、これは私だけでもたらしたものでなく、きっとM様の導きがあってのことだと思います。
そして6月の終わり頃、自宅マンションの引き渡しと、新居の引き渡しも終わり、M様の奥様とT様のご家族も、新居に引っ越していきました。
さらに7月の終わり頃、時間のかかっていた確定測量も無事に終わり、M様のご自宅の引き渡しを無事に迎えられることができました。
決済が終わり、銀行の外に出た後、M様の奥様や、同席されたM様の長男K様ご夫妻とお別れの挨拶をしました。ここまでの長い時間を振り返ると感慨深いものがありました。
ふと空を見上げると、夏の日差しが強い、高い空が広がっています。
私は心の中でM様に、「すべて無事終わりました。本当にありがとうございました。」とお礼を言いました。
あとがき
住宅の売買は、人にとって一生に何度もない、大きなイベントです。そこには、人の数だけ、様々なドラマがあります。
これまで15年以上に渡り、たくさんの方の住宅売買のお手伝いをしてきましたが、色々な人のドラマに立ち会うことができるこの仕事が、私は本当に大好きです。
しかしながら、ストーリーの途中でいくつかの不動産業界の「グレー」にも触れましたが、消費者の利益よりも、業者の利益が優先されてしまうことは多々あります。
こういう場面に遭遇するたびに、大好きな仕事だけに、腹立たしさや問題意識を強く持ってきました。
不動産という商品は、非常に高額で、かつ個別性が強い商品になります。だからこそ「誰に相談するか」、これで9割が決まると言っても過言ではありません。
本来、このようなことの取り締まりは行政が行うべきなのですが、ルールはあるものの、罰則規定がないものも多く、抜け穴もたくさんあります。
そんな状況を少しでも変えたくて、私は、全国の優良な担当者のネットワークを構築し、消費者が自身で担当者を選ぶことができる仕組み「HOUSECLOUVER(ハウスクローバー)」を立ち上げました。
今はまだ始まって時間も経っていないので、小さなネットワークですが、徐々にこの考えに賛同していただける担当者(不動産エージェント)の参画が増えてきています。
思えば、M様との出会いのきっかけも、このハウスクローバーでした。M様も、ハウスクローバーの理念に共感してくださっていました。
少しでも、この不動産業界が良くなるよう、この取り組みを進めていきたいと思います。
P.S
長女T様ご夫妻の住み替えの時に、T様とM様の奥様が選んだネクタイをいただきました。青のストライプの素敵なネクタイです。
いただいた時は、真夏の最中でしたので、まだ使っていませんが、これから涼しくなって、私と会うときに青のストライプのネクタイを身につけていたら、それはM様のご親族一同からいただいたお気に入りのネクタイです。
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