自宅の書斎より、
昨年の4月から改正宅建業法が施行され、売買契約前のインスペクション(住宅検査)の確認が重要事項の説明対象になりました。
また物件の所有者が、物件を売りたいと思った時に不動産仲介業者と結ぶ「媒介契約」時にも、インスペクションの実施の有無や業者の斡旋の有無などを確認することが盛り込まれました。
この法改正により、ほんとに少しではありますが、インスペクション済みの売り物件が出ていたり、購入時のインスペクションの依頼についてもスムーズに話が運ぶようになりました。
一般の消費者には、まだ馴染みが少ないかもしれませんが、不動産業者がインスペクションに対して免疫がついたのは、やりやすくなって良かったと思います。(以前のように渋られることが減りました)
しかし、インスペクションは準備に時間がかかるため、不動産売買契約時に2択の選択肢を迫られることがあります。
そこで、今日は実務としてのインスペクションの課題について説明していきます。
不動産取引のスケジュール感とのミスマッチ
私が実際に業務をしていて感じるのが、この不動産取引のスケジュール感とのミスマッチです。
インスペクションを実施するには、申し込みから建築士の手配、また実際の検査まで考えると、少なくとも1週間以上はかかります。
そしてインスペクションをしようと考えている物件は、申し込みが前提になることがほとんどです。
ただ申込を考えて、インスペクションをしている間は、売主からすると契約もしていない状態で、確実に売れることが分からないので、商談による売り止めになることはほとんどありません。
人気物件や、購入検討者が複数いる場合、インスペクションしている間に他の購入希望者で決まってしまうかもしれません。
この場合は、購入しようとしていた物件を買えなかったばかりか、インスペクション費用だけがかかってしまいます。
そんな状況下で、購入希望者はある2つの選択を迫られることになります。
購入希望者が迫られる2つの選択肢
インスペクションを行うタイミングとしては、主に契約前と契約後の2つがあります。
まずは契約前にインスペクションを実施するケース。
この場合は、インスペクションの結果を元に売買価格を交渉も出来、一番望ましい形といえます。
ただし、先述のように他の人に取られてしまうリスクがあります。
そして契約後にインスペクションを実施するケース。
そもそも建物の劣化状況や改修費用はインスペクションをしないと判明しません。
しかし、もし契約後にインスペクションをして劣化状況が明らかになり、契約を解除したくても、インスペクションの結果をもとに契約を解除することは出来ません。
この場合は手付解除になります。
建物のリスクを判断する上では、契約前にインスペクションを行うことが理想的ですが、それぞれにリスクがあることを覚えておいてください。
建物種別や築年数でもある程度判断は出来る
ただし、建物の種別や築年数などで、ある程度インスペクションが本当に必要かどうかは分かります。
例えば中古マンションの場合、マンションの性能はどちらかといえば共有部分になるので、一戸建てと比べるとインスペクションンの重要性は低くなります。
もちろん、修繕積立金の残高や長期修繕計画など確認しなければいけないことはありますが、旧耐震の物件以外は、よほど先に契約をしてしまっても問題ないと思います。(100%ではないですが、あくまで傾向です)
次に、一戸建ては基本的にお勧めしています。
特に築20年以内のものは、住宅ローン減税などの築年数要件も無いので、比較的人気もあり希望者が集まりやすい傾向にあります。
しかし、それまでのメンテナンス状況によっても大きく劣化状況が変わるのが戸建なので、出来るだけ戸建を内覧するときには、中古戸建に強い仲介業者やリフォーム業者を連れていき、パッと見だけでも問題点が無さそうかだけは確かめるようにしましょう。
次に戸建については基本的に、新築であれ中古であれ、インスペクションをするようにしましょう。
築年後要件を満たさない物件については、インスペクションをするのであれば瑕疵保険加入を前提としたインスペクションを行うことをお勧めします。(ただし現行の耐震基準に適合しているかを確認できる必要があります)
いかがでしょうか?
やることは分かっていても、状況によってはゆっくり考えることが出来ないことが多くあります。
国土交通省がお墨付きを与える仕組みの「あんしんR住宅」の制度も始まっていますし、これからは今まで以上にインスペクションの結果がある物件が増えてこれば、より中古住宅が探しやすくなりますし、取引も活性化されていくといいなと思います。
宮田明典