ハウスクローバーの宮田です。
この記事は、私が15年以上、不動産業界で営業をしてきた中で、特に印象に残ったお客様のストーリーをご紹介する「CLOVER STORY(クローバー ストーリー)」の連載記事です(お客様の許諾済みです)。
不定期配信になりますが、ぜひ読み物として楽しんでいただければと思います。ストーリーの中にも、住宅売買の参考になるようなエッセンスを散りばめていきます。
前回のストーリーも、ぜひ合わせてご覧ください。
登場人物
M様:千葉県の自宅の所有者(現在ICUに入っている)。私に問い合わせをしてくれた方。
M様の奥様
K様:M様の長兄
T様:M様の長女
S様:T様のご主人
前回までのあらすじ
前回のストーリーでは、某大手不動産会社の新築戸建てを、系列の仲介業者に強引な形で契約させられてしまったT様ご夫妻。
私が紹介していた新築戸建てが、売主様との交渉の結果、T様ご夫妻が望む金額となったため、某大手不動産会社の契約は解除をして、私が紹介した物件で話を進めたいとのことに。
そこで、T様のご主人S様が、某不動産会社へ連絡し、契約の解除の申し出を行ったところ、水曜日の19時に事務所に来て欲しいとのこと。
私は、大阪に出張中でしたが、S様だけで行ってもらうのは、かなり不安を感じたため、私もついて行くことに。
そこで、私と某大手不動産会社とのバトルが始まろうとしていたのです。
事前の打ち合わせ
当日19時に、某不動産会社の事務所近くの駅で、T様のご主人S様と待ち合わせをします。
ここに来るまでに、契約までの経緯などを事前打ち合わせで確認していました。
また、私が同行することは、先方には言わないでおくことも打ち合わせしておきました。
私が同行するというと、相手も身構えて、事前に何かしらの対策をされそうで、突然私も同行するというスタイルを取りました。
事前の打ち合わせの中で、私はある「勝ち筋」を見つけていました。
ただ相手がどう出るかわからないので、相手の出方次第では、ケンカをするつもりで事務所にお邪魔することにしました。
某大手不動産会社の支店長と対峙
19時すぎ、S様と事務所に訪問します。
来訪を迎えてくれたのは、T様ご夫妻の担当者でした。
まず私が同行していたことに、驚いた様子。
先方はあくまでS様だけが来る想定で、まさか不動産業者の私が同行しているので、当然です。
席に案内され、そこに支店長が1人で出てきました。
まず私と名刺交換をして、着席するなり、解約の話を先方から始めました。
50万円は放棄で構わない旨は伝えていましたが、先方は「契約を解除することについては、全くこちらとしては問題ありませんが、50万円の手付金だけでなくて、もしかしたら仲介手数料も請求することになるかもしれませんね〜」と太々しい様子で言ってきました。
いわゆる「契約解除による、仲介手数料の請求権」を出してきました。
契約解除による、仲介手数料の請求権とは
少し専門的な内容ですので、詳しく解説します。仲介業者を利用するときは、この内容は必ず絡んでくるものなので、覚えておきましょう。
仲介手数料は、物件の仲介が成立して、売買契約が成立した時に支払請求権が確定します。
つまり、売買契約が発生したら、仲介手数料の支払いが確定するというものです(支払いのタイミングは、契約時とか決済時とか業者によってバラバラです)。
解除には、通常の解除と、白紙撤回の2種類があります。
ローン特約(本審査が本人の責任でなく否決となった場合、白紙撤回ができる買主保護の特約)などは白紙撤回にできる条件の一つで、そもそも契約が無かったことになります。
契約がそもそもなかったことになるので、手付金もそのまま戻ってきますし、仲介手数料の支払もありません。払っていたとしても戻ってきます。
しかし自己都合による解除は、そのような保護的なものはなく、手付金も戻ってこなければ、仲介手数料についても、仲介業者が請求できる法的な権利は残ります。
自己都合による解除は、非常にペネルティが重いので、強引な仲介業者は、とにかく契約を急かしてきます。
一旦売買契約をすると、ペナルティの大きさから、解除そのものを諦めてしまう方も多いからです。今回のS様の場合は、手付金の50万円に加えて、仲介手数料は150万近くになるケースでした。
反撃開始
事務所に訪問する前、私は「相手の出方を見る」と考えてました。
手付金は返ってこないことは、しょうがないとしても、仲介手数料の請求についても、私は想定はしていて「その話を出してくるなら」と、反撃に出ることにしました。
私「それでは、私からもお話があるのですが、そもそもこの契約ですが、無効です。」
相手は、一瞬鳩が豆鉄砲を喰らったような顔つきになります。表情に緊張が走ったように見えました。私はさらに続けます。
私「この契約は、奥様が出張中のご主人に変わって締結したと聞いておりますが、その時の委任状、本人(S様)が書いたものではないですよね?この場合、この契約はどうなりますか?」
支店長はその瞬間、「えっ、、、、」明らかに狼狽した様子になりました。あの時の支店長の顔は、一生忘れないでしょう(S様も後でこの瞬間が一番印象に残ったと話していました)
そして「その場合、契約は無効になります」と返してきました。この瞬間、私たちの勝ちは確定しました。
実は、事前の打ち合わせの中で、この経緯を私は聞いていました。
契約の日は、S様が出張だったため、委任状を奥様のT様に渡すべきだったところ、S様はその委任状を間違えて出張に持っていってしまったとのこと。
そこで、某不動産会社の担当者は、T様にS様の筆跡に似せて委任状を書いてもらい、それで契約の署名を行い売買契約を締結させたのです。
売買契約などの法的行為を行う場合、基本的に代理で契約行為をする人に対して、契約行為の委任状が必須です。
厳密には口頭による依頼でも構わないのですが、不動産取引は価格も高額なので、後々トラブルにならないように、実務においては、委任状は実印で、印鑑証明を添付するくらい慎重に行います。
今回、某不動産会社の担当者は、この法的なルールを破り、委任状をS様でなく、奥様であるT様に書いてもらって、売買契約を締結をさせたのでした。
支店長は「一度、確認してきます」と狼狽しながら言い残し、接客スペースから、事務所の奥にある執務室に入っていきました。
完全勝利
支店長が事務所の奥に入って30分近く待ったでしょうか。ようやく支店長が出てきました。
そして「今回の件は、無効で大丈夫です。仲介手数料の請求もなしで大丈夫ですし、手付金も返却します、、、」とのこと。この瞬間、私たちの完全勝利が確定しました。
相手の出方次第では、私はとことんやるつもりでしたが、流石に今回の内容は重大なコンプライアンス違反です。
相手も上場企業ですので、そこの重大性は流石に支店長も理解したのでしょう。そのあとは、なんとかこの話が表に出ないように色々言い訳をしてきましたが、私は「そちらが引いてもらえるのであれば、それで結構です」と言い残し、S様と事務所を後にしました。
支店長も、「担当者は外出して不在(来訪した時に席に案内してくれたのに)」とか、支離滅裂な様子で、完全敗北の悲壮感が滲み出ていました。
事務所を出た後、S様は私に、とにかく感謝しきりで、すごいです!と、やや興奮気味でした。
今回の話は流石にS様にできないでしょうし、大阪の出張を早めに切り上げて戻ってきた甲斐がありました。
この頃からです。M様のご親族の中で、私がまるで神に崇められるようになっていったのは(笑)。
最後の抵抗を見せようとするも
その後の解除も、また某不動産会社がS様に「一度解除の手続きで説明したいので、事務所に来てもらえないでしょうか?」とLINEで連絡を入れてきたようです。
S様がその旨を私に相談してきた際に、「話のやり取りは、宮田さんに一任するので、宮田さんとお願いします」と伝えていただくようにお願いしました。
すぐに支店長から連絡がかかってきたので、私は「解除の手続きに事務所に出向く必要はなんですか?」と尋ねたところ、会社がどうとか、色々言い訳がましいことを言ってきたので、「手続きは郵送でお願いします。あとS様から聞いていると思いますが、今後何かやり取りで話すことがあれば私に連絡をしてください」と話しました。
支店長は「ものすごいお客様をグリップされているのですね、、、」と、ここで完全白旗を上げました。
おそらく事務所に来てもらって、S様に解除を思いとどまってもらえるよう、あの手この手を用意していたのだろうと思いますが、そんな隙も私は与えませんでした。
その後、郵送で滞りなく手続きも終わり、無事に手付金も戻ってきたとのこと。
本当に不動産業界というところは、お客様よりも業者の利益が優先される、グレーな部分が多い業界です。
さて、しばらく続けてきたお客様のストーリーですが、おそらく次くらいで最終話となるかと思います。最後は、集中治療室に入っていたM様のことなども書いていきたいと思います。
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