ハウスクローバーの宮田です。
私は、会社員時代も含めると15年以上、不動産営業をしています。そのキャリアの名で、多くのお客様の住宅売買に関わってきました。
いろんなお客様に関わる中で、良い意味でも悪い意味でも、特に印象に残るお客様が一定の割合でいらっしゃいます。
今回お客様にも許可を得て、特に印象に残ったお客様の住宅売買のストーリーを紹介していく「CLOVER STORY(クローバー ストーリー)」の連載を始めることにしました。
不定期更新になりますが、ぜひ読み物として楽しんでいただければと思います。
また随所随所に、住宅売買に参考になるようなエッセンスも散りばめていますので、楽しみにながら学べる、そんな連載にしていきたいと思います。
CLOVER STORY#01
千葉県在住 M様
依頼内容:住み替え
とある年、まだ夏の残暑が厳しい9月頃でした。
千葉県にお住まいの、ある高齢の方から、私のもとへ一本の問い合わせメールが入りました。
少しメールでのやり取りをしたところ、現状とご希望として、以下の内容であることを確認しました。
- 自宅の戸建てを売却して、マンションに住み替えたい
- 私のことはYoutubeで見つけていただいた
- 現在、自宅の売却査定を大手数社に依頼している
本来であれば、最初の面談をオンラインで行うことが多いのですが、自宅の売却もあることから、面談はお客様(以降はM様と表記)のご自宅で行うこととなりました。
千葉県と一言で言っても広いですが、北側の方の、比較的穏やかな環境の住宅街です。私の自宅からは、車で1時間半ほどかかる距離になります。
M様と初面談
9月の終わりに近いある平日の午前に、初めてM様のご自宅に訪問し、打ち合わせをしました。
M様は60代後半の方で、奥様と二人暮らしでした。とても人の良さそうな、老夫婦でした。
応接室に招き入れていただき、コーヒーを飲みながら、雑談をしながら、色々お話を聞いていきます。
M様は、こちらの自宅を20年ほど前に取得して、大規模なリフォームをされたそうで、建物自体は旧耐震であるものの、とても綺麗に使用されていました。
老夫婦ですので、戸建てで暮らすよりも、何かと便利で、バリアフリーなマンションに住み替えたいということを、ご主人が考えるようになり、中古マンションについて調べているうちに、私のYoutubeちゃんねるにたどり着いたようです。
初めてお会いした時は、「本物の宮田さんだ」という反応でした。Youtubeをやっていると、テレビに出ている人のような感覚になることがあるようで、このような反応をいただくことは、ちょくちょくあります。
さて、話を戻しますが、ご主人が考える希望の住み替え先エリアは、お子様のお住まいからも近く、駅前に商業施設も揃っている千葉県内の地方都市です。
そこで築年数や間取りを想定すると、ある程度の予算が見えてきますので、その予算プラスαくらいの費用が、自宅の売却費用で捻出できればというご希望でした。
大手の売却査定
事前に問い合わせをいただいた時に、すでに大手に売却の相談をしているというのは聞いていました。
また訪問する前に自宅の住所は聞いていましたので、それを元に謄本を取得し、周辺の相場などを調べて面談に臨みました。
都心部のマンションであれば、当該物件はもちろん、周辺にもたくさん成約事例があるため、比較的価格を付けやすいですが、地方都市で、しかも土地や戸建てとなると、一気に価格付けは難しくなります。
売却において売り出し価格は、非常に重要な要素で、絶妙なバランス感覚が求められます。値付けで失敗すると、想定よりも安い金額でしか売却できないこともあります。
私の中では、堅い価格(まずこの値段では売れるだろう価格)とチャレンジ価格の幅を持たせて、ご自宅を実際に見て、M様のお話も聞きながら調整をしていこうと考えてました。
この時に私が考えていた、価格レンジは2,100〜2,600万円です。
このレンジと根拠のお話しをしたところ、M様としては、当初の希望である「住み替え先のマンション相場+α」の価格だと、できれば2,300〜2,400万円で売れて欲しいとのことでした。
ちなみに大手の査定はいくらだったかというと、1,900〜2,100万円ほどでした。
この査定価格は、私も想定のラインではありましたが、おそらく買取業者もターゲットになってくる価格です(実際、売りに出した時に、買取業者が1,900万円で買付を出してきました)。
M様のご希望や現状を聞く限り、なるべく高い価格で売りたいという希望があり、またすぐに売却を急ぐような事情もないことから、少し時間はかかるかもしれないが、仲介で売りに出しましょうという方向で話が纏まりました。
価格については、私の考えていたレンジの上限にしましょうということになりました。
売り出しは2,880万円で
次に訪問したのは、10月に入ってからでした。
一度めの訪問の後のやり取りで、媒介の種類を「専任媒介契約」とし、売り出し価格は2,880万円としました。
建物が大きく、庭石などもありましたから、解体費用もそれなりになります。その交渉もあることを念頭に置いた価格設定です。
大手の査定が、高いところで2,100万円の査定であったことを考えると、かなり強気の売り出し価格です。しかし、私の中では流石に1,900〜2,100万円という価格は、買取業者を意識した価格で、安すぎるという感覚もありました。
Point
今回のようなケースで、買取業者に買い取ってもらえば、売却価格は安くなったとしても、仲介業者としてはM様からだけでなく、買取業者からも仲介手数料がもらえる両手取引になります。
また買取業者は、再販をしますので、その売却の依頼を取ることができれば、上手くいけば再販売時も両手仲介を狙えます。
このように、仲介業者の中には、仲介業者自身の売上が最大化する、「買取業者」を使うことを前提とした売却戦略を持ってくることがあります。
この戦略は、業者都合のもので、M様の希望は二の次になっています。
このような提案は、大手であってもよくあることで、大手であれば安心というのが、不動産業界においては当てはまらないことが分かる事例だと思います。
強気の売り出し価格で、状況を見ながら値下げをしていき、最終的にはM様が希望する2,300万円で落ち着けばという戦略のもと、販売を開始しました。この時の販売期間は半年〜1年ほどを想定し、M様とも共有しました。
売却の準備として、測量の準備も進めていきます。地積測量図もありましたが、昭和50年くらいのものだったので、売りに出す前に、仮測量図は欲しいところです。
諸々の準備を進めていき、実際に売却活動に入ったのは10月の下旬頃でした。
問い合わせは来るものの、決定打には至らず
物件情報を、レインズ・アットホーム・SUUMOに掲載し、売却活動を開始。
物件情報を掲載してすぐに、何社かの買取業者(分譲業者)から連絡がり、うち1社からは、具体的な金額の打診が入りました。
ただその価格が、1,900万円だったので、ダメ元でM様に確認しますが、もちろん結果は「ダメ」でした。まあ当然ですね。
そのあとは、エンドのお客様がいる業者やハウスメーカから、何社からお問合せはいただきました。
ただなかなか具体的にならない中で、売主様も少しずつ弱気になっていきます。
不動産業者としても、胆力が必要になる局面です。
今回の媒介契約は専任媒介契約なので、定期報告は2週間に1回になりますが、ちょくちょくM様と連絡はとっていて、年末には一度値下げをすることとなりました。
年末までに具体的な話が入らなければ、もともと値下げすることは打ち合わせ済みでした。
そして12月に入ってから、1回目の価格改定を行います。価格は2,880万円から2,680万円に改定しました。
年度末に向けて、物件探しが活発になるので、それに合わせての価格改定です。
そして年内に決定打となるような話はなく、新年を迎えることになります。
しかしこの時、水面下である事件が起こっていたことを、まだ僕は知りませんでした。
〜続く〜
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