オフィスのデスクより、
いつの時代も変化が訪れる時は変化を嫌う既存勢力と革新を推進する新興勢力とのせめぎ合いが起こります。その争いや結果は多くの歴史の出来事に見ることが出来ます。そしてこの構図は不動産業界にももちろんあります。
不動産業界でいう既存勢力とは、財閥系・鉄道系を中心とした大手不動産会社。そして新興勢力とはネット企業や新興不動産会社と簡単に言ってしまえばそんなところでしょうか。
この既存勢力と新興勢力の攻防で有名なところといえば、不動産流通経営協会(以下FRK)と、Yahooとソニー不動産の連合とのやり取りが有名です。
もともとFRK以外にも不動産業界の各団体は、Yahooが運営するYahoo不動産に対して、物件情報を提供している関係でした。
しかし、昨年の7月に突如このYahooとソニー不動産が提携しました。Yahooはソニー不動産の第3者割当増資を受けて、出資比率で43.7%を占める関連会社になりました。そしてこの2社が共同で、個人がマンションを直接販売することが出来る「おうちダイレクト」というサービスを開始するとしました。
これに怒ったのが先述の既存勢力の面々。FRKが先陣を切り、各不動産団体も相次いでYahoo不動産への物件情報ての提供を取りやめるという異常事態に発展しました。
Yahooはこの事態にかなり焦ったらしく、各団体を説得したものの交渉は決裂。表向きの理由は、Yahoo不動産が特定の不動産会社と提携するなら、ポータルサイトとしての公立性が失われるから。とされています(これはこれで本当のことですが)。
しかし実際のところ、この「おうちダイレクト」の仕組みは個人でマンションを売るとは言いながらも、最終的にはソニー不動産を媒介しないと売却出来ない理由となっていて、ある種の囲い込みに近い実態のものでした。
ここで既存勢力は、自分たちにとって脅威となりうる危険分子と判断し、出る杭を打ったのでしょう。しかもソニー不動産は設立当初、既存の大手不動産を○すと結構息巻いていたみたいですしね。実際、東京の業者と話しているときも、お互いにバリバリ意識しているように感じました。
その後どうなるのかなと見ておりましたが、ソニー不動産の親会社でもあるソニーが、この不動産業界の既存勢力に気を遣う姿勢を見せたようで、結局「おうちダイレクト」も中途半端なものになってしまい、サービスもそこまで伸びていないようです。
そしてここにきて、FRKの主要メンバーでもある大手不動産が共同で「すまいValue」という不動産の売却サイトを立ち上げました。「おうちダイレクト」への当てつけというか対抗心丸出しのサービスです。
ネットで個人の責任で物件を売るよりも、やはりプロの力が必要と、全く逆のコンセプトを打ち出しています。とは言いながら、少し前にメディアを賑わせた「囲い込み」といった売主に損をさせるような取引が横行していたのも、他ならぬこの面々です。
個人的には不動産業界に新しい風名を開けてほしいという意味も込めてソニー不動産を応援してましたが、最近は少し押され気味な気がします。今後もこの既存勢力vs.新興勢力という構図は続くでしょう。
日本の不動産会社も転換期に差し掛かっています。しかし高級な商品ほど人を介在する余地が大きく、ITが発達したかといって不動産業者を中抜きにするのも難しい気がします。
今後はこういったせめぎ合いを繰り返しながら、徐々にあるべき姿に落ち着いていけばいいかなと思います。
宮田明典