ハウスクローバーの宮田です。
この記事は、私が15年以上、不動産業界で営業をしてきた中で、特に印象に残ったお客様のストーリーをご紹介する「CLOVER STORY(クローバー ストーリー)」の連載記事です(お客様の許諾済みです)。
不定期配信になりますが、ぜひ読み物として楽しんでいただければと思います。ストーリーの中にも、住宅売買の参考になるようなエッセンスを散りばめていきます。
前回のストーリーも、ぜひ合わせてご覧ください。
M様の自宅に、親族一同が集合
M様の自宅の売却を任され、年明け早々、とてもいい金額での買付をもらったところまでは良かったものの、当のM様は、年末に風邪をこじらせて、持病が悪化し、現在はICU(集中治療室)に入っていて、意識不明の重体とのこと。
親族の方の意向を確認し、今後について話し合うために、M様の奥様に、取り急ぎご親族を集めていただき、私はそこでお話をすることになりました。
M様の容態を知った、その週の土曜日に、再び私はM様宅に伺います。
その際、M様宅にいたのは、M様の奥様と、M様の長男K様(兄)、M様の長女T様(妹)とそのご主人S様と、そのお子様という顔ぶれです。
私は、ご挨拶とM様とこれまでの経緯、そしてM様のご様態などについて、ご親族の方とお話をしたところで、本題を切り出します。
- 現在、買付が入っており、内容としては非常に良い話
- 今後、売却を続けるか、一旦ストップするかで、話の進め方が変わる
そして、ご親族のご意向としてM様の長女のT様から、次のようにお話がありました。
「お父さん(M様)が元気になればいいけれど、そうならない可能性が高く、お母さん(M様の奥様)も体が丈夫でないため、心配です。なので、自宅の売却を進めてもらって、お母さんは私のところへ来てもらおうと思います」とのことでした。
つまり、「売却活動は続ける」ということです。ここで、今後の動きが決まりました。
M様の成年後見制度を進める
ご親族が、今回の売却を進めたいという意思表示がありましたので、次に準備すべきは、M様の成年後見制度の準備です。
今回、M様は意識不明となり、また脳梗塞も併発しており、意思能力に障害が生じている状況です。
そして今回売却にあたって、M様が物件の所有者ですので、M様が契約行為を行う必要があるのですが、意思能力がなく、代理の委任すらすることができません。
このような状況では、いくら親族が契約をしたいと言ったとしても、M様の意思確認ができないので、仮に契約をしたとしても、その契約行為自体が無効となってしまいます。
そこで裁判所が、M様を非成年後見人、そしてM様の代理人を成年後見人として指定し、初めてM様の代わりに契約行為や、資産の処分などを行うことができるようになるというわけです。
ただ成年後見制度は、裁判所が絡むだけって、手続きも煩雑で、申請そのものにも時間がかかります。
そこで知り合いの司法書士にお願いし、成年後見制度の準備を進めていくことになりました。
M様の成年後見人となるのは、長男のK様になりました。
また今回の連絡等の窓口も全てK様となることで親族一同で話がまとまり、具体的な準備に取り掛かります。
そして、この売却活動には、もう一つ山場が残っています。
買主様との交渉の行方
ご親族と打ち合わせをする前に、私は事前に今回依頼をする司法書士に、今回のことの顛末と、もし成年後見人制度を進めることになった場合、どれくらい時間がかかるのかを確認していました。
かなり急いで手続きをしたとして、確定測量や諸々の手続きを考慮すると、引き渡しは早くても8月の終わり頃になる見込みです。
この時点で1月末下旬ですので、M様が健在であれば、大体4月くらいには引き渡せる計算ですので(もともと買主サイドとは、それくらいの目安で話をしていました)、4ヶ月も引き渡しが遅れることになります。
親族のご意向がまとまって、引き渡しができそうな時期もわかったので、ここから、もう一つの山場である買主様との引き渡し期日の交渉となります。
買主様と言っても、買主側の仲介業者がいますので、その担当者と話を進めていくことになります。
まず、2680万円から2600万円と、80万円の指値が入っていましたが、こちらは問題なくOKと伝えます。
そしてM様の状況を簡単に説明し、引き渡し時期が8月末くらいの見込みで、売買契約自体も裁判所の決定が出る6月くらいの見込みになることをお伝えし、それでも進めていただけるのであれば、ぜひお願いしたい旨のことを、買主様にお伝えいただくように依頼しました。
結果としては、3月末までに竣工(今回は解体をして、新築目的)できれば問題ないとのことで、こちらの事情もご了承いただけました。
いくらご親族で話を進めたいとなったところで、買主様が「そんなに時間がかかるのであれば止めます」となれば、そもそも今回の話自体も無かったことになってしまいます。
ですから、買主様にご了承いただけたことは、今回の売却にとって、とても大きなポイントであり、そこがクリアになったことで、私もM様ご親族も安堵しました。
新しいストーリーの幕開け
M様の長男K様と、司法書士を交えての打ち合わせも済ませ、必要書類の取り寄せに、司法書士が奔走している2月の終わり頃、長男のK様からLINEでメッセージが入ります。
そのメッセージには、「実家の査定書と売買契約書を住替えの物件について進める上で必要なため、LINEでお送りいただくことは可能でしょうか?」というもの。
そもそも売買契約は、M様の被成年後見人の手続きが終わらないとできないし、このLINEは何だろうと、頭の中には「?」マークが浮かびました。
実は、ここからもう一つのストーリーが始まろうとしていたのです。
〜続く〜
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